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2012.03.09

「女性は若い時に結婚を」発言→「女性蔑視、人権侵害」→謝罪、撤回という風潮

 こういう話を読むと、胸が痛むんだわ。

「少子化対策…女性は若い時に結婚を。40歳過ぎると男性と距離あく」発言に、「女性蔑視!人権侵害!」批判→那覇市議、謝罪
http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1700858.html

 34歳で結婚して、35歳で童貞を捨てた私としては、いま思い返すに結婚なんて出来ないと思っていたんだ。ましてや、自分に子供ができるなんてことも、思いもよらなかった。だから、金ばかりあって、しかもケチなもんだから使い方を知らない。せめて、有効に使ってもらおうと、同じく結婚できない人たちと一緒に児童養護施設に少しばかりの寄付をしていたわけだね。

 でもだな、施設に来ている子供たちというのは、親から望まれない存在だったり、愛し方が分からない親を持ってしまったり、さまざまないきさつがあって、そして何らかの助けがあって施設に住んでる。帰る家があるのかどうかもはっきりしない。詳しくは個別の話は聴かないけれど、やっぱり聖誕祭や施設の運動会に呼ばれて話をすると、それぞれの親を思う気持ちがあって、それでいて受け入れて貰えない実情があって、それでも親と一緒に暮らしていきたいという夢があってみたり、亡くなった両親に報いたいという希望があったりしてる。私みたいなクソのような人間が出す小汚い金で、少しでも歩きやすい靴を新調したり、学友と語らうお茶代やカラオケ代の一部にでもなって青春の記憶を作ってくれたらと思った。

 結構そういう気持ちでポケットマネーを出していた独身者や離婚者ってのはいたので、勝手にそういう思い込みをして感動したりしてたもんだが、時間がたって、私にもどういう神のご意志か幸いにして愛する人に恵まれて結婚できることになった。子供が欲しかったのだが、まあ、私のゴミのような人格の遺伝子が残るのもどうかとは思うのだが、やはり自然の摂理として子孫は残すべきだと思うし、稼ぎはもちろん良いので世話になった日本社会の少子化を防ぐためにも、また思い描くような暖かい家庭を作るためにも、そして何より愛する家内との子供が欲しいと願って、頑張ろうと思った。私が良い父であるかどうか、良い夫であるかどうかは別にして、それを目指すのは別にいけないことじゃあるまい。

 独身のころに比べて、自由は随分減った。ゲームもしなくなり、子供が生まれると大好きなスワローズを観戦しに神宮へ逝く機会すら激減した。プライベートに充当する時間が仕事の時間を圧迫し、結果として部下に仕事を任せて一線から退く以外に方法はなくなった。でも、生まれてこの方、ライフワークバランスという言葉からもっとも遠いところで生活していた自分が、わずか数年の期間を経て、根底から作り変えられていくのを実感する。

 自分の趣味や仕事がしぼんでいく感覚は、この辺を読んでくれ。もうまったく同じ気持ちだ。自分の人生が、時間が、自分のものだけでなくなった、そのことに気づいた瞬間の話。

[鉄道マニアの話]オタクが結婚生活で初めて気づいた趣味の「無駄」と「効率性」の話
http://d.hatena.ne.jp/katamachi/20110828/p1

 そうなると、いままで放置してきた自分の大事なことを知る。たとえば、将来計画。極論を言えば、孤独にさえ耐えられるのならば、金さえあるのならば、老後について計画などなくとも構わないと思っていた。その場その場が最適であり、快適な人生であれば、遠大な夢を自分自身に描かないのであれば、自分がどうなろうがあんまり気にならない。誇りも業績も名声も、人生の終わりを迎えたときに葬式で知人に語られる程度のもので、たいした価値などない。

 結婚をして、子供を儲けるということは、自分自身の人生とは違う未来を背負うことをも意味する。私が満腹だからといって、家内が食べなくていいとは限らない。私がいまの時代を生きてこのような価値観を持っているからといって、息子が生きる未来が同じ価値観とは言い切れない。当たり前のことだけど、その当たり前のことを考える苦労というのは、一人で生きて、自分だけで判断してきた世界とはかなり違う。

 やはり、一家の主になった以上は、何があっても家族を守らなければならないのである。それと同様に、いままで親しんできた、個として生きるという価値観を知りつつも捨てなければならない。もし、私が結婚前であれば、誰かの人生を預かるという責任を持っていなければ、その重みを知らなかったならば、間違いなく「女性は若い時に結婚を」という発言をした市議を批判していただろう。女性にも考えがあり、生きるための価値を考えており、政治家が若いころに結婚を強いるというのは望ましくないのではないかと、言 っ て し ま っ た だろう。

 ただ、いまは、価値観の押し付けではなしに、女性であれ男性であれ、いつか背負うかもしれない責任のために、もし可能であるならば結婚を早くし、長く愛し合える関係を築くよう努力するべきだとも思う。結構、本気で思う。私自身は正直どうなっても構わないのだが、家内や息子たちの将来を脅かすような話があるならば、文字通り全力で戦い抜いても良いとさえ思っている。大きくは安全保障の話もあるかもしれないし、小さくは父親として、夫として、ダメ人間なりに本気で向き合って、守り抜かねばならないのだろうと。それこそ、どんなことがあっても、私が死ぬまで。

 だめである私よりも、はるかに立派な連中が、高い志を持ったまま独身であるのは、大きなお世話ながらも勿体無いことだと思っている。インドや東南アジアに進出しようとか言ってる前に、あるいは日本の安全保障を語り合ってる前に、彼らは結婚し、可能であれば子供を作り、家庭を守るという責務をきちんと担って人生の最後までまっとうするという努力を果たすほうがいいと本気で考えるようになった。

 「遺伝子のスイッチが入る」というのは、こういうことなのかもしれない。あるいは、人生の節目を迎えて、人間がある種のデビュー状態になるのも分からんでもない。何より、愛するべき存在というのは人の見る角度を変えたり、他の価値観を考えたりできるようにしてくれるのだなあと思った。

 だからこそ、政治家に限らずこの日本を良くしようと思う人は、人を愛する気持ちを抱きつつ、厳しい事実を見据えて批判を恐れず、常に前を向いて歩き続けなければならない。一歩一歩、歩き続けなければならない。そして、その後を歩いてくれる次世代がいるということも信じなければならないのだ。


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    やまもといちろう

    ブロガー・投資家・イレギュラーズアンドパートナーズ代表取締役。
    著書に「ネットビジネスの終わり (Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など多数。

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