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2011.07.21

サラリーマンとビジネスマンの違い(雑感)

 また新しく会社をひとつ立ち上げることになりました。今回は久々に東京で。半年以上ぶりでしょうか。

 オフィスは新規事業への取り組みや旧事業から新事業への移行、新しい社員の受け入れなどでてんやわんやになっておりますが、採用や幹部社員などとの話し合いをしているとき、意外に忘れられがちなところに気づきましたんで、自己の備忘録的に書いておきます。酒を飲んでいるのと出張疲れがあるので乱文ご容赦。

 サラリーマンとビジネスマンの違い、と書くと、サラリーマンは駄目で、ビジネスマン万歳みたいなノリになりやすいのですけど、私はどちらが上とか下とか思っていません。雇われるにあたって、やはり人によって働き方や、力の出せる環境、マネジメントに違いがあると思うのです。

 教科書的なことに過ぎないものでも、それを行動様式に落とし込んだり、組織の中でハンドリングしていくには、やはり相当ブレークダウンしていかなければならず、受け取る側の考え方や能力によって、受け取れる指示の容量に違いがある、というだけのことなんじゃないかと感じています。結構ずっと前から。

● 会社は黒字を目指すもの、とは一言で言えども

 先進的な会社では、個人個人や、部署ごと、あるいはプロジェクトごとに損益計算書を管理しているケースがあります。私のところのグループでも、プロジェクトごとに損益計算は当然のことながらしています。

 実際に自分でP/L管理したことのある人であれば経験していると思うんですが、一番重いのって自分の人件費なんですよね。ああ、このプロジェクトのこの状態から利益を捻出できるようになるには自分の稼ぎを減らすのが一番楽だ、と思った人も多いんじゃないかと思います。

 会社はビジネスでありますが、ビジネスっていうと分かりにくいので、なるだけ商いという言い方をしてます。ソフト開発とかで商いっていうと勘違いされそうですけど。でも、基本は仕入れで、動く人があって、外注にモノを出して、品質管理をし、納期を守り、納品して検収してもらい、売上を振り込んでもらう。一連のビジネススキーム、というとかっこいいですけど、要するに商いです。商売です。

 その商売を、ひとつひとつ皆、持ち場を持って、会社全体で黒字にしていこうというのが基本的なビジネスの考え方であり、ビジネスマンを志そうという人は、やはり目の前の仕事の損得勘定やコスト意識というものを強く持って、なるだけ自分が関わった案件が無理なく黒字である状態をキープしていかなければならない。

 とはいえ、入社した会社が良いの悪いの、良い上司にあたるかどうか、会社はともかく業界がヤバイとか、いろんなジレンマがぶち当たるわけですけど、一番大きいのは利益を出しやすい事業を担当できるかどうか。赤字の仕事を割り当てられると、どんなに努力してもペイしないわけですね。商売にならない。

 また、いろんな部門が個別に最適を求めていったとき、会社としてのまとまりを持たせるための管理部門などのコストセンターをどうするのか、どういう風に各部門にそのコストを乗せるのかという話になります。また、厳密に会計を積み上げた経験が乏しいと、工数管理が面倒だとか、管理に追われて本来の仕事ができないといったクレームが湧き上がることもまた多いんです。

 でも、本来の商いというのは、本業で重要な部分はもちろんあるけど、それ以上に雑用があって、それをこなすための工数や費用を考えてなお黒字であることを目指すものでありまして、実際のところ商いでクリティカルな部分よりも雑用をいかに効率的に捌くかというのもまたマネージメントの必要な機能なんだろうと思います。教室の掃除当番的な、後ろ向きで直接カネにはならないことでもしっかりこなしていく手配が必要になってくるわけです。

● 経営的な視点でものを見る、と一言で言うが

 担当している事業でさえ、数値管理や納品スケジュールに追われて汲々としている場合が多いのに、複数の事業を抱えて、勘所だけ押さえて楽にマネージメントしている人というのも稀にいます。雑なだけの場合もあるけど。

 で、こういう効率よいマネージメントを自然と出来る人ってのが一定の割合で存在していまして、そういう人がビジネスマンの素質がある人と認識することが多いです。複数の事業の状態を横に並べてチェックして、儲かってるかトラブってるか、関わってる社員の残業の状態から取引先の顔色まで、複眼的に見ているのに定時で帰宅してしまうマネージャーがいたりするわけですね。

 実際のところ、この手の幹部に向いているかどうかは物凄く本人の資質、というか地頭の良し悪しや性格に帰着しているように思う。幹部になって、事業全体をハンドリングしてみたいと挙手する人が10人いたとして、人並み以上に頑張って普通に回せるようになる人は2人ぐらいじゃないかというのが体感でして。それ以外の人は、よほど良い仕事を回してもらわない限り、なかなか成功できないように思います。

 普通にIT業界で暮らしていて、そこそこイケてる会社を馬鹿みたいに高い値段で買うことがあるじゃないですか。ああいうのの大半は、会社そのものにもちろん価値はあるけど、それ以上にイケてる会社の経営陣や幹部が欲しい、ということで、プレミアムというか上積みをするケースが多いわけでね。実績を出したチームごと引き抜くというのも、同じように仕事を任せて成功させられる人材は本当に希少だ、という部分があるわけです。

 そこからさらに、経営的な視点を持てる人ってことになると、これは本人の努力だけでなく、様々な巡り合わせがないとなかなかそのポジションに至らないし、独立しても売上は低空飛行だろうし、結構な狭き門なんだろうと。会社が3年で大半潰れるというのも、向こう半年は見えてるけどじゃあ来年どうなってるか、三年後はどうか、という話になるとなかなか思い至らない、というのが背景にあると思うんです。

 分からないものを分かるようにするにはどうするかっていうんで、いろいろと成功哲学だの自分のロードマップ作りだのに取り組む人もいるんですけど、少なくとも自分の周囲にはケセラセラであんまり先のことを考えず、瞬発力のある思考をその場その場で繰り返しているうちに大きくなっちゃった、っていう能力と幸運を持ち合わせた人のほうが多いような気がします。私はどちらかというと計画立てたり何年後はこうしようとか緻密に考えてメモって思案してるほうだけど。っていうか、本当に何も考えずに経営して、それがうまくいってるって人を見ると純粋に嫉妬します。遊び回ってるようにしか見えないんだよなあ。

 そういうこともあって、サラリーマンがビジネスマンにシフトして、事業の損益計画背負って目標達成に向けて走り続けるというマネジメントに向いてない人、続かない人のほうが、きっと大多数なのだろうと思うようになりました。私自身、経営方針として社員や事業のマネージャーに売り上げ目標というものは立てさせません。むしろ、所定の予算なり人員なりの中で、どれだけうまく仕事に取り組めたのか、納期第一として、品質はどこまで積み上げられたか、次に繋がる資産はなんだったか、反省材料は何で、次回に生かすとしたらどの辺か、といった部分をとても重視しています。

 いろいろと仕事や子会社を任せていて思ったのは、サラリーマンの人たちに目標を押し付けてこなさせるというマネジメントは、短期的には成果が出やすいし方法論として楽なんだろうけれども、競争の源泉となる創意工夫が後回しになるんだなあということです。目標達成へのモチベーションが年を追うごとに磨耗していき、結果として疲弊した組織で新しいことに何一つ取り組めず、前からの方法論を踏襲するだけの会社になってしまって、肝心の商いが回らなくなっていくんだなあと感じたからですね。

 その意味では、ルーチンの仕事をしっかりこなして事業収益を上げている投資先のマネジメントは参考にしました。決して高い給料を払っているわけではないけれども、しっかり稼いで還元していくにあたって、少人数で必ず綿密なコミュニケーションを取り、工夫のための部会を開いてコストをかけているところがうまくいってまして。正直、あれは見習おうかと思ってます。

● 適材適所、と一口に言っても

 逆に、うまく行かなかった投資先や関係先の特徴というのははっきりしていて、同じような価値観で似たような能力を持っている人が集まって、会社として意欲的に取り組んでいこうというケースであります。RPGでいうと、戦士だけでパーティーを組んで、みんな経験値がありレベルが高いから大丈夫だろう的な発想でありますね。結構、そういう事例はゴロゴロしています。

 必然的に、バックアップに回るわけですけれども、バックアップを経験したことのない人たちからすると、それがどういう機能を果たしていて、どれだけ会社を回すのに必要なのかがなかなか見えにくいんですね。でも、誰かがやらなければならない。

 良く大企業などで、創業の経緯や事業構造で利益の出し方が偏るなどして、組織の中で士農工商が出来上がる場合があります。商いを進める上では、機能的に必要なものは一通り社内でもっておかねばならないのに、入社年次がどうだとか、どこそこ事業部出身だからとか、そういう理由で特定の部門がパワフルになって他の部門のモチベーションが下がってしまって商売に悪影響が及ぼされるとか。

 適材適所というのは難しいもので、その会社に勤めている誰が、どういう能力がありそうか、という目利きがまずどうしても必要になるんですけれども、実際これって相当大変なことです。私だって自信がありません。なので、誰がどの仕事に向いているのか、というのは経歴や話してみての性格を元に、仕事を任せて見ない限り分からないんです。任せてみて、ああ彼はラストチャンスだなとか、複数タスクを任せると手が止まる人だなとか、そういう見極めを一個一個して、本人と対話して、向き合っていくしかないんでしょうね。

 なので、ビジネスマンのように損益表をもてない人でも、どこかのスキルに特化して、そこを磨いてアピールするのがサラリーマンの生き残り方なのだろうと最近になって良く分かってきました。幹部になりたくない現場志向の人や、いまある業務の特定の作業が好きだという人の気持ちが、少しだけ、理解できるようになりました。

 そのぐらい、人の評価というのはむつかしいです。正直、見抜く自信はありません。うちの家内のほうがよほど人を見る目があるという(笑)。なので、見抜けなくても仕事を任せてみて、計画を立てさせたり、意識付けをしてみて行動の変化を感じ取ったり、商いというのはなるほどそういうことなのかなあと悩みつつも一歩一歩進んでいこうと思っています。



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Comments

細かく丁寧に書かれていて、twitterで煽り罵っている人と同じ人とはとても思えない、こともない、か

>サラリーマンの人たちに目標を~と感じたからですね。
経団連や政府に食い込めるなら労働法なんとかして!(切実)

いちろう殿が見る目無いとかいうと俺なんて目が無いな

ええ話やな。
会社が余裕がある時はできるんですが、きちきちになってくると目の前の邪魔者を切りたくなるんです。そうなると同質のひとだけ残って、更に悪化。
ま、みんなマージンを見て、余裕を持ってやりましょうということなんでしょうが。余裕が視えると、もっと利益を出したくなる。

人間の業は深いです。

刀鍛冶は才能ある人間が一生かかっても極意に到達できるかどうか分からんです。
でも戦国時代はそんなの関係なく終わっちゃったりします。サラリーマンも運ですな。

隊長をやめてなんか真摯になりましたね。
まー運は、適切なタイミングで適切な行動をとれるかどうかの積み重ねですよね。

隊長そろそろMBAの取得にでも行ったらどうです?

 いつも示唆に富んだ投稿に感銘を受けています。

 いちろう隊長の文調に、後進への眼差しを感じたりしています。先日の「我が国の新卒雇用」などにも。

 見えない努力や直感、運や資質、出会いも含めて、その人の人間力なんだと思います。要領の良い子も悪い子も含めて、「昨日の自分よりかは生きやすくなろう」と鳥瞰的に自分をプロデュースしてほしいです。

ああ「下山のしかた」に気持ちが向く時期にさしかかったようですね。これはこれで大切なことです。

最初タイトルみて思ったのが、「会社員の中にも自主的にいろいろやってのびていく人=ビジネスマン、上から言われただけのことをこなすので終了な人=サラリーマン、て区別かいな」とか思ったりもしたんだけどね。

 まぁ「ビジネスマン」という単語がいつどこから(アメリカか?日本の造語か?)出てきたのか知らないんだけど、「サラリーマン」てのは和製英語だからね。サラリーマンのなかには「月給貰うブルーカラー」と「月給貰うホワイトカラー」がいるとは思ってる。「月給制雇用の技術(職工と研究職含む)職と事務職(一般事務と研究職含む)」と言ってもいいかも。

 で、やっぱりそういう「ビジネスマン」と「サラリーマン」を見分けるのは、仕事ぶりをちゃんと観察しておくってことだと思う。それが労務管理・人事管理でもあるよね。そういう管理をしない会社は1つ間違うと人員配置を間違って業務に支障きたすと思うよ。隊長がいいたいのもそういうことだと思うけどさ。

 そこで問題は、労務管理なんてやる必要がないと思ってる管理職だったりするんだよな┐(´д`)┌。パートやアルバイトだって勤務意欲を高い位置で維持するためには、そういうところ目配りする必要があるとおもうんだけどね。

本当に賢い人はあなたの目を避けてるんです。
それをどうするかは経営者の手腕ですね

人間関係にエネルギーを使うのではなく、会社の目標を達成しようという大きな目標を立て、情報部門 経理部門 営業部門などに組み分けして 社内でネットワークを形成して管理していればよいのではないでしょうか

社会人ビジネススクールに行っても殆どの人は起業しません。欧米のMBAをとった教授陣にあおられるけど、いい会社に勤めていればいるほどやめるリスクが大きい。。。

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    やまもといちろう

    ブロガー・投資家・イレギュラーズアンドパートナーズ代表取締役。
    著書に「ネットビジネスの終わり (Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など多数。

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