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2012.05.04

市場での価格形成の結果に、フェアは存在しない

 どうも不思議な議論が来たので補遺。

グローバル化した市場の問題を無視したフェアトレード批判を始めると、大変なことになるかもしれない(メモ)
http://d.hatena.ne.jp/font-da/20120503/1336027404

 コーヒー相場の総量などグローバル化とはまったく関係なく、価格形成のメカニズムで先物相場は原則的に供給者のリスクをヘッジする目的で作られているものであります。

 スターバックスのフェアトレード豆も含めて、擬似フェアトレードの理屈は理解できるけれど、そんなものはCSR目的のある種の綺麗事であって、この文中である「農家が暮らしていけるか」とかの問題は先物市場の乱高下とはまったく別物ですね。

 たぶん、まったくこの人が理解していないのは、先物市場は単なる博打かなにかだと思っていそうだ、という点です。原則として、生産者の取引価格が現物相場しかなかったら、それこそ価格が暴落した際の価格調整は硬直化するでしょう。先物市場があるからこそ、何年限か何ヶ月限か先の相場で収益見通しを立てることができ、ゴーイングコンサーンが可能な価格で事前に売価を確定させることができる。

 また、先物相場にはセットの保険、オプションのことも理解していないようです。ぶっちゃけ、市場がグローバル化しているかどうかと、先物相場が農家の生活の安定性を脅かしているかはまったくの別問題です。

 フェアトレードジャパンが書いてあることを論理補強に使っていますが、先物をディールする私たちからすれば噴飯ものです。これね、フェアトレードといえば聴こえはいいけど、要するに生産者組合による談合ですよ。価格統制。もちろん、最低販売価格を維持したいという気持ちは分かる。ただ、現実と関係者の願いは別物で、市場にモノが出ているのを、投資家が売買していることと全然関係がありません。コーヒーに限らず、米価統制だろうがOPECだろうが、もっと広く見て為替そのものも、生産者や供給者が統制が出来る範囲には限りがあり、統制を行って人為的に価格を操作したとしても、あとでかならず市場は復讐をするんです。

 タンザニアやエチオピアの生産量が少ない割にコモディティ化している理由は、単純に品質です。タンザニアやエチオピアのコーヒーでは、圧倒的な生産量を誇るブラジル他の量産地域と差別化が図れないので、その他量産品と変わらないということで、産品市場がマージされているだけです。彼らの産出量が少なく、農家の規模が小さいからだけが理由ではありません。

 原油や石炭などエネルギーも同様、コモン市場は一体化されていて、集中購買の対象となります。ただそれだけのことです。ブラジル産他とはまったく味も性能も嗜好も違う、特別なタンザニア産のコーヒーがあるのであれば、現物市場で統合されることなく、特別の買取先が市場価格と関係なく買い付けに来ることでしょう。

 ただし、そうなると先物市場の恩恵からは切り離され、個別の少量の相対による市場ができるだけのことです。そうすると、需要地からさらなる暴力的な価格要請に見舞われる。結果として、より過酷な市場価格の乱高下に見舞われることになり、安定した生産計画どころではなくなることでしょう。もちろん買い付ける側からすれば、そんなものは知ったことでは在りません。安く買うのが目的ですから。

 個人の感情でいえば、小規模農家が価格に翻弄されるのは悲惨だし、どうにかしたいと思いますが、現実ではそんなものはまったく関係なく取り扱われます。国際市場でのフェアトレードをどうこう言う前に、我が国の食肉市場や、近郊野菜市場や、養鶏蚕業鶏卵牧畜など、国際競争力はないけど高品質化を図り、鮮度や味覚などに工程改善を加えた産業について、少しは考えてください。我が国の少量産品のほうが、よっぽどフェアトレードが求められ、需給ギャップの調整に関係者が知恵を絞っています。

 タンザニアやエチオピアの農家を守り、フェアトレードを求めることが、結果としてこれらの産業の保護貿易化を進めて、結果として合理化投資をせずいつまでも零細であり続けることを支援することにもなりかねません。

 市場の価格に、フェア、というような、感覚上の白黒は存在しないんですよ。せいぜい、誰かにとってフェアな感じがするかどうかってだけで、それすらも具体的な意味は持たない。儲かったか、損したか、ただそれだけ。
 なお、私は市場原理主義者じゃありませんよ。フェアトレードをしたい人がいるのであれば、すればいいんじゃないですか、私はしませんけれども、というだけの話です。ただ、上記のように先物市場の起こりや機能も理解できていない人がフェアトレードを語る資格はないんじゃないか、とは思いましたけどね。

 先月、先物市場で頑張りすぎて2億円ぐらい損しました。


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    やまもといちろう

    ブロガー・投資家・イレギュラーズアンドパートナーズ代表取締役。
    著書に「ネットビジネスの終わり (Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など多数。

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