『地方創生』は結局インチキじゃないか?
統一地方選のど真ん中でこんなお話をするのも何ですが、おととしぐらいから増田寛也せんせの「地方消滅」からの「地方創生」各諸政策が微妙にインチキ度合いが強いように思えた点も含めて、内閣官房の”伝道師”木下斉さんと週刊プレイボーイで対談しました。
東日本大震災の復興事業は地方創生の失敗モデルになっている
http://wpb.shueisha.co.jp/2015/04/08/46201/
週刊プレイボーイ 2015年 4月 20日号 / 週刊プレイボーイ編集部 【雑誌】 |
全文は「週刊プレイボーイを買って読んでください」という、実にまともな大人泣かせな表紙が憎い状態でありますが、基本的には人口減少の原因である地方から東京への若い女性の流入を止める政策は無意味だし、地方経済を再生させるために助成金を出しても、メリハリをつけてイケてる地域とそうでない地域をしっかりと峻別しなければ砂漠に水をまくだけであるという結論をお話しています。
単純な話、増田せんせの人口モデルで説得力がありそうなのは「地方に人口のダムとなる中核都市を作る」というところまでで、若い女性が東京に出ず地方に留まるだけでは合計特殊出生率が上がるというエビデンスもなく、産業振興の根拠にすらならないだろうという話です。
一応、東京の出生率が他の都道府県に比べて低いのだ、だから人口のブラックホールなのだ、という話になってますが、因果関係としては東京での婚姻率が低く晩婚傾向があるから合計特殊出生率が低いだけで、結婚している男女において東京が特別に出生率が低いかといわれるとそういうデータはありません。また、地方にいる男女が成婚率が高いというデータもなく、必然的に東京に暮らしている女性を地方に留めておけば、東京より結婚して子供を産むだろうという仮説には何の裏づけも無いことになります。
この類は極当たり前の理屈に過ぎないし、多くの官僚も気づいているのですが、地方統一選もあり、政策の目玉が必要で、そのためには少子化対策だ、それに伴う地方創生による地方経済への経済支援だ、という金科玉条を掲げられると表立って反対しづらいという側面はありましょう。しかしながら、政策論はもちろん人口学的にも統計的にもエビデンスがない状態で「地方創生」を幾ら唱えても、生き返る見込みの無い地域に貴重な財源をつけ続けて浪費するだけであることは言うまでもありません。
したがって、本来必要な政策というのは「まだ生かせることのできる地域」と「見捨てざるを得ない地域」とを分ける線引きの基準をしっかりと作り、生き残れるところに予算や若い人口をきちんと集中させ、成婚率を上げられる政策を作り、子育て世代の負担を下げ、教育投資が充分にできる環境を作ることです。人口が減る中で、あまり知恵の無い地方が人口増加策を横並びで一生懸命取り組んだところで、地域の人口を奪い合うという無駄な競争に資源を浪費することになってしまうからです。
そのためには、地方消滅ではなくてせいぜい自治体消滅であって、地方自治体の再々編を促し、人の住まない地域は捨てて自然に返していって、社会コストを減らすしか方法は無いのでしょう。だって、住む人が少ないから少子化が問題になっているんですよ。人口が少ないところに予算つけたところで、人口が増えるはずが無いじゃないですか。
そんな中で、安倍晋三首相が「人口一億人維持」というお話を参院予算委員会でお話になったそうで、物議を醸しているわけなんですが。
「人口1億人は維持」=安倍首相—参院予算委
http://jp.wsj.com/articles/JJ11496913222397593731217898621032732108186
http://www.asahi.com/articles/ASG674S6RG67ULFA003.html
もちろん、日本の責任者として、人口を維持していくんだという強い姿勢を見せることについてはとても意義があります。一方で、できない国家目標を掲げて、あり得ない前提で政策を語ることがいかに無責任なことかも理解できます。どこぞの二酸化炭素削減の国際公約がさまざまな事情でいつの間にか無かったことにされるなど、骨太なのに行き当たりばったりだと、やはり物事の改善はむつかしくなるでしょう。
「介護福祉も少子化対策も地方経済も」という玉虫色で政策議論して、最終的にすべてが中途半端になって借金だけが社会に残るということのないよう、いまからでもきちんとした議論を積み重ねていきたいものです。
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