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2013.01.25

『米中冷戦』は本当にまずい。代理戦争させられるのは我が国だぞ

 このほど、本当に米中関連のトピックスは増えておりまして、尖閣諸島問題など具体的な領土問題を抱える我が国を差し置いて米中間の鍔迫り合いが本格化しております。

 近日中にforeign affairsなどでも出ると思いますし、米系シンクタンクからも米中対立の予想というよりは、米中間でどこが戦場とされる可能性が高いかと言う具体的なシミュレーションが次々と行われる状況となっておりますけれども、一番心配されるシナリオは「偶然発生する日中紛争」であります。確率が高い、というよりは、戦場となった場合の世界経済に与える影響が大きい、という意味ですが。

 これは、ロシアの安全保障専門家からも類似の話が出始め、東アジアのリスクにおいては上位に挙げられる事態となって、今までどおりの外交的努力だけでは道筋がつけられない重大な事態に発展した場合、落としどころが見当たらない可能性があります。最近になって、中国中南海(外交部)と中国人民解放軍との間で対日強硬論に出る場合のパイプのあり方を模索する動きが出て、わざわざ公明党の山口代表が中国訪問する際に、ちょっといままでとは格の違う人たちが出てきて、従来とはまた違う雰囲気の折衝が行われました。文字通り、政権与党であり安倍政権の一角である公明党に対してパイプ作りを直接する、そして中国外交部と公明党の間で「尖閣諸島問題の棚上げ論」が語られるというのは、かなり熱量が高くなってきてしまっている証左でもあろうと思います。

 公明党というのは比較的穏健な安全保障政策を掲げる政党であり、いわゆるネット右翼に支持されたと中国が思っている極右の安倍晋三政権の「バックドア」であります。というか、いまの日本の与党を見渡して、中国がメッセージを伝えてとりあえずきちんと受け取り理解してくれる先が、実は公明党しかなかったということでもあり。

 この中国の中枢における「知日派」というのは非常にアレです。どうアレかというと、本当の意味で上を目指せる人は日本専門家にならんのです。まずアメリカ、次に欧州であり、そしてアジア方面全般の専門家がいて、その中にようやく日本がある。だから、中国側の知日派とされる知識人は日本の状況把握のために朝日新聞を精読していますとかいうことを平気で言うわけですね。中国ほど、関係改善のための戦略対話が本当の意味で必要な国はないのですが、安倍政権はいろいろありましてそういうパイプ作りをしたいのは間違いないのでありましょう。

 一連の公明党との話し合いの中では、当面は「野田政権が駄目だったので、新しい指導部同士きちんと連携を取って緊張緩和へ向かいましょう」という話になっております。戦争をして、お互い傷つくのは嫌ですし、突発的事項で局地戦で終わる保証はないのですから、いざというときに話せる相手を双方用意しておきたい気持ちは分かります。

 ただ、そこで選ばれるのが公明党であり、託されたメッセージがあまりにも危機的だというのは悩ましいわけです。棚上げを話している横で、現地では領空侵犯が高頻度で行われている相手を信頼しろと言うのはなかなか難しい。外交は右手で握手しながら左手で殴り合うものだという原則があったとしても、かなり本気で総力戦研究を始めないと日本にとって手遅れになる可能性はあるでしょう。

 そのひとつは尖閣諸島だし、またサイバー攻撃だろうというのは誰もが分かっていること。その歯止めをかけようにも、やはりそれ相応の期間と予算が必要ですが、ようやくNSCでも作ろうかという議論が出ている状態で、これは本当にマズいことになりかねないよなあ、ということでもあります。

 もちろん、本当にいざ何かが起きて、アメリカ軍は参戦してくれるの、とか根本的なところに問題はあります。だから、日本の核武装を容認するかとかそういう議論が大真面目に語られ始めているのもまた事実です。たださあ、戦争するぞと言うのはいいけど、戦争を本当にしちゃいけないと思うのですよ。用意、準備だけはしっかりしながらも、戦争だけは他所でやって欲しい。倉庫にちゃんと弾薬積んで、サイバー攻撃対策はカウンターも含めてしっかりできるよ、という準備と、やってきたらこういうことを我々はするぞ、という調略のデモンストレーションぐらいはしておかんと。

 安倍政権になって、そのあたりが仕切り直しになるのかなと思ったら、安倍政権が悪いわけでもないのに状況がどんどん悪くなって、水位がどんどこ上がってくるというのは実に気持ち悪いです。世界中が突発的な日中開戦を心配するのも当然だし、応戦しないわけにもいかないわけですからね。

 さて、どうしましょう。結構マジに。


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    やまもといちろう

    ブロガー・投資家・イレギュラーズアンドパートナーズ代表取締役。
    著書に「ネットビジネスの終わり (Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など多数。

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