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2012.06.26

「お年寄りを見殺そう」という第三極の政治勢力

 もう社会保障制度がもたない、慢性的な歳入不足で、生産性がない老人を生産性のある若者の負担で生かしていく社会は持続しないことはみんなもう分かっているよね。

 歳入不足というのは字面だけの問題じゃなくて、海外でいっぱい稼いで、国内のサービス業を回し、そのサービス業の一定の割合が老人介護という競争力もへったくれもない分野に費消されているわけ。そりゃ、だんだん貿易黒字も目減りして、金融収支一本で回していくことになる。

 無理でんがな。

 でも老人を馬鹿にするな。もっと活用できるだろ。

 そう思っていた時代もありました。でも老人活用して世界と戦える産業が築ける? 世界を相手に稼げる? 無理ですよ。そんなスーパーな爺はむしろ後進を育てるのに苦労することになるだろうし。ああ、別に宮崎駿さんをDISってるわけじゃないよ。

 老後の時間をどう有効に使ってもらうか。日本人として、生まれてきて良かったと思える晩年を、どう日本社会として築いていくか。それは大事な議論だと思います。でもねえ、もう余裕がないんだよ。

 これから世界の各地で経済が破綻するの。日本の国債消化余力を考えると余命3年半から6年、とかいってる間もなく、海外から勝手に先にコケていくの。そうなると、日本のお金の循環を支えてきた経常収支は慢性的に赤くなるんだ。どう考えたって、連鎖します。

 でも、意外と世界各国の協調がうまくいって、金融危機が拡大しないかも知れない。どんなシナリオでもありうるけど、日本人につきつけられた現実は、生産性の低い老人をどう誇りを保ってもらったままでいい人生だったと思って逝ってもらえるか。

 余裕があるなら、みんなお年よりは大事にしたい。日本人である以上、日本人の死に様には美があってほしいと願います。だが現実はこんな夢のような社会保障は続かない。冒頭にも書いたとおり、そんなことは誰でも分かっているんです。

 いま問題になっているのは世代間格差という話ですらなく、激減する日本人が、いまの日本の豊かさ各方面すべてを維持できなくなるから、何を捨て、どれを次の時代の日本の「売り」にしていくのか、ということです。

 そういうことを保井俊之せんせの本を読みながら思っておりましたが、うーん、もうこれ以上政治に期待するのは無理なんじゃないか。結局、生産性を回復するのに傾斜配分を行わざるを得ず、おこぼれに預かれない人がどうしても出る。そういう世界観の中で、私らどう生きていくのかは、個人や家庭で話し合うほかないんだろうなと。

「日本」の売り方 協創力が市場を制す (角川oneテーマ) [新書]

保険金不払い問題と日本の保険行政: 指向転換はなぜ起こったのか [単行本]

 実は、システムズアプローチなるものは私もまだ良く分かってなかったりします。うーん、勉強だな勉強。


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    やまもといちろう

    ブロガー・投資家・イレギュラーズアンドパートナーズ代表取締役。
    著書に「ネットビジネスの終わり (Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など多数。

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