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2012.05.01

トップクリエイターが挫折するとき(雑感)

 4Gamer向きかなあとおもったけど、ブログで。

 いや、単に雑感なんですが。

 私のような伏兵とか傭兵の仕事をしておりますと、どうしても人を貸したり敗戦処理を任されるケースがとても多く、ある意味でうまくいかなかったときに偉い人に責任が及ばないよう潔く斬られるのも仕事の一つだったりするわけなんですけれども、そういう動き方をするのも「今回はうまくいかなかったけど、そこを修正すれば次があるから、一度案件をターミネートして損害を被ってもやむなし」という計算が立つからであります。

 ところが、クリエーターが立っていたりすると、まあだいたいにおいて「そいつが悪い」という話になるわけですね。で、クリエーターというのは自負があって、これが面白い、となると面白くなるまで頑張って作るからクリエーターでありまして、道中「ヤバイ。これは面白くならないぞ」と作ってる側が思っていたり、数字が取れないと分かってても関係者がクリエーターの首に鈴をつける要員探しになったりするわけです。

 まあ、この辺は男の嫉妬もあるわけなんですけれども、大きい仕事を任されるクリエーターというのは、自分の才覚やセンスに対する絶対の自信もさることながら、プロジェクトを指導させるために必要な膨大なエネルギーをぶち込むだけの大風呂敷なプレゼンとか、やりたいことを実現させられるためのスタッフィングとか、そういうもんが必要になるじゃないですか。

 でもねえ、広がった風呂敷で、煽られた期待感へ向けて、風呂敷を延々とたたむ作業が必要になるわけですね。

 クリエーターというのは、成功するうちに、だんだんと掛け金が上がっていきます。最初は小さなゲーム制作で当てました、数億儲かった、というレベルから、自己や組織が肥大化していって、もう凄い勢いでクロスメディアな感じの事業になって、このビジネスは俺が背負いますぐらいの勢いになっていく。ある程度名前が売れると、多少の失敗でも周辺が囃し立ててくれたり、茶坊主が増えていって、この前敗戦処理やって頭下げたばっかじゃんって人が、舌も乾かぬうちに競合会社逝ってプレゼン仕立てたりするわけですよ、臆面もなく。でも、そういう神経だから、周りの反対を押し切って、俺の面白いと感じるものを作る、とフォーカスしていってモノを作り上げるのですから、それはそれで偉いな、と思うところでもあります。

 でもねえ、やっぱりどこかで限界はやってくるわけなんですよ。規模なのか、時代の流れなのかは人によって違うと思いますけれども、俗に言う「枯れる」瞬間というのは、関係していればはっきりと感じ取れるぐらい、分かる。もうね、「俺さ、こういうのが面白いと思うんだよ」とクソのようなアイデアを紙に書いて持ってきたりとか、そうすると「それ、二年前に似たようなコンテンツが出ています…」と指摘するべきなのかどうか、悩んでしまうんですよねえ。

 一回、膨らんだ自我のようなものがパーンと弾けて、通用しない自分を認識したとき、復活できるかどうかは周辺によってかなり異なります。実はねえ、トップを張ってるクリエーターって、だいたい方向性しか決めないんで、細かな部分を詰められ、完成品まで持っていける優秀な側近や外注、傭兵が支えているものなんですよ。こちらはこちらで、そういう人が鼻高々でプレゼンしてくれるから、余分な予算が転がり込んできて利益になったり作り込みに手間ヒマがかけられるようになったりする。もうあかんなあ、と言うところから、でも一蓮托生だから私たちも彼を支えよう、と思えるかどうか、その辺が、器の限界まで頑張ってきて枯れたクリエイターが残れるかどうかの瀬戸際だと思います。

 先日、大御所と和解するにあたって「結局、私らを干した間、何もできなかったじゃないですか」というようなお話をしました。もちろん、言いたいことはまた制作しましょう、って話じゃなくて、もう私たちはあなたの名前で仕事を取る必要がなくなったので、偽名とか使わず堂々と制作実績出すようにしますよ、という宣言だったわけなんですが。傭兵だって、やっぱり稼ぎが良いってだけじゃなくて、城とまではいかなくても砦でいいから旗を立てるのは関心があるわけでねえ。和解ができたのは、お互いが折り合ったのではなく、自信を失った大御所の気折れだったんだろうと思います。

 別に私たちは主役になろうと頑張っているわけではないけれど、ソーシャルゲーム業界もそれ以外のコンテンツ系も、いわゆる主客交代はさまざま発生していくだろうと思います。やれることはたくさんありますし、ただ足元がしっかりしていないといけないのは、家庭も仕事も一緒だと考えておりますので。


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    やまもといちろう

    ブロガー・投資家・イレギュラーズアンドパートナーズ代表取締役。
    著書に「ネットビジネスの終わり (Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など多数。

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