【書評】『なぜ、システム開発は必ずモメるのか? 49のトラブルから学ぶプロジェクト管理術』(細川義洋・著)
読んでいて、実用書なのに涙が止まらない本に巡り会えたので謹んでお奨めさせていただきます。
その名も、『なぜ、システム開発は必ずモメるのか? 49のトラブルから学ぶプロジェクト管理術』。何がヤバイって、いちいち掲載されている項目がヤバイ。いきなり「何度も要件を追加してくるユーザ」ですよ。まるで弊社の某顧客ではないですか。
大項目からして「設計」から「プログラミング」、「テスト」とか進む先々にびっしりと地雷が敷き詰められているんだろうなあと悪い汗をかかずにはいられない世界が広がり、最後にはお決まりの「契約」。いやー、読んでいてぞくぞくしますね。特に「仮発注書だけで作業に着手してしまったら?」とか、なんか見透かされているようですよ。まあ、業界的には往々にして起きがちなことを一般論として書いておられるからなんでしょうけどね。
素晴らしくよくまとまっていて、仕事に従事している人間からしますと身につまされ放題の好著ではあるんですが、本書ではどういうわけか小芝居が挟まっていて、そのプロジェクトマネージャーの名前が「一郎」です。私じゃないよ。せめて太郎にして欲しかった。「このプロジェクトはベクレている」とか放言して火災を起こす類の。
「何年かかるの? IT紛争」というコラムでは、筆者の細川義洋さんご自身の経験も踏まえて直面している会社も多いであろうこの手の契約、知財紛争についてしれっと書いてあります。また、p260には契約書を書くに当たってのポイント一覧が出ており、私の目から見ましてもいちいちごもっともでございます申し訳ございませんでしたと熱く涙を流して己の不明を恥じ深く沈思黙考しこうべを垂れざるを得ない数々の事例と共に走馬灯のような思い出が惹起されて不愉快になりました。もっとも、頭を下げる先は不当な苦労を強いられた社員に対してであり、問題を起こしたクライアントの方向ではないわけですが。皆さんもそうなりませんように。
本書を読み終えて、つくづく思うのは見積もりは正確に、というところです。正しい工数を見極めるための要件定義やプロジェクト管理であると言えましょう。ぶっちゃけ、携わっていると「そんなの知ってるよ」ってなりがちなことでも丁寧に折り返しながら日々の業務を思い返すだけでもこの本の値段分以上のストレスは解消できるのではないかと思います。
次回作があるとするならば一郎がもう少し活躍している作品になることを祈念いたします。mixiともどもよろしくお願い申し上げます。
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