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2011.11.22

【書評】『自分のアタマで考えよう』(ちきりん・著)

 どうしても最近出張が多く、今週もイベントの後は東京を離れなければならないので読書量が増えてしまうのであるが、例によってちきりん女史が本を出したと言うので読みました。

 一部の方はご存知かと思いますが、私自身はちきりん女史の書いておられるブログ(というか、はてな)があまり好きではありませんでした。というのも、私の仕事で詳しい事象について、かなりミスリードを強いるような記事をアップしておられるのを読んだ経緯があり、なんでそんなことを書くのかのうと思ったからです。まあ、私も誤読の類はたくさんやらかして迷惑かけますので同類と言われればそれまでなんですけれども。

Chikirinの日記
http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/

 などとしっかり予防線を張ったところで、なぜ最近ちきりん女史の本やブログ(のようなはてな)を読んで腹が立たなくなったのかというと、しばらく読み込み続けるなかで、ようやくちきりん女史の一貫した物事に対するスタンスや考え方というものが腹に落ちるようになったからであります。納得いったというか。BBAもっと早く言えみたいな。

 本書はそういうちきりん女史の考え方が余すところなく書き綴られているのですが、思考のルールが極めてゼロベースで、物事をまずフラットに捉え先入観なく考え方を詰めていくという思想が出ております。時折、ちきりん女史のブログ(な感じのはてな)が釣堀になっていてアクセス乞食に見える場合があるのも、比較的定説の固まった事案でも裏側から見たり、一から考察を積み上げるといったような思考の結果を作る過程を読者に披露しているからなんでしょう。

 有識者の話を先に聴いて「解答」を見ず、まず自分の頭で考えて一通りの要素を詰めていった後で、あらためて他の人の議論を読むというのは、相当な覚悟の要る部分であります。私ならやらない。でも、そういう思考の進め方を習慣付けている筆者だからこそ、取り上げる事案がいちいち釣り臭く見える、その代わりプロが敢えて見落とす本質を見抜く力が出てくるという炙り出しが彼女独特の芸なんですね。ある意味で「最高に疑り深い素人」であり、そうであるが故に当たり外れがあるけれど、その分かえってノイズが少ないという珍しい書き手でもあります。

 本書では、11個のテーマ(と言いつつ、テーマの中にサブテーマがあるので、思考すべきポイントは結構たくさん書かれている)と彼女が向かい合った経過と結論が、数学の試験のように続いています。その経過や結論に同意できるのか、同意できないとするとどういう思考ルートが自分と違うのか、考えながら読むととても楽しい本に仕上がっていると思います。綺麗な図版も多いので、簡単にするすると読めそうだけれども、私自身はかなり往って返って時間をかけて読むことになりました。

 なお、思考実験の元ネタとも言える、あわせて読んでみたい書籍はこちら。『ぼくたちの洗脳社会』は、まだデブで冴えていたころの岡田斗司夫さん渾身の良書なんですが、岡田さんが考え方のフレームワークを提供したのに対し、ちきりん女史は実践した経過や結論を本にするという形であって、凄く楽しいわけですね。思わず、ちきりん女史の本を二度読み終わった後、岡田さんのこの本を買い直して読んでしまいました。

 最後になりますが、自分で買って読み終わったあとで献本が送られてくると、三重の意味で悲しい気分になりますので、そのあたりをどうかご留意いただければ幸いです。


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Comments

実践のともわない思考って、ただの無駄だと思うんだけどね。本当に考えるというのは、今、目の前で起きていることが、どんなに価値がないことであっても、それを真剣に考える人のものなんだよ。ネットは、どもう、自分という現実から離れている人が多くて、そのうり、ほとんどが受け売りだったりするし。でね、本当に考えたことがある人は、とてつもない困難にぶつかったとき、乗り越えることができるんだよね。また、困難を背負うこともできるわけだし。

たってさぁ、本物の科学者ってさぁ、実験している人をいうのにさ、実験なんかしていない人がさぁ、あれこれ、これは似非科学だとか追及したりしていてさぁ、おかしいでしょう。その上、実名論文が科学の第一なのに匿名とかさ。

若い頃はさぁ、匿名になって、いろいろな考え方してみるのもいいし、大人になって暇潰しで匿名でいるのもかまわないし、第一さ、有名な匿名って、なんなの? 小説家じゃあるまいし、下品でしょ。また、実名で有名な人が、匿名や無名の人に腹立てるのおかしいよ。会ったこともないし、会うつもりがない人に怒ってるんでしょ。

もう、世界は、頭の体操してる暇なんてないですよ。

あとさぁ、この前、ネットでさぁ、大學生がいてさぁ、勉強しろって怒ったらさぁ、勉強なんて適当にやった方が捗るって開き直って、それって、自分の頭で考えることを放棄しているやつでさ、じゃぁ、税金無駄使いするなっていったら、税金の無駄使いなんてみんなやってるでしょだってさ。別に、そこのネットで、勉強させてもらってるんですとか、なんか、考えてるならいいよ。いっさい考えてない。むかついた、むかついた。でも、そいつは、思ってるぜ、自分で考えてるって。

一人で考えたって、師から評価されたことがないなら、到底、欧米の学生にも負けるんじゃないかな。よくわからんよ。別に考えるなんて、ニンジン一本、レタス半分、豚ひきにく50グラム、さて、料理をするかで、誰もつくったことがないやつつくって、それが美味しくて、毎日でも食べたくなって、ついでに、誰かにたべさせるとその人も喜ぶというのは、考えるということなんだけどねー。

だってさぁ、官僚なんて、本当に考えていたら、天下りなんてしないでしょ。役人稼業を真っ当して、役人だけの年金だけで、安い公営住宅にすんで、余生を読書や論文執筆するんじゃないの。ますます勉強するもんでしょ、死ぬまで。考えた先が下品って、世界に対し、大恥すぎる。

せめて、幸せそうならいいんだけどねー。その点、外国のネットいくと、笑顔、笑顔、笑顔、友達、友達、友達、家族、家族、家族、恋人、恋人、恋人で、ほんと、かしこい。どれについても、すごく考えているけど、ただ、言葉として書かないだけであって。

とにかく、若い人は、師を見つけたほうがいい。年取ったら、弟子の一人でもいたほうがいい。これが、考える基本です。

知紀リンねぇ

僕も自分の頭で
一日中エロ漫画のことばかり考えています

> 本物の科学者ってさぁ、実験している人をいうのにさ、
数学、理論物理学、シミュレーション天文学に対する全否定ww

>まだデブで冴えていたころの岡田斗司夫さん渾身の良書なんですが、

脳みそもダイエットしちゃったみたいに読める。。。

グリーとKDDIがDeNAを正式提訴・・どうやらこれでベイスターズ買収は白紙ですな。

急に軌道修正って正体それなりに大物かよ

イーストプレスだかから出てる本をやたら褒めてたな
再評価したんじゃないか?


その様なことよりも壱よ、ちとお耳を拝借。
すれと縁無きことなれども。
この度、拙者が江戸城に出城した折のことで御座る。松の廊下。
何か騒がしきことあり、一向に前に進めず。
何事かと思い見ゆれば赤穂藩主浅野内匠頭、吉良上野介に斬り付け候。
最早、阿呆奴がと。馬鹿奴がと。
そなたたち、刃傷事件ごときで松の廊下を占拠するとは一体何事か。
刃傷事件なり、刃傷事件。
何やら家老や御家人も打ち出で、一城総出で物見遊山で御座るか、まことに目出度きことなり。
「吉良上野介覚悟!」などと叫びしは正視に耐えず。
そなたたち、介錯し申し上げるから切腹せよと。
そも松の廊下とは本来閑散としているべき物なり。
擦れ違う隣国藩主との目だけで気まずき礼、
次の参勤交代は拙者か否か、その様な雰囲気こそ松の廊下の真髄。
火事と喧嘩と江戸の花は引っ込んでおれ。
して、漸く通れたと胸をなでおろし奉りし折、どこぞの芋侍が「殿中で御座る」とのたまいし。
そこでまたしても我が怒髪天を衝くが如きに候。
この時勢殿中などすでに過去の遺物なり。
したり顔して何が「殿中で御座る」か。恥を知れ恥を。
そなたは本当に殿中で御座ると叫びたいのかと問いたい。問い詰めたい。半刻弱ほど問い詰めたい。
ただ単にどさくさに紛れて歴史に残る言葉を言いたいだけなのではないかと。
江戸城中の先達である拙者に言わせれば、斯様な如き事態の適切な判断はやはり、
討ち入り。
これなり。
雪の降る吉良邸に陣太鼓を鳴らし討ち入り。これでござる。
して、見事仇を討ち果たし凱旋。これぞ武士道。
されどこれは切腹を覚悟の上でやらねばならぬ諸刃の刃。
未熟者には百年早いわ。
まあ壱の如き若輩者には、昼行灯で敵の目を欺くが関の山なり。

下から3段落目、たしかにぃ、と膝を叩いてしまいました。「最高に疑り深い素人」、言い得てますねえ。サスガ。

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    やまもといちろう

    ブロガー・投資家・イレギュラーズアンドパートナーズ代表取締役。
    著書に「ネットビジネスの終わり (Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など多数。

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