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2011.08.09

事業意欲が強かった社長が、燃え尽きて会社を畳むまで

 以前、お世話になった社長さん、しばらく付き合いのないうちに会社を清算するという葉書がきてまして… 驚いて、本人に電話してみたものの出ず。当時の仕事仲間と久しぶりに連絡を取ってみたら、この数年でさまざまな紆余曲折があったのですねえ。そういえば確かに、去年の暮れぐらいに金を借りに来ていたのを思い出しました。あれだけいた社員も散り散りになってしまったようで、物悲しく感じるところではありますが、とりあえずお疲れ様でした。

 とはいえ、世間的には成功者の部類に入るんだろうと思います。一度は、持ち会社を上場企業に売却。その後、事業意欲を抑えきれずさらなる新会社を設立して、手金で事業に乗り出すという経緯ですから、見事なベンチャースピリッツというか、熱い起業家根性というか、まあ私が一生でついぞ持ち得なかったような温度の高さでありました。

 一回まとまったお金を手にすると、生活レベルはどうしても上がってしまいますし、同じようなやり方でまだまだ自分は稼げるという感覚になります。これは、成功者特有の臭みなんですけどね。最近では、調達方法が多様化して、またそれを手助けしてくれるサービスも充実してますし、成功すると成功者仲間のようなインナーサークルができて、小金をみんなで出し合ってうんたらという誘惑も増えてくる。それ自体は、日本のベンチャーシーンを盛り上げる意味で、とてもいいことだと思いますが。

 私の場合は、別に手の内を知られたくないという話ではないけど、あまりベンチャー起業家が寄り集まって決起するような場所に出入りしません。興味がないわけではなくて、単純に向いてないんですよ。好かれるよりは、遠くからヲチってたいほうですしね。でも、ベンチャー仲間からの高評価ってのは、それはそれで気持ちがいいことですし、業界の中で名声を得るというのは仕事にも役立つ。その一方で、こういう仕事をする、凄い革新性だ、というアイデアというのは、結構な割合で誰でも思いついているものなのですよ。また、一番最初に取り組むことよりも、ベストなタイミングでアクセルを踏むことのほうが価値がある。このところ、HTML5の案件が増えたけれど、昔からHTML5に注目していましたという法人よりも、いまあるサービスをタイミングよくHTML5+JavaScriptへコンバートしようとする組織のほうが最終的に大きな果実を得ることになります。

 半年ほど前は、いろんな人が「これからはスマホだ」と言っていました。きっと、みんなそう思っているんです。だからといって、バッと飛びつくのはビジネス感覚に基づいた経営判断とはとてもいえないんじゃないでしょうか。

 このところ、見ていて思うのは、少し手金ができたので規模を大きくしようと小ぶりな会社を強引に買収したり、海外に出て逝こうと無理な投資をしようとする傾向がとても強いんですね。もちろん、いま手がけている事業が好調だから、このまま規模を大きくしていけばもっと利益が得られるんだろうと踏んで、博打を打ちに逝くわけですよ。

 ところが、冒頭の社長の顛末を見るに、成功体験もあり、優秀で、彼のことを好意的に受け入れていた人垣も分厚かったけれど、リスクを恐れずにリスクを踏みに逝ったら、本当にリスクだったあとのプランがまるでなかったようなんですね。そういえば、彼が二度目に興した会社に私が二度と発注を出さなくなったのも、納期の遅延と請求書などの取り回しをするバックオフィスが杜撰だったからでした。

 自信はあったでしょうし、当初は儲かっていたように見えていたから、きっと遠くで頑張っているんだろうと思ってたんですが、手を広げすぎて失敗をすると、一気に回収ができなくなるんです。手を広げると言うことは、お金をあちこちに分散して使う、ってだけじゃなくて、取引先も増えるってことだから。うまくいかないんだから、そりゃあ当然手を伸ばした先の取引先も損をしているわけで。

 そうなると、過去の成功に期待して、取引や利益目当てにリスペクトしていた人垣も、退潮を境に一気に薄くなり、取引も細って、肝心のやるべき本業に磨きをかけられなくなって埋没をしていくのですね。こういう失敗の経過や事例こそ、本来ベンチャー仲間のうちで良く吟味し回覧されるべきものだと思うのですが、楽観的で積極性を是とする界隈では、つい数年前までみんなで酒飲んで仲良く情報交換してたのに失敗者に冷たいなあと感じるわけであります。

 当然のことながら金は貸さないけどね。


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Comments

>当然のことながら金は貸さないけどね
冷たい人ですね(冗

この人が深海より深く反省しているのなら、スタッフとして使うと役に立つ場合が多いんですよ!
まあプライドが許さないでしょうから 難しいのですが…
派手に見えても足元固めて地道にやらないと、勢いってのは衰えますのでそこを勘違いしては駄目ですねw
いつも勝負じゃ疲れるだろうに…

ベンチャーの感覚も いくら儲かるから良い仕事だってのを無くしていかないと一発屋で終わりますねwww

失敗した人を活用するのがマイクロソフトみたいな。

失敗してから立ち上がってナンボでしょ。

大問題になるのは、失敗を受け入れないこと。ごまかすこと。頭をつかって。

「失敗は成功のもと」だよね。若いうちに失敗を経験して反省できる人になってほしいものだし、年とったら、失敗を理解活用できるようになってもらいたいものだ。(特に民主党・・・)

一度蛇口から出した水は、簡単には止まらないよね。
要は、かなり単純な話なんだが、入った量より出て行く量を少なくすれば失敗はしないのだが、それが判っていながら(ホントはこんなことすら理解していないw)余計なことをするので殆どのヒトが成功せず、まぁ一時成功したとて継続ができない。
意欲あるヒトは勢いもあり連戦連勝を誇っても、一度、一敗地にまみれると復活はかなり困難(特に日本は)なんだよな…。
多分にもれず(泣)おいらもこの手合いで、かなりのダメージを長期間被って禁治産者なみの精神状態(自覚症状w)だったが さて、そろそろ復活する時がやってきて喜んぢょる。

うーん、株売買やFX投資ととても近い。レバ上げ過ぎると儲かるときは死ぬほど儲かるけど、外すと破産する。流れを読んでのリスクコントロールが大事。

お金を貸さないと言う点に関しましては山本さんの自由だと思います。
ですが、「楽観的で積極性を是とする界隈では、つい数年前までみんなで酒飲んで仲良く情報交換してたのに失敗者に冷たいなあと感じるわけであります。」
と批判的な書き方をしておいて
「当然のことながら金は貸さないけどね。」と最後に書き足すのは傷口に塩を塗りつけるようでちょっと山本さんらしいと思います。
どうぞこれからも辛口な文章をお願いいたします。

金は貸せん!っということですね

なんかシンミリしました

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    やまもといちろう

    ブロガー・投資家・イレギュラーズアンドパートナーズ代表取締役。
    著書に「ネットビジネスの終わり (Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など多数。

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