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2015.05.04

ネイティブアドの「広告」クレジット外しが違法な件で、ふじいりょうさんへのお答え

 まず、明確に問題なのは「いままでも問題になっていたが、当事者間で解決した」か、「そもそもそのような問題取引が行われていることを広告主が知らされていなかったので対応できなかった」ことにあります。

 ふじいりょうさんがこの話で以下のように見解を述べておりますが。

サイバーエージェントなど特定企業の社員が違法なネイティブアドビジネスにぶっこんでいる件で
http://bylines.news.yahoo.co.jp/yamamotoichiro/20150430-00045307/
バイラルメディアの書き手のモラルハザードが起きる理由
http://blogos.com/article/111352/
ネイティブ広告はコンプガチャの轍を踏む--山本一郎氏の見解
http://japan.cnet.com/marketers/interview/35064049/

[引用]

私個人としては、JIAAのネイティブアドのガイドライン(参照)に端を発している一連のあれこれについて、「なぜこれまでグレーに上手く運用してきたことを、あえて明確にしようとしているのか」ということに疑問をもっている。あくまで自分の感覚では、著作権の二次創作の処理と同じように、景品表示法を厳密に解釈すれば抵触する可能性があるところを、お互いに(これはユーザーも含まれる)利害を調整する形で長年運用していることを、なぜ今になって変える必要があるのか、と考えている。

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 著作権の二次創作は、二次創作された現物があり、それを権利侵害をされた側は調べようと思えば調べられます。二次創作自体が市場を形成していて、著作物の性質上、派生作品が多数出る中で読者の創造意欲をかきたてその作品のさらなる認知拡大に役立てたいと考えるところは黙認したりフェアユースにしたりすることは可能です。もちろん、虹利用を制限したい著作者もいるわけで、そこは選択の余地はあります。

 今回のネイティブアドの「広告」クレジット外しは「クライアントがそれを求める場合がある」上に「適正な広告掲載であるかをクライアントが分からないケースがある」こと、またふじいさんが言うようなグレーゾーンではなく欺瞞的取引であるという点では景表法違反ど真ん中案件であるため、問題がもっと大きくなる前に消費者庁、JIAAなど関係団体がしっかりと問題を認識してガイドラインを出し遵守を求めようという話になっているわけであります。

 本件においては、かなり明確に「それ」と「これ」は違うのです。

 私がヤフーニュースに掲載した記事について、サイバーエージェントのIRからも見解が掲載されておりました。現在も、サイバーエージェントとは公式、非公式に問題の所在や認識、対応および方針について議論をしているさなかであり、この場で私の見解を追加して掲載することはしません。ただ、今後はこの問題はより分かりにくく、ややこしい方向へ進化していくと思います。すなわち、それはアドテクの問題であり、パーソナルIDのぶっこ抜きであり、個人に関する情報の無断での名寄せによるプロファイリングです。これらは、すべて今後、法律の規制の下に敷かれる可能性が高くなります。

 バイラルメディアについては、ふじいさんのご見解に私も近いんですが、どうもこの手の話は業界もネット社会もナイーブというか、感情的な内容に流れがちです。どういうわけか「いままでこうだったからいいだろう」ということで、あるべき状況に対する議論も無いまま、「どうモラルハザードを減らすか」が考慮されない傾向が強いと思っています。スパムメールもアダルトビジネスも、抱えている病理は一緒ですが、どこら辺が許容される限界値かを見極めて、スレスレでいっている業者ほど儲かるという図式が、却って問題を悪化させる大きな要因になっているように感じてなりません。

 個人的には、ちゃんと議論をするべきだと思います。それも、実態をきちんと明らかにして、立場も出して、お話をされるのが一番良いと思うんですよ。影でこそこそやるのも一興ですが、そういうのって、組織に一人裏切り者が出るとあっという間に露顕するものなので、バレたとき取り返しがつかなくなってしまうものなのです。

 私としては、そりゃ「いままで良かったんだから、無理に変えなくてもいいんじゃないか」という議論は理解するところですが、しかしやはり「いままでは良かったんだろうけど、このご時世、どうしてもここを緩ませておいたら全体が良くならないから、襟を正すためにもここでしっかり問題提起して良い議論を導きたい」という気持ちは強いです。逆に、そういう観点を抜きにして問題を座視して現状に甘んじていては、社会人としてもったいないと思うんですよね。

[引用]

つまり、個々が自分で勉強するしかないのだけど、別に「勉強しろ」と促されることもないから、何か問題でも起こさない限り学ぶ必要性も感じずに日々記事を投稿しているという人の方が多数派なのではないかしら、と思う。

--

 たぶん、ぶら下がっている人はこういう意識でいるのかもしれません。ただ、使っている側は、それが儲かるから人を使ってやっているわけでして、なぜ儲かるのか、その儲かり方は正しいのかを自問自答し続けながら仕事に取り組まないと大きなしっぺ返しを食らうこともあるんじゃないかと感じます。

 出かけるのでこの辺で。







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    やまもといちろう

    ブロガー・投資家・イレギュラーズアンドパートナーズ代表取締役。
    著書に「ネットビジネスの終わり (Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など多数。

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