« 野田内閣の支持率が35%ぐらいに低下とな | Main | メディアは移り変わるが、コンテンツはあまり変化しない »

2011.12.12

リメイクを否定しない強い心を育む(ゲーム業界のみ)

 年末のお得意様大ブランドマッピング大会に臨むにあたって、何となくの整理など。終わったら4Gamerに記事を書く。書かないかもしれないけど。

■ リメイク批判を怖れない

 原作モノ同様、前作でたくさんプレイ時間を費やした作品のリメイクはユーザーの反応が厳しい。続編より厳しい。しかし、ウェブでの批判や酷評をよそに数字が出るので、気を良くしてリメイクをたくさん企画すると、一層のリメイクバッシングを受ける。

 リメイクを作るのは何故か。売れるからだ。売れるから作るのであって、売れないものを作ってバッシングされるより売れるものを作って叩かれたい。

■ リメイクは独創性がなくなるのか

 リメイクで必要なのは何か。優れた原作と、その原作が出た当時よりも進んだ表現技法、そしてたくさん投入できる予算だ。システムはある程度同じで、シナリオは一度売れたものをリファインし、さらにグラフィックは前作より格段に良くなる。

 前の作品のトレースだから、独創性がなくなるよという批判を受ける。でもね。制作ラインのすべてに独創性のある人がいるわけじゃないんだよ。あるいは、独創性のあることが、組織の中で権力を持ち続けること、心が折れないこと、品質を維持できることを保障してくれるわけじゃない。独創性がなくても、トレースならできる。そういう人の適材適所がリメイクや原作キャラモノ、システム面のシリーズモノであるということ。

 独創性が欲しいなら、名倉を批判するなと言いたい。

■ 作品は読者やファンと一緒に年をとる

 私は黒澤明監督作品が面白いと思ったことがない。いくら名作だと力説されても、つまらんと思うものはつまらん。ジャンプも読まないし、アニメもほとんど観ない。ガンダムAGEがクソだと言われても、観てないから知らん。

 だけど、数字でどういう顔つきをしたお客さんがその作品についているのかは良く知ってる。だいたい、作品のリニューアルをしていないシリーズは、シリーズのファンと一緒に年をとり、色褪せていく。クラシックとかならそれでいいけど、商業作品でファンと一緒に年を取るのは死を意味する。だから、仮面ライダーもガンダムも若年層というターゲットを目指してオールドファンから巻き上げたカネをぶち込んで作品を作り続ける。

 リメイクもまた、新しい表現技法で若いファンを捕まえていくためのプロセスに過ぎない。

■ リメイクラインで制作技法を試す

 リメイクの一番作りやすいところは、工数が読みやすいところ。想定していた工数の三倍になったという話はあまり聞かない。逆に言えば、シンプルシリーズしか作ったことのないような外注でもマイルストーン納品をこぼすことは少ない。それでもこぼしてるけど。死ね。

 技術が変遷していく中で、自社で培いたいアジャイル開発的なのとか、アンリアルエンジンのラインを試すとか、描画方法、UI、AIといったもんを投入してみる半製品プロトタイプとしてはとてももってこいだ。だってシステムはあるんだもの。

 さもなければ、なんか2億円もかけてお姉チャンバラのパチモンみたいな作品をクリエイターに作らせるという惨事を起こすことになる。ほんとどうするんだろう。

■ 海外市場にシリーズを売る橋頭堡を作る

 私が一番力説したいのはこのポイント。アジアに売ろうよ。シリーズを。テレビの前に座ってゲームをする習慣のない人たちに、美麗な世界の中で沸き起こるストーリーを楽しんでもらおうよ。

 日本人からするとクソシナリオで酷評に値する残念厨二展開で主人公が脚本家の考えた自己中のクズガキだったとしても、まだそういう分別のつかない人たちにはそれが新しいんだ。いま、アジアでは昭和40年代か50年代に流行ったような、日本人から見るとチープなシリーズモノがすんごくウケてる。中国人が村上春樹作品にハマるようなもんだろ。

 ただし、そのまま持ち込んだらグラフィックが寒すぎて負ける。だからしっかり最新映像をブチ込んだリメイクを作るべき。

■ 素材の海外調達を増やせ

 もう国内のスタジオ使わなくてもいいだろ。高いし。いちいちJRPGとか言ってる業者も潰れそうだし、やはり伝統芸能としてのJRPGを新規で国内にて制作する必要もないんじゃないかと。

 下手したら、宣伝以外のプロデューサーも日本でやらなくていいじゃんと思うわけでね。もちろん、一番の障害はそういう経営判断する人本人の英語力。というか、外人とコミュニケーションを取る力の不足。頑張ろう。

■ リスクを減らせ!

 文字通り。でも、各社がリスクを最小化させ続けた結果、全体のパイが減少しているのは偶然ではあるまい。CG業界もゲーム業界もIT業界に比べて二割以上人件費がディスカウントされているんだよ。IT業界に人が流出するのは仕方がない。

 それでもいいからリスクは減らすしかない。ラインナップを削り、社内の制作環境をテンプレ化し、海外調達を増やし、新規IPとシリーズ・リメイクの比率を見直し、直販・DLCの比重を増やして軽量級のタイトルを安価にリリースして客を増やすんだ。

 商売のスコープを見間違うと大変なことになる。いまさらソーシャル凄いとか言い出す羽目になる。

■ マネーゲームしろ

 もう「優秀な制作チーム」って概念の比重が低下した。クリエイターっていう存在も絶対ではなくなった。カネを生むシリーズタイトルを抱えた会社を買って、規模を大きくしないと売上がもたない。充分マネーゲームの世の中だ、というけど、調達の側からするとまだまだ全然足りない。年に二本か三本の大型タイトルが出ている状態でないと、世界市場でも国内市場でも存在感を示せなくなっているんだよ。知名度が低いから売れない。いい人も来ない。利益も出ない。縮小均衡でござるよ。

 世界的な競争にはとっくに日本勢は負けているのだから、世界に打って出られるAAAタイトルの制作を目指すTier1と、国内のオタ・腐女子向けに小予算で迎合しっぱなしのTier2に分けて頑張っていくほかない。どっちも頑張ろうなんて無理よ無理。黙って使えない30代をリストラするべき。っていうか、数年後のラインアップ数だけ目処を立てておいて、必要な人数だけ残していく形になるんじゃないの。


« 野田内閣の支持率が35%ぐらいに低下とな | Main | メディアは移り変わるが、コンテンツはあまり変化しない »

Comments

正しいとは思うけど、
ポジショントーク乙。

やまもとさん自身は違うかもしれないけど、あんなにイメージエポックと一緒に仕事してた人を雇ってるじゃん。
何か起きているんですか?

ハード世代を超えたリメイクは別にいいじゃん。
叩かれてるのは携帯ゲームのHD化みたいなベタ移植や互換機能を削除した上で再販するようなリマスターじゃないの?

>独創性がなくても、トレースならできる。そういう人の適材適所がリメイクや~

ゲーム作りがクリエイティブな仕事だと思って入社してる以上トレースで満足してる人なんか聞いたことない。
人並み外れた独創的感覚の持ち主でなくても皆限られた才能の中で”作品”にアウトプットしたいと思ってるよ。

でもリメイクにではない"移植"や"リマスター"っていうのは基本的に作業が「コンバート」。これは独創性以前の話で単純に士気が無くなる。で、やらされるのは外注。

リメイクで技術開発しろとかアジアに売れとかなんだかとんちんかんですな。後半は結果論ですし。

>ゲーム作りがクリエイティブな仕事だと思って入社してる以上トレースで満足してる人なんか聞いたことない。

山ほどいるけどな。俺もそうだし。

>リメイクで技術開発しろとかアジアに売れとかなんだかとんちんかんですな。後半は結果論ですし。

ラインマネージメントしたことのない人には分からないと思う。辞表書いて制作下請けで頑張るべき。

リメイク批判するのって、ネガキャンのゲハブログを喜んで読んでるような奴らばっかりで、
実際にはきっちりとリピートしているんで原作や原体験を壊さないように
制作し続ければまだまだ全然稼げると思う。

MM2Rや俺屍はいいリメイクだと思うけどなあ
まあ元隊長が論っている対象とは違うんだろうけど

セガがパチンコで儲けてゲーム事業に投資するのと似てる。利益が上がれば結果的に冒険する余裕も出てくるから、ゲーム会社にはプライドなんか捨てて儲けに走って、その後に前衛的な作品を作ってもらえばええんじゃ、とばっちゃが言ってた。
つか、似たような作品がリリースされる前にリメイク発表しちゃったほうがブランド持ってるところは強いと思うんだよね。泥沼だけど
 
まあ私はドラクエのリメイクとか楽しい楽しいと思ってやりまくってるのでなんか思考停止してる感はありますが。あとドラゴンエイジとかスカイリムって、そんなに楽しいか?いや、まあ普通に面白いとは思うけど、発想自体は枯れた文化だし、グラだけ進化して~とかネガキャンしてた人々が絶賛してるのを見ると屋上から飛び降りれば良いのにとか思っちゃいます

俺屍とか、無駄にプロモの予算つけて、ペイしないだろっつー惨劇。PSプラットフォームに弾がなかった次期だから仕方ないが、プロジェクトとしてはこけてるだろ?

広井王子、レッドエンタテイメントのサクラ大戦シリーズが好きだったんですよ。おっしゃる通り批判しつつもリメイク版買ってましたよ。
ですが、最新作の5、ニューヨーク編でアジア圏への販路を広げるとか言っておいて結局シリーズの続編もなく、細々と年齢の上がるファンと一緒に舞台公演やってよくわからないところでMMO企画が上がって、頓挫してまた企画が起きて、漫画化してとなって同一コンテンツで絞れるだけ金を絞り上げる姿勢は素晴らしいんですが、ファンとしては作品の横の広がりより新作出して前への広がりをしてほしいんですがそれがなくて残念です。
今台湾とかタイとかシンガポールで日本の萌え文化がそこそこビジネスとして展開してる?のにどう考えてもサクラ大戦5のアジア展開はSEGAが時代を早読みしすぎた感じがありますw
後、アジア展開する一作目が日本じゃなくてアメリカを舞台にした上に東南アジア出身者を誰も入れないとか販売戦略の上で間違ってたと思う。

何故個別論が勃発するのか、そしてプラットホームがどうのとゲハ臭いことをいうのか。
ゲームネタだと経営者である隊長の信徒は皆微妙なセクショナリズムに囚われますなぁ。

社内的には、リメイクでゲーム論学べだし。
幹部(セクション責任者。特にディレクター)には、マネージメントを踏まえて仕事しろだし。

リメイク=既に実数が上がっているからリスク少ないよね、だから社内に余裕があるよね、だからみんな勉強してね、これから先オリジナルやりたいって寝言ほざく前に、基礎をしっかりね、ってことなんだろうけど。

現場的な見識から言わせて貰うとおもっくそ机上の空論ですがな。
 
リメイクに求められるのは当時の視点での絶対的な精度だよアニキぃ
それが出来る奴なんて二線級にすらいない
現状、リメイクや移植なんて3軍以下の仕事なんだぜ。
 
そして、そんな連中に「制作技法を試す」なんてのはムリゲー過ぎる。
 
 
そしてリスクヘッジ、これはそもそもムリだぜ
アニメも漫画もゲームも製作工程において作り手の技量に依存する所が多すぎる。
隊長はゲーム開発の「産業」としての在り方を模索してると思うんだけど、これは客の趣向が変わり続ける以上絶対ムリ。
1千万人の宮崎パヤオでも居ない限りムリ。
 
 
でもまあアジアに売るってのはアリだと思うけど
アジア民にリーチできるコンテンツの取捨選択が果たして出来るかどうか、が一番の問題、かな?
 
 
あとちょっと思ったんだけど
ユトリ教育やめようって話題がどこかで見かけたんだが
丁度今ってユトリが社会に出て評価値がついたあたりだよな
この辺を考えると今後数年の人材はガチで捨てないと駄目だと思う。
 
いやまじで。

リメイク制作の下請けに人を出してる山本さんに机上の空論とか書いてるバカがいて笑うw

>リメイクに求められるのは当時の視点での絶対的な精度だよアニキぃ
>それが出来る奴なんて二線級にすらいない
>現状、リメイクや移植なんて3軍以下の仕事なんだぜ。

もうこの時点でこのコメント書いてる奴は仕事がないんだろうなぁと思う。
もしくは、どうしようもないゲーム土方の下っ端か。

リメイクのラインなんて、社内でPとDが立って、残りは外注で回すんだから、リメイク担当が三軍なんて言ったら失礼だろ

つーか宣伝失敗するとリメイクは悲惨な数字になるぞ

続編のラインを外されてリメイクに飛ばされてクビ宣告かなと思ったけど、意外に楽しく仕事がやれてる俺に未来はあるのか
明日はどっちっすか

え、黒澤明作品を面白いとと思ったことがない…って。
「どですかでん」や「赤ひげ」あたり見て言ってるならわかるが、「七人の侍」や「隠し砦の三悪人」あたりを見ても面白いと思えないんだとすると、多分俺と話合わないわ。
最新のエンタテインメント作品と遜色なく、ただ受動的に見ているだけですごく面白いもんなあ。
いろんな感覚の人がいるもんだ。

ちなみに俺は三谷幸喜作品を見てオモシロイと思ったことがない。

シリーズロックインとブランドロックインがごっちゃになっていませんか?

原版の内容を壊しすぎず,加えて操作性とかが改善されていて,快適に遊べるように配慮とか改善とかしてくれれば気にしない質だけど,改悪した物がやたら多いのが・・・・です

リメイクは、出すタイミング。せめて、新作の次、リメイク、その次は新作という風にして、タイミングを作るってことだ。こけた新作のあとにリメイクはいいし、受けた新作のあとにリメイクはしらけるだけ。あとは、自国の作品のリメイクでなく、外国から買ってリメイクする。ハリウッドは、うまいよね。その上、リメイクしてだ、作品が完成したのに、劇場にのせないとかやってるし。ようするに、リメイクだろうが、新作だろうが、できあがってみて、ダメ作品ならボツにしないと、客の信用を失って、リピートされなくなるんだよ。日本ぐらいだろ、ダメな商品をだしてしまったり、ブログに書いて全部アップしてしまったり。あとは、リメイクするなら、新人発掘もして安めな製作費用でつくらせて、水準がいったら公開するとか。とにかく、日本の商売は、客離れすることを、囲い込むことでカバーしようとして、よりいっそう客離れがすすんでしまうのだよ。

なんかしらんが、気になるのは、小さい小学生前ぐらいかな、やたら「妖怪人間」とか道でつぶやいている。たぶんテレビでやってるんじゃないかな。これで、リメイクしてみるのもいいかもと思いつつ、テレビになる前にリメイクしてしまえば、利鞘が大きくなったのでは。漫画の名作をリメイクするのは、ありだと思うけどなぁ。ネットドラマも、リメイクしてぼちぼち発表すればいいのに、動画系は。

ま、どっちにしても、新作がないと。リメイクは売れないと思うよ。

The comments to this entry are closed.

« 野田内閣の支持率が35%ぐらいに低下とな | Main | メディアは移り変わるが、コンテンツはあまり変化しない »

メルマガ

  • メルマガ広告
    やまもといちろうによる産業裏事情、時事解説メルマガの決定版!ご登録はこちら→→「人間迷路」
    夜間飛行
    BLOGOS メルマガ

漆黒と灯火バナー

  • 漆黒と灯火バナー
    真っ暗な未来を見据えて一歩を踏み出そうとする人たちが集まり、複数の眼で先を見通すための灯火を点し、未来を拓いていくためのサロン、経営情報グループ「漆黒と灯火」。モデレーターは山本一郎。詳細はこちら→→「漆黒と灯火」

プロフィール

  • Profile

    やまもといちろう

    ブロガー・投資家・イレギュラーズアンドパートナーズ代表取締役。
    著書に「ネットビジネスの終わり (Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など多数。

My Photo
無料ブログはココログ