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2011.07.15

多国籍企業「日本人学生は要らない。インド、中国から雇う」の真実

 日本で結構大学生や高校生の就職が厳しいという話があり、それへの警鐘というか、いわゆる危険デマとして、外資系の日本人学生スルーの話が良く出るらしい。ここんとこ、シンガポールやら欧州やらわたわたと仕事をする中で、比較的先方のヒューマンリソース担当のマネージャーと話をする機会がとても多くなった。んで、日本国内で聴く話と現実の様相が全然違う部分があって、一応指摘しておこうと思った。

● もともと多国籍企業では学卒をいきなりリクルーティングするという行動原理があんまない

 日本人学生が駄目ってんじゃなくて、そもそもあんまり学生をいきなり採らない。「日本人学生を採用しないの?」と聴くと、たいてい「人材会社から経験のある日本人がいっぱい紹介されるのに、なんで経験のない、これから教育コストをかけなきゃいけない学生を採用するの? 不合理じゃね?」みたいな回答を良くされる。

 同じような話はフランスでもドイツでもある。教育をそれほどせずに戦力にしたい、俗に言うソルジャーはポルトガル人とかトルコ人とかを雇う。日本人やフランス人は、そもそもコストが高い。

● 何で中国人やインド人を採るの? 理由その1は現地採用

 市場が伸びている地域で雇用するに当たり、土地勘のある人を現地採用して、そこの中からマネージャーに相応しい人を登用することがとても多い。なので、必然的に、広い国土で市場が伸びていて担当すべき仕事がたっぷりある中国やインドはとても採用が大変なぶんだけ多く人を取る。

 同じ中国やインドでも、経済成長がそれほどでもない地域の出身者は確かに採らないように見える。売上の割に、日本人が少ないよね、と指摘したら、日本人はあんまり群れないし文句を言わないのでいろんな地域のブランチに「良く混ざってる」とのこと。あっそう。

● 何で中国人やインド人を採るの? 理由その2は離職率の高さ

 とにかく連中は何かあるとすぐ辞めてしまうらしい。辞めてほしくない人には昇進や起業としての教育を施して幹部教育を進めることが多いそうだが、それでも他からヘッドハントがあるとすぐに転職してしまう。辞められる前に補充しなければならないし、日本以上にシステム化、マニュアル化を進めないと売上が急落したり、部門やチームごと引き抜かれてしまうので選抜を早めに行っているとのこと。

 逆に、日本人は管理部門にたくさん置かれる傾向があるとのこと。まあ、それは私が聴いた会社がたまたまそういう特徴を持っているだけかもしれないが、言われてみればそんな感じがする。中国人、インド人は勉強熱心、というのもあんまりそうでもなく、「200人採用したら、にんじんに釣られるのが20人いるか30人いるかの違いですよ」とのこと。

● 何で中国人やインド人を採るの? 理由その3は縁故採用

 グループ全体で中国やインドの売上が占める割合が大きくなると、当然その地域のビジネスをマネージメントするのに中国人やインド人の幹部が増えるのだが、彼らは基本的に身内を雇いたがる。中国人なら同じ出身地の中国人、インド人も同様。一番身内びいきが強いのは韓国人マネージャーであるらしい。

 また、それ以上に、ひとつのブランチの中の中国人率などが上がってしまうと、それ以外から来ているフィリピン人やインドネシア人などを追い出そうとしたり、仕事から外そうとするので、会社の中で規定を設けて人種や出身地域が偏らないような工夫をしているそうなのだが、縛りが強いとこれまたチームごとごっそり辞めてしまうなどの弊害もまた多いとのこと。

● 日本人であることの強みとか

 日本人は内向きで国際派ではない、という意味合いの話をされるが、国際派すぎる中国人やインド人は会社に長く勤めてくれない傾向が強いので必然的に流出して欲しくないノウハウを培う部門やR&D、契約・管理部門などで日本人が起用されるケースがとても多いという話。言われてみれば、地味な銀行部門某社やボンドトレード部門のサブは日本人…。

 あと、日本人が勉強しないというのは全くの誤解との由。優秀な日本人は、やはり優秀で、あんまり国籍や国民性を信じすぎないほうがいいんじゃないか、というのは各社共通の見解だった。

● 日本企業について

 言われているほど弱くもないし、むしろ特化してて面倒くさい存在だそうで。例示された競争力やらシェアやら図表の類や細かい議論は割愛するけど、日本市場がそこそこ大きいのでそこに特化して生きてる完全ドメ企業と、海外での鍔迫り合いに臨んで切れ味を磨く日本発多国籍企業とに完全に分かれてる。

 日本の問題点は、やはり調達の能力がold fashionedの手法でミドルよりトップが合理的でなく自前主義な点で資本効率が悪く再投資に回せる利益水準が低めに推移することが多いとの話。あと、社員が辞めないのでノウハウが良く溜まる。なぜか海外のブランチでも日本企業は居心地がいいのか、統計的に非日本人もあまり人が辞めてない。うーん。

● 就職する日本の学生さんについて

 あんまり日本の就職事情についての話は議論されないのだが、日本の学生が優秀でないというよりも、そもそも社会に出ていないのだからスキルがゼロであって、高いカネをかけて採用するはずがないじゃないのと切られて終わり。日本の労働市場の硬直性がどうのという話もあったが、負けず劣らず欧州も雇用システムはどうしようもないので、みんな採用には苦労をしている。

 マネジメントレベルでいうと、現地で仕事を任せるソルジャー採用と、高い学識と想像しうるポテンシャルを持っているので獲得する幹部採用とでは、やはりモノの考え方は違う。あと、やはり会社やトップによって採用については哲学が違う。現場のモノづくりやプログラマーのバイトから採用したいとする人もあれば、FacebookやLinkedInの採用を試験的に増やしてみたという人もいる。

 日本人学生は大手志向で仕事を選びすぎる、という話もちらほらあったが、中国のほうが凄いしコネまみれなので参考にならんような。じゃあお前のところは日本人社員をどうやって雇ってるの、と聴いたら、だいたい店舗やエンジニアのバイト、契約社員からの社員登用か、人材会社からの紹介で選抜というのがとても多い。技術系も小売もだ。結局は、自分とこの商売になじんでいるか、組織に向くかといったあたりがポイントとのこと。

 結論としては、まあみんな頑張れということで。はい。


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Comments

逆に言いますと日本人新卒がいきなり外資系大手に就職と言うのは日本の採用の仕方にその会社が慣れているのか、現地法人だから採用も日本式なのか、そいつが即戦力に出来るほど優秀と言うことでしょうか?

つまり起業せよとのことですな。

>、社員が辞めないのでノウハウが良く溜まる。

日本的経営の良さを見直そう。。。

日本人系の企業が離職率が低くて海外が離職率高いのは共感の影響かもしれない。
海外の場合は常に自分個人の売り込みに熱心でチームもステップアップの踏み台だと思ってる。
当然敏感な人たちはそれに影響を受ける。職歴を経てCEO等に採用されるゴールを語り合い
そういう経歴の人たちに憧れあう。

日本の場合はずっと一緒に頑張っていこうというチームを長持ちさせる方向で表向き付き合う。
そして一緒に作った製品を子供みたいに自慢する。

最初から腰の浮ついた人たちが集まってそれを隠しもしない現場と
団結力だのを普通だと思ってて転職などの野望をあまりおおっぴらにしない現場に入ると
現場自体が問題を抱えていない場合は差が現れたりもするのかも。

あとは海外だと書かれている通り特定のグループがはびこって人種や宗教や文化で固まったりしだすけど
日本人の場合はキリスト教徒だろうがイスラム教徒だろうが割とどうでもいいし多くの日本人に
とって人種の違いってのは日本人か外人か程度の考えしかない事が多いから事細かにやれどこ国人の
どこそこ出身がいうのにならず最終的には衝突や差別感が薄まっているのかも。
伊達に普段から盆とクリスマスと正月を祝ってないというか。

現地を見てる人のお話はとても勉強になります。
私の親戚に、ODAの仕事(輸出振興関連)をしていて年がら年中東南アジア諸国に行って現地の企業の役員や政府の役人と話している人がいるんですが、やっぱり帰国すると「日本の記事にはトンチンカンなのが多い」と嘆いていて、チャンスがあると色々教えてもらってます。
ブログに書いちゃう隊長の太っ腹に感謝。

ま、頑張りますね。

このエントリの補足という感じ。

http://workhorse.cocolog-nifty.com/blog/2009/05/post-bac7.html

もう外国人と触れ合う機会が無くなったのでそういう話がなんかとっても面白いでごわす

文化の問題でしょうか
日本のトップクラスの技術力を海外にも広めようとすれば自然と人材は集まると思います

あなたは、インドの方らかたくさんの広告費を頂いているのですか?
何故、インドの方のsuccess storyを宣伝して彼らのジョブクリエーションをしているのですか?
インドの方が多国籍企業幹部に多く採用されているのは聞いたことがなく、
ペプシは、インドの女性を経営者にしたことでダメな会社に変貌し、
City Bnak をダメにしたインドの人は、シンガポールに移民している。
グローバライゼーションは特別な人種だけが成功するわけではなく
国際競争の中では実力主義なので特定の人種を限定ではなく皆同じだと思います。

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    やまもといちろう

    ブロガー・投資家・イレギュラーズアンドパートナーズ代表取締役。
    著書に「ネットビジネスの終わり (Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など多数。

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