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2013.10.04

サイバーエージェントがツッコミどころ満載のスライドを発表(追記あり)

 面白かったので。

進化ゲーム理論の枠組みを用いたソーシャルゲームにおけるユーザの利他的行動の分析
http://www.slideshare.net/cyberagent/ss-26809354

 前提条件として、利他的プレイヤーが最終的にHPの多いボスを倒す、そして全員にリワード(報奨)がいくのであれば、結果として利他的プレイヤーが利己的プレイヤーを排除するモデルが成立するよね、というシステム論があるわけなんですが、基本的にはこの研究ではそれを踏襲しています。

 ただし、現実にはHPの多いボスを倒すことで全員にリワードが与えられるような環境はあり得ません。出されたピザは人数分で等分されるのです。結果として、利他的プレイヤーとはゲーム内で与えられた環境でしか存在できず、そこから導き出される数理モデルも所詮は「プラスサムゲーム下では人は優しくなれる」ということ以上は実証できないでしょう。

 もっというならば、ここで論じられているゲームシステムはゴールなき永続が前提になっています。常にユーザーは時間を使い、ひたすらゲームは発展していき、終わりなくキャラクターもボスも強化されていきます。しかし、実際にはゲーム理論で問うならばなおさら目的志向、つまり勝利条件による行動の制約が為されなければOR的な余地は存在しなくなってしまいます。

 そして、利他プレイヤーとして定義される人々の行動は強いボスをクリックするだけです。そこに利他行為として必要なリソースはほぼそのプレイヤーの手間しかかかりません。100円1,000円物理的に譲渡するわけでもないゲーム中の行為に利他もファンタもありませんよ。

 サイバーエージェントが今後この実証に引き続き取り組むのであれば、より良いゲームシステムを選ぶ必要があります。それは「ディプロマシー」です。

ディプロマシー
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%9E%E3%82%B7%E3%83%BC

 利他プレイヤーと利己プレイヤーというクソみたいな線引きは存在せず、まず自分が生き残る、そのためにはどう立ち振る舞うかというモデルを検証することが、この手の研究においては極めて重要な概念であることは間違いありません。というか、ソーシャルゲームみたいにリソースの増大が無限大なプラスサムの世界をモチーフに数理モデル組んでどうするんですか、という話です。

 研究チームには猛省を求めつつ、サイバーエージェントには上記ディプロマシーのソーシャルゲーム化を強力に推進し、スマホとスマホの向こうでプレイヤー同士が血圧を上げ顔を真っ赤にして罵りの言葉をぐっと我慢しつつ低姿勢な外交文書をちくちくと送り続けるこの世界観を実現して、そこから数理モデルを形成していただきたいと切に願う次第です。

 今後ともよろしくお願い申し上げます。


(補遺 13:07)

 「この発表のどこがおかしいんですか」というメールを頂戴しまして、どうも本気でこの発表の面白さと可笑しさが分かっていない人がいるようなので、簡単に補足します。

・ そもそも、調査の場となっている当該ゲームは、システム上、ボスをプレイヤーの攻撃の加算で倒す仕様である。

・ そのボスを倒すことができれば、原則としてその攻撃に参加したプレイヤーすべてに報奨が与えられる。

・ つまり、ボスの攻撃に他プレイヤーと一緒に参加する行為が、仕様上、プレイヤーにとってもっとも利得が大きくなるような仕組みとなっている。

・ 当然の選択として、このようにボスの攻撃に積極的な他プレイヤーを、そうでないプレイヤーよりも多くフレンドに置いておく行為が合理的である。

・ プレイヤーは利他的な行為を選択しているのではなく、利己的行為の延長線上で他人と一緒にボスを攻撃し報奨を得ようとしているのであって、ゲーム中プレイヤーが利他的であるほうが有利だという結論は到底導き出せない。

● また、このゲームはプレイヤーが時間を使えば使うほど原則としてキャラクターが強化され、目的は常にストレッチされる。
 → そうであるならば、フレンドの選択においては「(このスライドで定義される)利他的なプレイヤーであるか」も重要だが、それ以上に「自分以上に強いキャラクターを持つプレイヤーか」「自分並み、あるいはそれ以上にこのゲームにおいてアクティブなプレイヤーか」といった他の定義も発生する可能性が否定できず、利他的なプレイヤーを奨励するゲーム仕様へフィードバックするには不充分であると指摘されるべきだ。

 もしも本気でゲームデザインにこれらの数理モデルをフィードバックするのだということであれば、当然のごとくリソースが増大する一方のゲームは不適切で、ゼロサムゲームをベースにORを策定しなければ無意味ではないかと考えられます。本来の利他とは、自身の目的を達成しようとする行為を選択するに当たって、自身の有益なリソースを払ってでも他者の利益のために配分するよう振舞い、その結果がどう積み重なるかという定義がなされるべきだからです。

 いじょ。


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    やまもといちろう

    ブロガー・投資家・イレギュラーズアンドパートナーズ代表取締役。
    著書に「ネットビジネスの終わり (Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など多数。

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