« 夜間飛行の新ニュースサイト「プレタポルテ」が始動した件で | Main | mixi、30代以上の女性すべてを敵に回すまでの一部始終 »

2012.09.20

三橋貴明氏が何か煽ってる件で

 まあ、三橋氏も分かってて煽ってるんだろうと思うんだけれども、これ見よがしに清水亮がタンブラーで転載してたりして、まあ賛否はともかくキャッチーな議論ではあるし、真に受ける馬鹿がいっぱい出ると嫌だなと感じまして、一応書いておきます。

安全保障と経済
http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-11358563671.html
http://shi3z.tumblr.com/post/31912194119

■そもそも論

 「領土問題で経済カードを出してくる」というのは、加熱の末の軍事衝突の抑止力として使うものであって、領土問題の解決のために行うものではありません。領土問題で相手を譲歩させて白黒つけるものではなく、棚上げするためのカードです。

 貿易に携わる日本人が少ないのは仕方がありませんが、その知識がない人たちを煽るような形で日中貿易を軽視するような言動を行うのは、中国で働き、中国人と共に暮らしている日本人の安全をも脅かしかねないので、本当にやめて欲しいと思います。

■貿易額云々について

 経済も立派な国益です。単純な数値だけ見比べて、この相手国との貿易額は少ないから経済カードを使われても良い、良くない、という議論はそもそも成立しません。

 ましてや、中国との貿易関係は「ワンオブゼム」どころか「グレーターワン」です。フローにおいてはもちろんトップです。
 ストックについてはアメリカに次ぐ位置です。対中投資累積額を見てください。面倒くさかったら見なくてもいいけど。

http://www.jftc.or.jp/research/pdf/ForeignTrade2012/chapter2.pdf
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/5050.html

 三橋氏の議論で言うなら、中国経済との貿易の多寡は、日本経済のGDPの3%だから関係を切っても良いという内容に読めますが、その論法で言えば中国よりも貿易総額が低いアメリカとの貿易や、カナダや、オーストラリアや、ベルギーやロシアも切っていいって話になりますね。もともと日本の外需依存は15%ですんで、国別の棒グラフにしたら小さく見えるに決まってるじゃないですか。貿易額が小さいから、サウジアラビア切りますか? そんな話にはならんですよね。原油が割高になるだけですよ。

 もちろん、中国が経済カードを切ってきたら、中国に投資を行ってきた企業活動が一気に停滞して、日本のGDPに累乗的な損害が出るのは分かりますよね。切られたときの損害が報じられないのは、政府が隠しているのではなく、損害がどのくらいになるのか大きすぎて分からないから試算の幅がありすぎて発表できないだけです。

 貿易の現状についてはこの辺を読んでね。

http://www.jftc.or.jp/research/genjou2011.html

 地域別も書いておきますが、簡単にいえば経済カードを切られるということは、「累積して中国に投資してきた権益を失う」だけでなくて、「将来にわたってその経済活動で得られるはずであった利益を喪失する」ことであって、文字通り、日本の国益を大きく損ねる原因になります。

http://www.jftc.or.jp/research/pdf/ForeignTrade2012/chapter2.pdf

 三橋氏が敬愛している(はずの)安倍さん、麻生さん、その政権で外交の文字通り責任者であった谷内正太郎さんも、外交の骨子において安全保障の経済分野についてはみだりな冒険主義が経済に悪影響お及ぼすことで国益を損ねないようにする水平レベルの発想も重視しておられます。

http://www.inada-tomomi.com/pdf/dento-souzou220916.pdf

 準備なしに、日中関係の貿易がきれたら、経済セクターが死ぬんだってことぐらいは理解してください。

■だが、「経済カードを切られるのが嫌だから領土問題を譲歩しろ」とはならない

 日本政府としては、中国大陸に進出してその経済成長力を自国経済に取り込み、何とか経済成長を維持している状態ですので、政治レベルでの混乱が理由でうっかり経済措置をとられるのは問題です。

 しかしながら、経済問題に配慮すべきだから、国家の安全保障の根幹を揺るがすような領土問題を譲歩しろとは日本政府も自民党本部の人たちも誰も主張していないでしょう。安倍さんや麻生さんだってそうは言ってないはずですよ。

 中国もWTOに加盟しており、安易な経済カードをきるのはむつかしい状態に持っていきつつ、反日デモや暴動等で毀損した日本の施設については政府レベルで補償を求める活動を後押しするのが知識人の役割であって、先方が提示してくるであろう経済問題と領土問題のカップリングに豪快に乗っかって「中国経済が切られても問題ないので突っぱねるべき」とか主張してどうすんだと思うんですよね。

 領土問題は可能な限りバイで、貿易問題は権益が絡むところも含めて国際的な枠組みの中で解決を促し、損害を蒙った部分は政府レベルで粛々と補償を請求、暴力はもちろん税関や課税などで嫌がらせを受ける部分についてはYoutubeやTwitterなどで配信を行うなどの発進力を強化して非道部分のアピールを中国国内や海外向けに行うのが一番効果的だろうよ、と。

■むしろ、極論を書きすぎて日中緊張を煽り安倍さんの足を引っ張っているようにしか見えない

 この辺とか。

Mitsukashi_120920

 まあ… 三橋氏は相応に賢い人なので、たぶん分かってて、敢えて極論を言ってるんだろうとは思うんですけど。

 安倍さん支援はいいんだが、極論の〆に「安倍さんを応援しよう」とか、安倍さんがあたかも極論を支持しているかのような書き方は良くないと感じるんですよねえ。中国が自然と不況に突入して社会不安が大きくなって経済問題になるんだということであれば、それは国益を担う貿易者が主たる判断で投資額を絞ったりすることはあると思うけど、まるで野党第一党の総裁候補者が中国経済を軽視している論調に見えるような真似は、安倍さんのためにもやめたほうがいいんじゃないかと。

 あるいは、極論を書かないと読み手が集まらないんだ、そういう商売なんだって割り切っているんだったら、それはそれでしょうがないかもしれませんけれども… 自戒も兼ねて、今回は反日デモと同じレベルで煽るような表現は慎むべきだと思うのです。


« 夜間飛行の新ニュースサイト「プレタポルテ」が始動した件で | Main | mixi、30代以上の女性すべてを敵に回すまでの一部始終 »

メルマガ

  • メルマガ広告
    やまもといちろうによる産業裏事情、時事解説メルマガの決定版!ご登録はこちら→→「人間迷路」
    夜間飛行
    BLOGOS メルマガ

漆黒と灯火バナー

  • 漆黒と灯火バナー
    真っ暗な未来を見据えて一歩を踏み出そうとする人たちが集まり、複数の眼で先を見通すための灯火を点し、未来を拓いていくためのサロン、経営情報グループ「漆黒と灯火」。モデレーターは山本一郎。詳細はこちら→→「漆黒と灯火」

プロフィール

  • Profile

    やまもといちろう

    ブロガー・投資家・イレギュラーズアンドパートナーズ代表取締役。
    著書に「ネットビジネスの終わり (Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など多数。

My Photo
無料ブログはココログ