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2013.01.16

知名度はあるけど計画を立てない中高年について

 先にTechwaveの編集長を辞任し、副編集長になったらしい湯川鶴章さんの件を、私なりにまとめ、応援するつもりで書いた記事がどうやらオーバーキルだったようです。別に湯川さんに喧嘩を売る意図はありません。ただ、いかんせんTechwaveは後発で、類似のコンセプトで頑張っている先を行った(逝った)ウェブメディアも多数ある中で、独自色を出すまでには至らず、明らかな営業難に陥って人員を維持できず記事の品質も引き上げられないというマイナスのスパイラルに入っているように外部からは見受けられました。

 なので、撤退を志すのであれば、まだ余力のあるうちにという意味も込めて、先のない仕事に拘泥して未来を潰すよりは国民の生活が第一ということで湯川さんの新しい門出を私の言葉で語ってみたつもりでした。興味がないなら、そもそもエントリーなんざ書きませんし、そこは間に立った方もご了承、ご容赦賜りたいところでございます。

Techwaveも満足に運営できなくて、次にどんな大きい仕事があるのか知りたい
http://kirik.tea-nifty.com/diary/2013/01/techwave-595a.html

 ただ、私がエントリーを若干揶揄気味に書きたかった部分は、TechWaveが不振そうだから儲からずに引き上げたんじゃないかと思った点や、すっぱり辞めるなら辞めればいいのに副編集長に留まるというような往生際の悪さ、うだつの上がらなさといった点ではなく、次のことも満足に発表できないのに身を退くところだけ発表している点です。

 これが、仮に事業家や投資家であって、相応に水面下で仕事をしたり充分な規模の事業を別で抱えているのであればともかく、通信社を退職された後でイベントやセミナー、コンサル系以外で湯川さんが活動されているという話を聞いたことがありません。都市伝説ぐらいの勢いなんじゃないかというレベルです。

 ここから先は一般論ですが、ある程度、若い人が何かに熱中し、がむしゃらに好きを仕事にしたいとか、これで世の中を変えようとある種の無鉄砲で起業化するというのは微笑ましいし、応援したいところです。そこに打算や計算、勝算といった要素が見え隠れするのは、投資家から見て逆にマイナスになることもあるぐらい、純粋なエネルギーが事業に注がれ、徹夜上等で事業を作り上げていくんだというのは良いことです。その中で、ガンガンと何度か頭をぶつけてみて修正するというのも許される範囲内でどんどんやっていけばいいですし、芽が出るまで支援しようという大人も多数出てくる可能性はあるのでしょう。

 一方で、ある程度酸いも甘いも弁えて、世にあるおよそ目の届く範囲の海千山千を前に長年頑張ってきたベテランに求められることは、若い起業家の持つエネルギーとはまた異質なものです。それは、経験に基づいた事業勘や嗅覚といった人間のセンスに関わるところや、事業計画の立案や太い人脈を駆使した大口のトップセールスといった事業を成り立たせてくれるハンズオン的な何かが求められているはずです。つまり、中年以降が身を野に放つというのは、それだけのサバイバルスキルやプロとしての専門的な何かがあって欲しいという意味でもあるのでしょう。

 それが、字面として表には出せないのかも知れないけど、あれだけの知名度と実績と、業界の中でトップたちとの信頼関係のある人が、なんの未来予想図も期待感も表現しないままどこぞの国の「戦略的転進」のような表現で身内持ち上げながら一線を去るなんて、考えられますか。もったいないでしょ。あれを見たら誰か声をかけてくれるとか、あるいは外部には知り得ない大きな何かが動いてるとか、あれこれあれば話は別ですが、どうやら関係者の方から話を聞くにそういうことでもなさそうだ。

 あんだけいろんなことやってきておいて、いったい何をしているんだと思ったのです。待ってる人もいるだろうに。私のような業界最底辺のアウトサイダーにとっては中で具体的にどんな話がされているのかすべては知り得ないけど、本当にもったいないのです。善良なベテランが、培ってきた業界知識や経験を元に、業界かくあるべし、社会に対してこのような貢献をするために、業界はここをモラルとして是正する必要がある、というような形でウェブメディアを使い、呼びかければどれだけ良かったことか。あるいは、業界としてプライバシー問題やネット政治、あるいは医薬品のネット販売規制といった、本当に業界がネットユーザーのために何ができるか、規制と業界のあり方、あるいは世界の中の日本としてウェブがどういう知的財産の輸出に貢献できるのか、そういう本質的な議論を先導することが求められていたんじゃないですか。

 私みたいなクズが何を言ったってなかなか現状は変えられないから、然るべきポジションにおり信頼も実績も持つ人間が背負っている使命というものになぜ最後まで気づかなかったのか、不思議でなりません。そのための場を持ち、能力のある有志がいたにもかかわらず、数年の時間をかけて次に何が続くのかも表明できず後退してしまうというのは、明らかにウェブ社会が残念、というか損失だろうと思います。

 率直に言えば、いまからでも遅くないからウェブ業界が一番足りないもの、それはネットに対して不要な規制がかかったり、かかっている現状を打破できるような言論と集客をやる具体例を示して欲しいと思うのです。それは、津田大介さんではできないことです。というか、私たちの世代ではまだ、無理なんですよ。その成功のロールモデルを作ることを上のウェブ人には求めたいんですが、どうしてくれるんでしょうねえこの日本の残念なウェブは。


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    やまもといちろう

    ブロガー・投資家・イレギュラーズアンドパートナーズ代表取締役。
    著書に「ネットビジネスの終わり (Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など多数。

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