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2014.06.03

北朝鮮のビッグブラザー

 日朝交渉前進を巡って、中国との関係改善を望む北朝鮮にとって日本は当て馬であるという議論が出ておりまして、首肯する部分も強いわけですが。

恋愛ゲームの当て馬となった「日朝協議合意」
http://www.nippon.com/ja/column/g00176/

 foresightでも平井さんが興味深い論考を展開しております。

前向きだが「地雷」の埋まった「日朝合意文」
http://www.fsight.jp/27016

 日本としても、経済制裁の緩和程度のカードを緩める分には問題ないであろうし、何がしか不都合が出たらまた蛇口を閉めれば良いというところでありまして、別に本格的な雪解けを狙ってどうのこうのという話ではないと思うわけです。ただし、暴力団だ薬物だ第三国経由の違法取引だ地下銀行だ脱税だというのは御免蒙りたいわけですから、なんか厚着の女が一枚コートを脱いだからといって恋愛ゲームで修羅場になって二股だという話にはあんまりならんのではないかな、とも感じます。

 で、隣国たるロシアにおいては日朝交渉の進展については大変明確な態度をとっておりまして、一言で言えば「どうでもいい」というところであります。当然ですね。ロシアの声でも、淡々と事実関係だけを述べるに留まり、いかに興味ないかということだけが胸にひしひしと迫る口調で記述されています。

拉致被害者はいつ家に戻れるのか?
http://japanese.ruvr.ru/2014_06_02/273080918/

 唯一、目を引くところといえばこの辺でしょうか。この「俺たちは知っているんだぞ」と言わんばかりの態度に尊敬の念を感じます。

[引用] その上、2002年の苦い経験を学んだ北朝鮮当局は、恐らく、同様の譲歩が善意のジェスチャーとしては受け入れられず、あべこべに、さらなる関係悪化をもたらすのではないかと懸念している。日本の人々が、北朝鮮スパイのここ数十年間における自国内での活動を知ったなら、日本の世論は黙っていないだろう。

 当の中国はもちろん面白くないわけで、この方面の外交資源があまり潤沢ではなくなっている状態で日朝関係が改善してしまうと、やはり何らかの形で譲歩するような話が出てくるのかもしれません。そしてそれは、冒頭にありましたように北朝鮮の術中に嵌ることをも意味するわけでして、せっかく中途まで進んでいるアジアでのアメリカの同盟国(要は韓国)の切り崩しにマイナスの影響が出るのでありましょう。

 ただ、日米中露の共通の利害として、基本的に朝鮮半島は現状維持であってくれたほうが心地よいわけです。北朝鮮が崩壊してうっかり難民でも出て欲しくないし、内乱が起きて介入コストを払いたくないし、朝鮮半島統一でもされて混乱されてもたまらないし、基本的には注目しているけど変な弾け方をしないで欲しいという点では一致しています。

 やはり、火薬庫は火薬庫として静かにいつまでも爆弾を抱えていて欲しいわけでして、これがバルカン半島のような情勢になって混乱し始めるとアジアの安全保障の枠組みが物理的に試される事態になってしまいます。この辺が、どうでもよさと面倒くささの並存した朝鮮半島情勢についての基本的な態度と思っておいて問題ないんじゃないですかねえ。

 最後に、日本はやはり朝鮮半島の隣国だけあって、世代交代も進んだこの方面の安全保障の専門家の層が厚いのが救いです。日米同盟がアジア安定の第一変数であるというのは事実として、その相関としての日韓、日朝問題というのは良く見ておいて損はないのではないでしょうか。

 BLOGOSでは韓国側の立場がすごく良く分かる文章が掲載されていたので、ご関心のある向きはどうぞ。

「韓国人が本当に思っていること」 - 韓国元外交通商部東北アジア局長・趙世暎
http://blogos.com/article/87264/

 確かにこんなところだろうなあ、と思ったり。



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    やまもといちろう

    ブロガー・投資家・イレギュラーズアンドパートナーズ代表取締役。
    著書に「ネットビジネスの終わり (Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など多数。

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