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2011.05.27

【書評】『情報社会のいま あたらしい智民たちへ』(公文 俊平・著)ほか

 『情報社会のいま あたらしい智民たちへ』を一度読み終わって、なお二度読みをしているのには理由があります。それは本書が分かりにくいという意味ではありません。むしろ、Twitterやブログ、Facebookといったツールを普段使っている人であればなおさら、ここで語られている「文化変容」や、使っているツールの意味が、実は私たちの心の中にあって、その実在する変容を読み直しながら確認してみようという動機に繋がる、ということです。

 一口に「ソーシャル化」と言われても、それが何であるか認識の形態を持たなければ意味を持ち得ないのと同様、普段面白そうだから、便利だから使っているツールがここまで人としての行動様式や思考に影響を及ぼしていることを理解するのには、やはり時間がかかります。第三者的に、Twitterはこうなる、Facebookはどうなる、という話があったときにそれを理解するのは容易でも、そういったツールが私たち自身の利用によって意味を変容させ、具体的な事案にどこまで影響しているのかを分析されたときに、「被験者としての私たち」がどういう理解をしようとするのかは、まさしく本書が読み解こうとした裏テーマのように思います。

 サイバーアクティビストという特有の概念もそのひとつで、2ちゃんねるで煽られてお役所や加害者に電凸する人々も、Facebookを情報拠点として反政府デモに身を投じるアラブ人も、程度の本質からすると摂取した情報を咀嚼するだけでなく、また行動に繋がるだけでなく、さらに人の行動と人の行動とを結びつける有機的な作用をもたらす過程そのものがソーシャル化の態様でありえるとも言えます。

 情報の先鋭化と、それに伴うある種のクラスター化というのは、情報のシマとシマとの間を隔絶させかねないという分断もまた生むのかなあというところではありますが、本来の人間のコミュニティがマスによる洗礼を受ける前の原始的なあり方に回帰しつつあるという風にも考えられるでしょう。日本の情報化のいまは、日本人がソーシャル化によってどのような情報を受け取り、いかなる行動に結びつけ、さらにいろんな人へと波及させていく過程を再組成しているのだ、という点で極めて重要な論点であると思います。

 読む側の問題意識が深いほどに、またその世界への没頭度が高ければ高いほど、本書が持つオルタナティブな部分を際立たせます。というのも、読み返して「そういえば、私はどういう時間にTwitterを見て、どういうツイートに反応しやすかっただろうか? それにどういう意味があって、どんな影響を与えたと論じられていただろうか?」と気になる部分があったりするわけです。それは無意識に使っているツールであるが故に、そのツールが持つ社会的な意味を自分の行動そのものに紐付けて考えることに他ならないんで、読んであっそうという簡単な本では終わらないってことなんじゃないかと思いますね。

 この手のTwitter論などサイバーツールによるコミュニケーション論の嚆矢となったのは津田大介氏の『twitter社会論』であるが、出版から時間が経ってもなお、基本的なTwitterの世界観や私たちの生活への影響を考える上でのきっかけを与えてくれる良書になっています。

 いみじくも、津田さんが本書の中で「中毒性」という表現を用いているが、コミュニケーションの形というのは表現を日がなしていきたい人間であれば電話だろうがカフェだろうが必ず誰かと喋っており、そういうさまざまあるコミュニケーションの形をどう選別してTwitterが興隆したのかを考えるに、日本人(だけでなく世界中の人が)サイバー空間でどのようなコミュニケーションを取ることを是とし、求めてきたのかが良く理解できます。

 最後に、「キャリアアップのバカヤロー」という名著はどうしても取り上げたくなったので。そもそもキャリアアップってのは具体的になんだろうね、という根本的な話や、著者・常見陽平さんの身の上話といった、会社は基本的に変わっていくものであるいまの時代の仕事観をうまく言い表しているように思います。

 自己啓発の無意味さとか他人の痛さを笑いたい気持ちをぐっと堪えて、でもキャリアアップしたい人たちが目指すような会社経営に自分自身はしているだろうか、と振り返るとひょっとしたら笑われているのは私なんだろうなあと思って自嘲してしまうわけであります。社員の皆さま、大変申し訳ございません。

 人事やマネジメントをしなければならない人にとっては、読み口は軽いですけど結構考えるべきことは重い好著だと思います。自分のスキル向上をして社会や仕事に役立てたい、と思う前に、読むといいんじゃないかと思いますね。マジで。

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Comments

隊長も何気に横文字使うのが多いのに気がついた

愚民は見たことあるけどチミンなんて見たこと無いなぁ
知識人とかそんなのの言い換えただけでは??
電凸をサイバーアクティビスとと言い換えるのもどうかと思う。

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    やまもといちろう

    ブロガー・投資家・イレギュラーズアンドパートナーズ代表取締役。
    著書に「ネットビジネスの終わり (Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など多数。

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