【書評】『ニートの歩き方』(pha・著)
ニートではない私からしますと、1章から3章はどうでもよくて、ニートの生態やら生き方実践講座みたいになってて、そこまでニートを突き詰めるぐらいなら働いたほうがマシと思ってしまう私からしますと読んでいて非常に辛いものがあります。価値観が違いすぎて。前半は、ほとんど「自分が働かないための口実リスト」と「人生の諦め方」と「ネットで小銭で食い繋ぐ方法」の集大成な感じです。どうせいっちゅうねん。
で、一般的なところで未来志向な第4章だけ読んでおけば充分なんじゃないかなと思います、私がpha氏に興味を持つのは彼の向上心やセルフコントロールの部分なので。
冒頭で、よくネットで目にする「漁師と億万長者」の話があるけれども、億万長者になるためには向上心が必要で、でも著者は億万長者になることにモチベーションが湧かないという。一方で、第4章では「やっぱりある種の『向上心』や『目標』が人間が生きるうえでは必要なのかもしれない」って論じられてて、正直なところ、お・ま・えって思うわけですね。
どうも著者の場合、ニートであることに拘りがあるように感じられるのと、彼の人生の中で意欲的な生き方に対して背中を押してくれる人の不在が深刻だったのだろうという点で、閉塞感と葛藤の社会観を読後感としては抱かずにはいられません。なんでここまで書ける男がニートなんだよという話であり、能力はあって成果を出す才覚は揃って持っていながら、肝心の性格が自省的すぎて。エンジンとか車のスペックは良くてガソリンも入ってるのに運転手が寝てて車が発進しない状態と言うか。
なので、話としては極端に飛ぶけど、本田透さんの『電波男』みたいな感じで、ネットで抑圧されている少数民族であるニートやオタクの抱える現実的な悩みを正直に吐露し最大公約数のところでバランスよくまとめることで、同じ感覚を持っている人たちに訴求し共感を呼ぶ的なアプローチなのだろうと思うのです。
前向きに仕事や人生に取り組もうとしている人にとっては呪詛の本でもあり、心に弱さを抱えている人からすると鳴門の渦巻きみたいに船ごと人生自沈できる感じの凄い本でありました。
お奨めはしないけど、面白い。そんな感じ。
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