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2014.09.02

市場の縮小に比べて新聞社が多すぎる問題

 例の読売新聞の「攻勢」について、物議を醸していたという話を耳にしましたけれども、日経との協調策であったANYが崩壊し、通信社の再編もすぐにはむつかしいとなった段階で、どこかで「全国紙同士の潰し合い」という読者のパイの争奪戦になるのは当たり前のことだと思うんですよ。

 これは、電通が出している調査資料でも明らかですし、発行部数が減少し、新聞への広告出稿も右肩下がりだ、というところから見ても、このビジネスモデルはいったん終焉に導かれることを前提に椅子取りゲームになるのは皆わかっていたことじゃないですか。

 ただ、ビジネスの面から語るべき論点は2つあって、簡単に書けばこんな感じです。

1) 死ぬのは輪転機を回して印刷された新聞を配るというシステムというだけ。しっかりとした能力に裏付けられた新聞記者や、彼らの手による記事が死ぬわけではない。単純にメディアの問題。

2) メディアの問題は読者の問題。読者のリテラシーが「紙で印刷された情報を読み理解する」世代が年齢と共に引退し、減少していけばそれだけ裾野は狭くなるが、いきなりゼロになるわけではない。

 その結果、紙で印刷された新聞記事による利幅はとても高いが、他のメディアで伝えられる新聞記事はそのクオリティを担保するに足るだけの利益を生み出さないので問題になっているに過ぎません。

 したがって、紙で生きていく新聞社は部数をすり減らしながら残存者利益を狙い、一方で残っているストックを使って次のメディアで利益を上げられる体制を築いていくことが至上命題なわけですけれども、その博打を打つために必要なものは読み手の情報であって、これが新聞社の成長を昔助けた販売店が持っていて却ってボトルネックになっています。ここをうまく問題解決し、読み手とのリンケージを取れた新聞社から収益を確保できるだけの経営改善を図れるでしょう、というのは良く分かっている話。

 それゆえに、DMP事業こそ本来新聞社がやるべきことなんですけれども、そのあたりの経営をいままで刷新した経験がないので、電子版やらID統合やらで手間取るのは仕方のないことなわけです。これは、毎日を除くすべての新聞社が一度は取り組んで失敗し、いま何周めかに差し掛かっているところなんですが、ここを切り抜けられたところが次の世代のコンテンツ産業として生き残っていくコングロマリットになるでしょうということで。

 実は、過去にも新聞社はラジオからテレビへのメディアトレンドの変遷で似たような経験をしています。前回と今回の違いは、元となる新聞事業の減速具合が大きく異なるということと、日本経済が伸びていく最中でのメディアシフトと、日本経済が相対的に衰退している中でのメディアシフトではまったく状況は違うでしょうという話です。

 当たり前のことを、当たり前にやるんだという話なんですが、最近どうもそちら界隈から聞こえる話が「報道がお荷物」とか「読み手を教導するのが新聞社の役割」などといった、こちらからすると「もう新聞社というのは絶対無二の世界じゃありませんよ。いまどき何を言っているんですか?」というような話ばかりなので、やはりここは襟を糺して真摯に置かれた立場を冷静に見つめて市場と向かい合う姿勢が大事なんじゃないかと感じる次第です。

 別に「朝日新聞はとりあえず潰れて欲しい」という意見ではないのですが、置かれた立場ぐらいはしっかり認識して欲しいということで。miximixi。


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    やまもといちろう

    ブロガー・投資家・イレギュラーズアンドパートナーズ代表取締役。
    著書に「ネットビジネスの終わり (Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など多数。

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