「景気が悪くなってきたので業績が悪化しました」とかいう経営者がダルい
年末が決算だった投資先の数字とか改めて見ておりますと、やはり去年の夏ごろがひとつの景気のちょっとした山場だったのかなと思うような状況を再確認するのであります。
中国向けにサービスを輸出していて、倍倍とはいかずとも堅調に伸びてきた会社が昨年秋口あたりから足踏みしたり、大口に頼らず業界にまんべんなく取引先を作って売上を確保してきたところが地盤沈下し始めたり。
もちろん、デジコン周りは浮き沈みが激しいというだけでなく、レッドオーシャンになって好調不調で各社明暗が分かれ始めていて、IPO一発で一攫千金でワハハハを目指していたところでも、結構涙目になりそうなところが出始めるといったところでしょうか。
また、遅れてきた投資グループが、いまごろになってスマホだソーシャルだと千両箱を積む動きがありまして、とうの昔に投資が一巡していた界隈にまた軽いバブルが発生しております。
というか、結構ベンチャー界隈で著名な会社さんの資金繰りが厳しい、という話をちらほらと聴くようになってきました。受託がメインなのに社員数が増えすぎて利益率が足りないので売上でカバーしようと無理な受注をやらかして炎上しているところとか、VCから億のカネが入って浮かれて社員が倍増したり儲からない部署作って社員が遊んでいるとか、そういう昔よく見た光景でございますね。
自戒を込めて言いますと、やはり企業はお客様がいて、売上と利益が堅調に推移してナンボですので、下請けや受託であったとしてもクライアントの向こうにいるユーザーさんの姿が見えないことにはなかなかいい仕事ができないし、地に足をつけて仕事をするのもむつかしかろうというのが本音です。夢だ希望だビジョンだネットワークだといっても目先で回っている仕事がよろしくなければ飯は喰えないという意味でもありますし。
ただ、デジタルコンテンツの世界というのは他の業種と違って設備投資の比率が低く、人材が在庫のように感じられる部分があるので、とりあえず増資でそれ相応の規模のおカネが入ったから使えそうな人を片っ端から取っていこうという行動になりがちで、売上のアテというのは遥か遠くにあります。
で、外れたらリストラをせざるを得ないわけですね。一時期は、あんなに羽振りが良くて人も増やしていたのに、あるところから人材会社にどーっと登録が入って、あっちにもこっちにもあの会社で働いていた人が面接に来ているよ、なんて話が出ますと、一瞬で広まってしまいます。というか、私もせっせと広めるわけですが。
思ったように売上が上がらないベンチャーには、当然変な人が一杯出入りするんですよね。取引先だ従業員だというのは序の口で、いつの間にか執行役員に反社が入っていたり、株主に面白ファンドが居たりする。まずいわけでしょう。でも、売上が欲しいとそういうことが起きちゃうんですよ。
よく、有識者の人が「失敗に寛容な社会を」とか「再チャレンジを」と言いますけど、下請けを使う側になってみれば、ヘマして案件燃やしやがった会社に誰が二度と案件を振りますか。債権者集会でごめんなさいは仕方ないけど、またどこかから資金を集めてまた始めましたよろしくどうぞというところに、笑顔で発注なんて出せますかね。
私は、会社を潰したくないし、会社に個人の金をたくさん突っ込んでいこうとは思いません。
そりゃ自分の手金をどーんと突っ込めば相応の大きさの仕事はできるのかもしれないけど、やっぱり物事には順序があります。また、業績に山谷はあれ、沈みきっちゃうような経営をするのは怠惰だとも感じます。
だからこそ、景気が良かろうが悪かろうが、節度を持って経営に取り組み、改善していくモチベーションを維持しようとするわけですね。独立して15年経って、幸運に恵まれつつここまで無事に来ているのも、順調に浮かれず逆境にへこたれず、淡々と無理せず一歩一歩進んでいく経営ができてきたからだと思っています。
いまがいくら景気の曲がり角に来て、思ったような売上が上がらなくなってきたんだとしても、より合理的な経営、より安全な業務工程、適切なスタッフィング、外注管理、知財やバックオフィスといった目の配り方をしていれば、多少業績が下回ったからと言って株主は何も言いません。私含め、業績が計画通りにいかないからマジ切れするというわけでもない。
ただ、いっときの好景気に浮かれてソーシャルが凄いの拡大するの海外狙うの上場して何千億の時価総額にするのといった、夢は大事にするべきだけど、夢が大きいからといって、小さな金を粗末に使う経営は、それがベンチャーだろうが老舗だろうが私は許せないんです。たとえ、それが自動車通勤だ、取引先との宴会は会社経費だといったレベルであったとしても、あるいは個室や秘書を抱えて手放したくないと思ったとしても、自らを省みない経営に埋没して、自己満足のようなビジョンを披露して業績不調を煙に巻くような真似はよろしくないです。
今期は地震に見舞われたので社会不安が生じて業績の伸びに悪い影響が出ました、まあそれはそうなのでしょう。でも、その社会不安に見舞われた日本人に対して、市場やお客様に対して、お前の会社はどういうミッションを作り、曇った表情の人々に少しでも笑顔を与えようとしたのか、その反響を糧に、どういうビジネスを提供していこうと考えているのか、そのうえで、遅れた上場計画をどうリスケし売上の伸び鈍化をリカバーするつもりなのか、そういう話を株主は聴きたいわけですね。
株主だから偉いとかってんじゃなくて、私も企業を経営しているし、社員を養っている経営者だからこそ感じ取るべき機微のようなものを伝えられない人に、志とか語って欲しくないし、上滑りするトレンドを熱弁されても困る、ということです。そうでないと、社員もついていけないし、自信を持って製品やサービスを作ったり売ったりできないし、会社や業務に誇りも持てないでしょう。
起業の敷居が下がったのは望ましいことだし、起業を支えるサービスが充実したのは日本経済にとってとてもプラスであるのは間違いありません。そのうえで、そういう起業文化の興隆や投資環境の充実はある一定線の善意で支えられており、それによっかかり放漫経営をして経営状態が悪化しても何ら恥じない経営者は、早めに退いたほうがいいと思います。
もちろん、一番損をするのはその経営者がそういう人間性だったということを見抜けなかった株主なんですけどね。
というわけで、今年もいきなり授業料をたくさん支払っております。ありゃあエクジットできねえな。あーあ。
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