中国関連で、これは読んでおけば大丈夫という最近の書籍6冊
このところ、アメリカのイージス艦一隻が南シナ海にある「中国の主張する『領海』」に無断で立ち入ったと言うことで、このゲームも新たな展開を見せておる次第ですが、いろいろと安全保障周りの執筆依頼をいただくなかで「これは読んでおいたらいいという本はありますか」というオーダーが良く来ます。
米中、南シナ海対峙で各国に支援働きかけ
http://jp.wsj.com/articles/SB10631682899670053547704581324243962294936
人に原稿依頼しておいて「良い本あります?」もないもんだと思いつつ、ここ最近の中国解説本は比較的定番も研究物も良本が増えてきたなあと感じるので、ここ半年出た中でお奨め本などを掲載してみようと思い立ちました。
どれも、吸い込まれるほどに良い内容なので、ご関心のある方はぜひご一読を。
■中国グローバル化の深層 「未完の大国」が世界を変える (朝日選書 デイビッド=シャンボー・著、加藤祐子・訳)
ぶっちゃけ「なぜこの本が売れていないのだ」と思う好著。外交の各方面に対するプレゼンスを総覧できるだけでなく、国際的に中華を垂直統合するようなグローバルガバナンスに対する適切な論評を加え、経済面、文化面(とりわけソフトパワー)から安全保障にいたるまで、中国という国と関わりのあるルートは総じてきちんと網羅してあります。
単なるエピソードではなく実際の中国が置かれている現状と、中国が醸し出したい雰囲気や虚像とのギャップ、また時間軸も見事に繋ぎ合わせており、ある意味でこの本をレファレンスに中国関連の記事を読むだけで立体的に現代中国の考えや意図が掴めるであろうというぐらいにちゃんとした内容です。
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ディプロマティックな方面ではウォッチャー程度の知識しか持ち得ない周辺国国民にとって、この本が手助けする現代中国の外交の有り様の解説は見事で、それは冒頭にあるように中国が世界の中にあってどのようなインパクトを持ち、また世界は中国にどう関わろうとしているのかという具体的な変数によって説明されている凄味があります。この本の最高の良さでもある、猜疑心や恐怖からの過大評価、過小評価を極力廃して、実際の関わりの中から中国の影響力の盛衰、中国中南海から地方政府その他の権力闘争と意図を読み解こうというのは、実に優れたアプローチだと思うのです。
個人的に専門とするサイバー攻撃に関する記述が薄いのは残念ですが、それは差し置いても充分すぎるぐらいの品質と適切な情報量で、現代中国外交事情を一冊選べと言われれば近著ではこの本をお奨めします。このクオリティで2年に1冊ぐらいずつ継続して出して欲しいとさえ思う内容でした。