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2015.03.09

【書評】『最強のコミュニケーション ツッコミ術』(村瀬健・著)

 苦手な人と、話が続かなくて困っている人には、最適な本だと思うんですよ。
 対人スキルやコミュニケーションのあり方に悩みには、とても効く内容です。

 「ツッコミには10個の型がある」と分類されてますが、漫才やコントでなくとも日常会話で行うツッコミって、要するに相手と話を続けたり、内容を引き出すための「うまい相槌」のことなんですよね。

 相手との会話での違和感へのツッコミの技法をうまく使うことで、話が途切れなくなったり、ミスを正せたり、相手に「あ、こいつは俺の話をちゃんと聞いているんだな」と感じてもらえやすくなるのは間違いありません。こうして本書で10の技法と分類されて読み進めてみると、確かに私自身も対談その他で似たようなことを考えているし、逆に自分でできていない技法があることに気づきます。「セルフツッコミ」とか「ノリツッコミ」はほとんどしないですし、この分類だと自分はこれとこれは多用してるな、とチェックすることもできたりします。

 本書の後半は圧巻で、コミュニケーションだ、対話する力だとテクニックを惜しげもなく披露しておいて、最後に出てくるのは人と人との関係の中にある「間」。ここだけはセンスだと思うんですよね。結論は出ているんだけど、敢えて考えているふりをするとかそういう意味ではなく、相手にリアクションの内容として行間を読ませるような「間」って、生きてきてあまりまじめに考えたことはありませんでした。

 著者曰く、リアクションとしてのツッコミは才能ではなく努力と経験で培える。確かに、相手の機嫌を損ねずにいかに間違いを指摘するか、受け入れられやすいよう意見を伝えるか、聞き手として上手に気持ちよく話してもらって印象を悪くしないか… 様々なコミュニケーションのスキルの原型が、まさかお笑いのツッコミという角度から解き明かされるとは思ってもなかったです。

 むしろ、著者は放送作家の方のようですが、タイトルにもあるようなお笑いの世界観を読者が変に意識する必要は無いと思います。コミュ障を治したい、人と普通に対話できるようになりたい、興味のない人や話題でも一定の会話のラリーを続けたいという涙の止まらない系の悩みを持っている人ならぜひ一読するべきです。相手との対話の中から自分なりの違和感を見つけ出し、そこを打ち返すフックにして相手の話を引き出して沈黙を避けるというのは、マジで目うろこです。文字通り、眼鏡が落ちました。移動中の飛行機で読んでて、何度も読み返してしまいましたし。

 唯一注文があるとするのなら、この書名は微妙です。お笑いメソッドの解説本のようでいて、これは対話している相手の言葉や表情から違和感を掴み取り言葉を繋いでいくための技術書兼思想書ですわ。「ツッコミ術」となってますが、むしろ「ツッコミ道」です。テクニカルだけど、相手を洞察しようという強い気持ちがないと発動しないスキルですし、まったく共通の話題や前提知識のない人でもちょっとした興味関心からどうやって会話を繋ぎ広げていくかという心の問題ですから。このやり方を知って実践しようという気持ちの準備があるだけで、落ち着いて知らん人でも対話できるようになるんじゃないかと思います。

 よくもまあ、これだけのことをあっさりと新書で書くもんだなと感心しましたし、むしろお笑いを前面に出すよりは「対人スキルの磨き方」だと思って読んだほうが一般の人にはわかりやすいかも知れません。そのぐらい、良くできた本でした。

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    やまもといちろう

    ブロガー・投資家・イレギュラーズアンドパートナーズ代表取締役。
    著書に「ネットビジネスの終わり (Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など多数。

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