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2014.02.06

笑いと不謹慎の境界線

 私もどちらかというと相手の気持ちをうすうす分かっていながら過激な言葉を書いてしまうほうなので、一連の『明日、ママがいない』問題はきちんと考えるほどに「んー」と思ってしまいます。本件では2件ほど寄稿ご依頼があったんですが、多忙にかまけてお断りをしてしまいました。別にどっちか特定方向への配慮をしているわけではないですよ。

 私自身は、いまでこそ三児の父というか惨事なんですが、長きに渡った童貞、独身時代も、結婚してからいまなお児童養護施設に対する寄付をさせていただき、また奨学金を求める学童への援助もささやかながらさせていただいております。なぜそれをいちいち書くかというと、自分でもそれが偽善であることは良く承知しているからで、それでもそういう資金で助かっている子供がいて、またそういう活動があるのだということを知った人が百円でも出してくれればと思う気持ちがあるからです。

 で、当然のように児童養護施設の状況から見ますと、ドラマとしての『明日、ママがいない』は現実離れしており、実際に施設で生活している学童に対する偏見を助長する可能性があるというのは事実であり配慮するべきことだと思います。

 その一方で、テレビに限らず国内のコンテンツはこれらの問題に対しての向き合い方がどちらかというと「問題排除」の方向で動きやすく、過剰に言葉狩りも含めた表現の自主規制を行い続けて面白くなくなっていき、結果としてネットなど自由な場で鬱積した表現が爆発するという便所の落書きのような世界観になってしまったのは残念であります。

 これらの配慮の結果として、当該番組のスポンサー全降りCF自粛という結構な事態に発展して、番組の内容見直しをしないという日テレ大久保社長の強気な態度も真正面から叩き潰されることになってしまいました。

 問題のドラマを観ていて思ったのは、いまの児童養護施設の事情を充分に斟酌して、面白いフィクションを作る余地がたくさんあったのに、どうしてあのようなミステリーハウス的な捉え方で作品にしてしまったのかという疑問です。ぶっちゃけ、多感な時代を迎えた児童が一つ屋根の下で共同生活を送るなかで起こすさまざまな青春や葛藤、忸怩たる思い、嫉妬、難局に立ち向かう気持ちなどなど、私が見聞きする中では私自身さえも羨むような若者の姿がそこにはあります。

 もちろん、さまざまな事情を抱えてやってきたという悲しみに包まれた人生を引きずって、それでもなお自分の存在意義を自問自答し、社会に適応していくためにどう生き抜いていくのか考える子供たちの気持ちに向き合うのは、遠巻きながらの関係者である私たちにとっても考えさせられるものがあります。

 しかし、これが独身寮や警察、自衛隊といった舞台であったなら、かのドラマの内容や表現がここまで問題になったでしょうか。あるいは、田舎の大家族の相克やタワーマンション、団地のような世界観であったなら、もっと違ったりアクションになったであろうと思います。

 そして、そういう「もう少しやりようがあったんじゃないか」と私が思い至る理由の最たるものは、児童養護施設とそこで暮らす職員の方々や子供たち、そしてそこから巣立っていったみんなが私の人生にとって身近だからです。それゆえに、あのドラマに出てくるような施設の有り様って、自分の見聞きした幾つかの施設での二十何年かの実体験からくるとまったくピンときません。

 表現規制がどうという以前に、児童養護施設という名前だけを使ってセンセーショナルで悲惨な人間ドラマを作りたかっただけなんじゃないでしょうか。

 これがもう少しきちんとしたリサーチの元に、実際に施設で起きそうな人間の機微に触れるドラマ脚本であったならば、子供たちの人生をより良いものにしたいと考える関係者からの応援の声ももっと大きかったことでしょう。

 残念なことに、そういう事実にドラマを少しでも寄せるという描写もなかったので、テレビの表現規制をこれ以上するべきではないという私本来の見解も曲げざるを得ないと思いました。ストーリー的な意味でのフィクションはしょうがないけど、児童養護施設というはっきりとした実態があって関係者や児童がいる限り、その方面に対する完全なる誹謗中傷に類する作品を擁護することはできないでしょう。

 いやー、児童養護施設って面白い子いっぱいいるんですけどね。
 なんであんな雑な感じでモンスター詰め所みたいな代物にしてしまったんでしょうね。


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    やまもといちろう

    ブロガー・投資家・イレギュラーズアンドパートナーズ代表取締役。
    著書に「ネットビジネスの終わり (Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など多数。

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