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2012.08.31

輝ける高木浩光氏とスーパー武雄市長・樋渡啓祐氏の戦い

 武雄市長の樋渡せんせのFACEBOOKが大炎上していたというので見物に逝ったわけですが、FACEBOOKのコメントとしては結構画期的な数の罵倒&応援コメントが交錯しており、興味深いのです。

樋渡 啓祐
https://www.facebook.com/keisuke.hiwatashi.9/posts/482159161803955

 元はと言えば、樋渡せんせと高木せんせのネットセキュリティを巡る論争からスタートしていたはずが、途中で樋渡せんせが個人の住所録をヤフーブリーフケースで公開してたり、支援者の方々の顔写真を含む個人的な画像群を写真共有サービスでこれまた公開してたり、微笑ましい失敗をしていたことで延焼したあたりがネットユーザーの心を鷲掴みにしたんですよねえ。

 あらすじを知りたい方は、こちらの戦場跡をご覧いただきたいところですが、関心深めるべきはこの抗争、まだ現在進行形で戦火が広がり続けているということです。

「国会議員に報告するぞ!」武雄市長がツイッターで一般人にブチギレ
http://matome.naver.jp/odai/2133652740729631701
図書館戦争くるで! 武雄市長がセキュリテイ研究者に圧力、市図書館TSUTAYA委任問題で。
http://alfalfalfa.com/archives/5494161.html

 もちろん、樋渡せんせはその件では本当に単純なミスですからウェブ上で平謝りをしているわけですが、その謝り一方で、そういえば高木! このやろう! 的な思い返しと共に「ひろみつ先生 しっかりしてください」なるエントリーを堂々掲載、もう銅鑼が鳴り響いて者ども出あえ出あえの風情へと発展していったのであります。

ひろみつ先生 しっかりしてください
http://hiwa1118.exblog.jp/16698555/

 興味深いのは、高木せんせが樋渡せんせに対して懸念を示した内容についての技術的反論はまったくと言っていいほど行わず、高木せんせの勤務先である独立行政法人産業総合研究所方面への圧力および高木せんせへの個人的な攻撃に終始している点です。ある意味、ネットでの論争においては芸術の高みへと読み手を誘う「うるせー馬鹿」とでも言わんばかりの光景が広がっており、強い興味をそそるのです。非常に魅力的な人材であることを自ら証明してくれた形になっております、樋渡せんせは。

 もちろん微妙に高度の低い方向からレーダーを掻い潜っての攻撃をもらった高木せんせもビビッドに反応。

日本フェイスブック学会総会1118聖誕祭
http://takagi-hiromitsu.jp/diary/20120826.html#p01

 「武雄市個人情報保護条例はやはり欠陥だった」という高木せんせの物言いもちょっと性悪説に過ぎる部分はあるかもしれませんが、百歩譲っても武雄市の個人情報保護条例は改善の余地はあることは事実でしょう。別にセキュリティの専門家でなくとも、ある程度はこの方面で法令を調べたことのある人でしたら、CCCとの協同に対してもう少し武雄市として利用者の保護のために踏み込むべきところは残されているように思います。樋渡せんせがどんな専門家と協議して本件事業を推進したのかは知りません、ところが、高木せんせのこの懸念を、樋渡せんせは宣戦布告と読むわけですね。

 いいですねえ、この沸点の低さ。読み進めるごとにディスプレイの前で笑みがこぼれてしまいます。
 ただ、問題点についてはCCCと武雄市で調整すれば相応に解決できる問題であっただけに、なぜ樋渡せんせが突っ張ったのか、依然謎です。まあ、問題が起きてからお詫びがてら修正すればいいのかなという話なのかもしれませんが、上記個人情報流出騒ぎは単なる個人のデータをウェブ上のサービス公開状態で置いていたという話で「樋渡さんもうっかりさんだなあHAHAHA」で済むかもしれませんが、ほかの自治体関連の事業などで民間との連携を進めるにあたって、国民の個人情報取り扱いで頭を悩ませている政策サイドや総研系コンサルタントからするとちょっと笑い事ではすみません。自治体財政が厳しくなり、今後は連鎖的な自治体の破綻も視野に入ってくる中で、予算を削減しながら民間の活力を使って市民へのサービスの質をどう維持していくかが悩みどころだからです。

武雄市図書館構想問題点その2
http://www.slideshare.net/tarikihongandou/ss-12924665

 武雄市も少ないスタッフを遣り繰りしながら、ブランド力のある企業を誘致しつつサービスを拡げていき、自治体の自助努力による環境改善に努力しているのは分かりますが、まさか高木砲一発でなんか不思議とセクシーな馬脚があらわになってしまうとは思いませんでした。樋渡せんせも霞ヶ関では毀誉褒貶を受けたり、地方自治体改革で名乗りを上げて賞賛嫉妬混じった状態なのはよく理解できますが、とても誠実な人であることは間違いないので、なぜウェブに出た瞬間に攻撃力がマキシマムになってしまうのかと思うと、ウェブの闇というのは深淵すぎてかっこいいぜと感じるわけですねえ。

 本件の盛り上がりにあたっては、樋渡せんせを文字通り心配している人が増えているようでもありまして、まあ要するに高木せんせの言ってることのほうが一理あるからなんですが、もし本当に樋渡せんせがこの問題でセキュリティの専門家に聞いて「良し」とされたのであれば、その専門家をとっとと切ったほうがいいと思います。

 ところで、一応mala氏が遠くから火炎瓶を投げ込んでいたので、とりあえず振り返ってみます。

高木浩光さんへ、しっかりしてください
http://d.hatena.ne.jp/mala/20120830/1346309790

 なんかmala氏は過去に高木せんせと論争して煽られたところから、何か別のアングルがあるようにも思えるわけですが、高木せんせが解釈の点で捻じ曲げたというところだけピックアップしているあたりに、本論とは違うところで熱量の高さを感じるわけです。それであれば、過去にも高木せんせが語ったまともな点も並べて、賛否両論で示してもらわないと何とも言いづらいわけですねえ。私怨乙という話ではないでしょうが、やはり一方的な論じ方すぎて、また、樋渡せんせとの論争が相応に盛り上がっているところでこの書き方をするというのは、何らかの意図や配慮を感じずにはいられないという点で、もったいないと言うべきでしょうか。武器の性能は、戦争中に試すのではなく、平時に確認しておいていただきたいものであります。

 なお、最後に「終わりに、面白おかしくネットバトル的な茶化し方をするのはやめてください。本当に深刻な問題だと考えています」とか書いてますが、じゃあその釣り同然の樋渡記事のタイトルもじりは何だと言うことで、このmala氏のエントリーも壮大な釣り的なポジショントークなんじゃないだろうか、と思ったことだけは述べておきたいと思います。

 mixiは武雄市に本社を速やかに移して破綻していただきたいと願っております。


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    やまもといちろう

    ブロガー・投資家・イレギュラーズアンドパートナーズ代表取締役。
    著書に「ネットビジネスの終わり (Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など多数。

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