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2015.04.09

「いい歳なんだから本ぐらい読もう」と考えた人のために

 と言いつつ、世には悪いことやって逮捕されて獄中で千冊本を読んでも相変わらず微妙な堀江貴文みたいな人も居ますが、先日、畏友の中川淳一郎さんと漆原直行さんとで『読書で賢く生きる。』という本を上梓しました。

 発売一ヶ月前になっても一文字も原稿書いてなかったので発売日が遅れてしまったのは、すべて私の責任です。申し訳ございませんでした。

 要するにどんな内容なのか? については、エッセンスの一部がなぜかCakesに連載されるという惨事が発生しておりまして、こちらをご一読いただけると助かります。

みんな、本に肯定されたがっている――vol.1|中川淳一郎/漆原直行/山本一郎|読書で賢く生きる。|cakes(ケイクス)
https://cakes.mu/s/u7uL2

 なお、序盤でいきなり

山本 でも、〝愚者〟は本読まないと思うわけですよ。

中川 いや、愚者も本を読みますよ。バカな本を!

山本 そう。つまり彼らはダマされるべくしてダマされてるわけじゃないですか。

 とまったく噛み合ってない鼎談になっていますが、それは気のせいです。すべては妖怪の仕業(死語)なのです。

 個人的には、読書というのはジャズとかクラシックの入門と同じく、ジャンルごとに入り口をしっかり見極めて、ちゃんと入らないと体系がなかなか身につかない世界だと思っています。オタクの世界でも釣りでも、必ず「好きであればこれを知っておくべき」という定番が入門としてあり、それが気持ちよければ奥に入っていくことができる。しかし、そのガイダンスもまったくなく「さあ、大人なのだから本のひとつも読め!」と言われてうっかりピケティ本とか買ってしまった大人が量産されてしまうわけです。あれ読みこなすのとっても難しいと思うんだよ。

 知識というのは単独で存在するものではなく、必ずコンテクストがあります。知識は固定ではなく変遷するんですよ。だから、ある一定の知識を得た後で、その知識が最新のものであるようにリフレッシュする作業が必要なのと、その知識を構成しているほかの知識と連関させて、体系化しておく必要があると思っています。自称イスラム国(ISIL)で惨事があり、日本人が殺されたというので時事に興味を持って新書を買いに行くとき、私はとりあえず池内恵さんの『イスラーム国の衝撃』を入門としてお奨めします。そこから先に、イスラームのことを知ろうと思わなくても、決して社会人として間違った知識を仕入れてしまうリスクは少ないからです。

 一方で、流行っているからといって『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』を手にとってしまったらどうなるでしょうか。分かり易いし、故ドラッカーさんの何たるかをもっと知ろうというモチベーションを持ってくれる読者が増えるのは良いことですが、そもそも野球の知識が間違っているし、故ドラッカーさんが『マネジメント』で伝えようとしていたことはああいう内容じゃありませんから、ライトな読者が「へえ。ドラッカーってのはこういう話をしていたのか」と誤解する可能性が高いと思うんですよね。

 そういう本の良し悪しを見繕うことができるのは、ある程度本を読みこなして、他の本と比較することができるだけの知的なバックグラウンドがあってこそです。そして、知識は常に陳腐化するものなので、すべてにおいて知識を最新のものにしておくことができるのは池上彰だけです。ここなら勝負できるという分野を絞り、アンテナを高くして常に最新の情報を知識として吸収できる活動を続ける一方、他の分野の情報は極力信頼できる別の専門家に頼って生きていくしか方法が無いのです。

 おおよそそういうことを書いた本なのですが、1月に言われて2月下旬に書き始めて3月に刊行予定となって4月にマテリアルが届いてしまうという強行軍をすることになるとは思ってもみませんでした。安請け合いというのは、人間にこうも心の滓をもたらすものなのだと痛切に感じた次第です。本当に出版にあたっては各位ほうぼうご迷惑をおかけしました。最初、できた本を送られてきたときは、本来感じるであろう「嬉しい」気持ちではなく「やってしまった経験のフラッシュバック」を抱いて、酔いが醒めてしまいました。

 皆さんも、時間的に無理な仕事については請けないという「断る力」を勝間和代女史からいまこそ学び取っていただければと強く願っております。

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    やまもといちろう

    ブロガー・投資家・イレギュラーズアンドパートナーズ代表取締役。
    著書に「ネットビジネスの終わり (Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など多数。

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