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2013.01.21

イケダハヤト師型炎上をどう表現するべきか?

 昔から、ウェブ界隈でもいわゆる「釣りっ放し」を芸とする人々と言うのがいて、ある一定の特徴があった。

 例えば、内田樹さんという人は、専門がしっかりあって、そっちの業績ではきちんと世間で認められている一方で、専門から外れた物事でゴミすぎる論説をしては物笑いの種にされる。せっかくの知性が台無しというか、人間の知性と言うのは水の入ったコップも同様に、傾けると深くなるが別のところが浅くなるのは仕方がない、という人間の限界に思いを馳せてしまう。

 しかし、イケダハヤト師である。内田樹さんと同列にするのもどうかと思うが、いや本当にどうかと思うのだが、私個人の心象風景としては「切り札となる専門知識を持たない内田さん」みたいな雰囲気である。あるいは内田さんから知性を取り去った感じ。その際における炎上は、爆発的な燃焼と立ち上る黒煙とか、上杉隆のような確信犯の手による劇場型の炎上というよりは、赤外線がずっと放出されているような、半減期のとても長い感じの炎上をイケダハヤト師はしているのだろうと思う。

イケダハヤト氏のおっしゃるとおりにフリーライターやってみた。
http://blog.livedoor.jp/entamago/archives/20966921.html
「イケダハヤトが25歳世代の常識?お願いだから笑わせないでください」-AERAの特集を読んで
http://goodbyebluethursday.com/archives/21942280.html

 イケダハヤト師に対する論説は大変多くなってきている。まるで藤沢和希さんへツッコミを入れる金融関係者のように、ウェブやライティングの当事者が一番イケダハヤト師に対して怒りを感じているのかもしれない。

 だが、個人的に思うのは、イケダハヤト師は単にモノの言い方が腹立つだけであって、その本質は「だって俺はこう感じたんだもーん」というピュアで正直なイケてない個人による感情の吐露である。そのときそう思った、こういう話を聞いて感心した、面白かったので引用した、そういう日々の等身大イケダハヤト師の言葉が呪詛のように連ねられているだけであって、それを読むというトラップに引っかかった個人が勝手に怒ってしまったとしても、それはイケダハヤト師からするとどうでもいいのである。

 いわば、盛大なチラシの裏であり、究極のライフログの執筆者なのだ、イケダハヤト師は。だから、昔と今とで語ってることが違うやんけと指摘したところで、イケダハヤト師からすると「でも俺はそう感じたんだもーん」という話であり、そこには何のクレジットも論理性もない。必要ない。なぜなら、それがイケダハヤト師の個性であり、商品価値でもある。

 それが5年なり10年なり続いて、熟成された結果として、何か別の価値が生まれているかもしれない。ちりも積もればゴミとなる的な余地は残されているに違いない。そして、一方でイケダハヤト師がウェブで話題になる、話題になってしまうというのは、相対的にウェブウォッチ市場が不景気で、ヒット商品が不足しているからに他ならない。もしも、量産型勝間和代たる安藤美冬や、与沢翼のようなどうみてもアレな連中など、そういう粒の揃った製品がしっかり企画され出荷されていれば、わざわざhagexやotsuneやその他ヲチャーがいちいち論ずるまでもないだろう。

 重要な理由は、ヲチャー関連においては一大需要であった東日本大震災から福島第一原発事故関連の話題でイケてない知識人の駄目発言による話題が一巡してしまい、揶揄しようにも飽きてしまったという事情があるのではないだろうか。東海アマであれ上杉隆&自由報道協会ブラザーズであれ、どうせもうガセネタしか流さないんでしょということでいちいち反応する意欲がウェブに失われたと言うのが大きい。

当事者でもないのに怒り狂う善人たち
http://blogos.com/article/48816/

 例えば、イケダハヤト師が絡み芸を披露しようとしたとする。ご覧のように、論述としてはイジメかっこ悪い方面からZOZOTOWN前澤友作さんの放言をフォローしているのだが、決してクオリティは高くない。ただ、そこには「俺もウェブでは不当に価値を貶められている」→「だからtwitter発言の炎上で同じく不愉快な思いをしている前澤さんをフォローしたい」という浅い意図が美しく表現されている。分かりやすい。

 イケダハヤト師が不快がられるのは、読まなければいいのに思わず釣られてしまって読んだ結果、クソの役にも立たない質の低い考察を読まされイラッときただけでなく時間の無駄になったという読み手が自分自身を責める心にある。つまり、精神修養が至らない自分に対する怒りなのだ。イケダハヤト師の文章を苦もなく流し読めるようになってこそ、真の知性なのではないかと。

 だからこそ、読む者にとってリテラシーを獲得するためのハードルとしてイケダハヤト師は機能しており、これはこれでウェブの資源として大事に守っていく活動が必要なのでは? と感じます。なるだけ読まないとか、読んでも言及しないとか。


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    やまもといちろう

    ブロガー・投資家・イレギュラーズアンドパートナーズ代表取締役。
    著書に「ネットビジネスの終わり (Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など多数。

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