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2013.01.26

アルジェリアの事件を契機に憲法改正とかNSC構想とか国防軍とか

 あれ、あの地域の内戦で起きた事件でしょ? 日本憲法改正したら日本人の命が守れたとか言ってる人たちは正気なのかね? もちろん日本人が殺されたのは日本人として悔しく思うし、残念でもある。何かしてやれなかったのかとも思う。また、憲法9条など改憲は賛成だ。それは個別の問題として率直に、そう思う。

 でも、アルジェリアの事件はそういう文脈とまったく関係ない話なんじゃないの。日本の自衛隊が国防軍という名前になっていれば、日本人はアルジェリアで死なずにすんだの? NSC作って海外情報収集っていったって、イナメナスの反政府勢力がカダフィ残党とつるんでっていう背後関係は分かるかもしれないけど襲撃の予測なんてできるかよ。かの地域の元宗主国で関係の深かったフランスの情報機関だってそんなテロ予見できなかったんだぞ。

 日本政府が日本国内の仕組みをどういじったって、海外に出ている日本人の生命や財産を守ることを直接できるわけではないんだ。努力する姿勢が大事だ、って言ってた偉い人がいたらしいけど、自衛隊が800億円の予算を増額するのに財務省から注文がついて四苦八苦している状態だろ。それに、例えば情報収集支援って一口に言うけど10億円の予算があったとして、アフリカ関連にどれだけ予算を回すんだ。先にサイバー攻撃対策だの尖閣諸島周辺の警戒強化でほぼ増額分の予算すべてが吹っ飛ぶ状態でしょうに。

 インテリジェンスが大事だって簡単に言うけれど、万が一、機能強化されたインテリジェンス部隊が日本人のいる在外施設に攻撃が行われ日本人に死者が出る可能性があったとして、それをどうやって防ぐんだね。中国で暴動があって日本資本の商業施設に放火されても中国大使呼びつけて抗議したりする程度の状態なんだぜ。現地に人を貼り付けて、って、外務省以外の情報収集部門の一人当たり予算って月額50万円から60万円程度ですよ。行って帰ってくるだけでマイナスなんですけど。新聞読む程度しかできない予算しか出ないで、どこがインテリジェンスなんです?

 もはや政府よりもマスコミが現地に送っていた特派員や、進出している日本企業や、権益買って商売している商社のほうが、現地のことはよほど詳しいんですよ。なぜなら、情報取り損ねると最悪死ぬから。で、現に今回死んでる。BPにいたっては、副社長死んでるし。気の毒すぎるけど、そういうリスクのあるのが当たり前の世界で、リスクを最小にしようと言い始めたら、「危ないところに行くな」としか言えなくなっちゃいますよ。

 よく「意見を出せ」とか言われるけど、採用されない前提で「現地にいる日本企業から情報を買うしかないんじゃないですか」としか言えない。安全情報は、まず政府がもってて、民間に教えてやる、という立場から入るから、訳が分からなくなるんですよ。外務省にはもちろん優秀な人はたくさんいるけど、いまアフリカ行ってる人って本当に優秀か? 現地の市井の人たちと話し合って、テロの情報取れるぐらい浸透してるんですかね。してないでしょ。

 なんかアラビアのロレンスみたいな、凄い諜報員が居て、とか考えるのはやめよう。そんな人、いないよ日本には。できて、協力者作りまでだ。そういう方向に予算を使うならまだ分かるけど、なんでこの状態で日本版NSCなんだよ。また都道府県会館を使おうとかいう話になったりするのか。

 何度も言うけど、アルジェリアの事件は痛ましかった。繰り返し起きて欲しくない。ただ、その事件を利用して、問題の再発を防ぐことには何の効果もないような政治的パフォーマンスをするのはやめて欲しい。日本国の憲法改正と日本人が海外でテロに遭う被害を減らすこととは関係がない。本当にアフリカでの権益を守り日本資本や日本人の生命を守りたいというのなら、アフリカ方面の調査予算を増やすのは必要だけど、他にやることが一杯あるでしょ。

 日本の国益から見て遠いアフリカでの事件を、日本政府が防げるわけがないんだよ。政府専用機飛ばすだけでも4日も議論してんだから。無理っすよ、無理。


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    やまもといちろう

    ブロガー・投資家・イレギュラーズアンドパートナーズ代表取締役。
    著書に「ネットビジネスの終わり (Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など多数。

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