尖閣諸島有事は、結局「日米同盟がないと日本の安全保障は成立しない」ことを示した
そのうち出ると思いますが、中国政府がロシアとの軍事に関する非公式接触を行い、尖閣諸島を巡る問題で日中間が武力衝突になった場合にどのような趨勢となるかの意見を打診したところ、結果としてロシア軍から「序盤から日本側が優勢、その後、米軍が加勢して中国軍は海軍、支援陸軍共二週間以内に壊滅的な打撃を蒙る」と回答。
当然、ロシアも尖閣諸島の領有に関する問題については二国間による解決が必要という立場であって、中立なわけですけれども、日本の領土問題を巡る紛争が現実に武力攻撃の応酬となった場合、最終的に戦闘の結果を決定付けるのは米軍の参戦であるということであって、逆に言えば、日本は本格的な小競り合いについて完全な勝利を収めることはできないということでもあります。
日本の安全保障や今後の外交を考える上で、結構重要な論点を提示してくれているのが8月15日に発表された第三次アーミテージ=ナイ報告書でありまして、我が国がTier-1 Country、すなわち一流国であり続けるならばアメリカは日米同盟を重視するという、結構デリケートな内容になっております。
アーミテージ報告書を読み解く――日本は二等国でいいの?
http://yakan-hiko.com/w/2012/09/24/%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%83%9F%E3%83%86%E3%83%BC%E3%82%B8%E5%A0%B1%E5%91%8A%E6%9B%B8%E3%82%92%E8%AA%AD%E3%81%BF%E8%A7%A3%E3%81%8F/
領土問題だけが近隣諸国との紛争というわけではないのですが、少なくとも対ロシア、対中国・台湾、対韓国と、領土問題を抱える日本が信頼するべき国は結局のところアメリカしかないのも事実で、思いやり予算や沖縄の立場の尊重といった問題は抱えてはいます。ただ、我が国の安全保障を考える上で、アメリカとの同盟抜きには考えられなくなっているのもまた事実。ぶっちゃけ日本が尊重されているのは「曲がりなりにもアジアの一流国であり、その一流国であるがゆえに、アメリカと軍事同盟を結べていて、それが実効性があるから」でもあります。
日米中は正三角形の関係とか言っていた小沢一郎さんが政権与党である民主党から叩き出されて影響力を失っている状態で領土問題が起きたことはまさに不幸中の幸いで、中国の現状の政治を考えるに対日交渉での弱腰が失脚の大きな原因となる昨今、中国共産党をアメリカと等距離の関係に置くことなど不可能でありましょう。真の意味で、尖閣諸島問題が発生したときの首相が野田さんであり、党内に小沢さんがいなくて良かったと思う次第であります。
今後は、中国からすれば日米同盟こそがアジアで中国が国益を拡大するための障害であることが良く分かり、また同時に太平洋や南シナ海方面へ権益を伸ばしていくためにはアメリカの介入をどうにかして減殺させる必要があるということを改めて理解したことでしょう。そして、アメリカをアジアに引き寄せている勢力とは文字通り日本とフィリピンであり、この両国に対してアメリカへの信認を如何に減らすかを真剣に考えてくると思います。
また、アメリカにとってアジアでの権益を考える上で、日本の国力が高いことが前提となることは言うまでもありません。力の弱まった日本に対して、アメリカが庇護をするメリットがなければ同盟は維持できないのは当然のことです。同様に、アメリカがアジアから手を引き、台湾から南シナ海、マラッカ海峡を中国に押さえられるようなことがあれば、それはもはや日本が必要な原油を運ぶシーレーンは中国に握られて、本当の意味でアジアの二等国へと転落する危機となるのです。
アーミテージ=ナイ報告書は極論も多く、金科玉条とするにはなお読みこなし、日本側の意見や解釈をしっかり持つための議論をする必要はあるとは思いますが、一方で当たり前のことを書いています。国際的な責任を果たさない、地域のミドルパワーでいいやという日本のあり方は、むしろ領土問題で韓国や中国からナメられて一層嫌がらせの対象となる可能性を示します。そして、日本には相手に譲れるだけの経済的余力はもうないのです。
日本が、生き残るために必要なものは強力な友邦国との実効性のある同盟であって、それは、中国でもロシアでもなくアメリカです。日本の主権である領土は寸土たりとも譲ってはならない、という前提で考えるならば、冷戦における反共産主義の盾となったのと同様に、新しい時代での反中国共産党の盾として、アジアの民主主義を守らなければならないのでしょう。
そう考えると、いま日本の抱えている国内問題も外交課題もよくよく理解できるのではないかと思います。