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2010.07.21

神々の黄昏というか

 私は滅多に怒らないが、イラッとくるとつい過激な言葉が心の中に浮かぶことも多く、酒が入るとつい口をついて出てしまう。それでいいこともあったが、悪いことも一杯ある。これはお袋から出てへその緒を切られた瞬間からついて回っていることなので半ば諦めている。

 でも、どっちかっていうと理屈っぽく、その割に行動せずにぐずぐずしていることの少ない私としては、やらんで後悔するより、やって反省するという「他策なかりしを信ぜむと欲す」に陥りやすい。まあ、平たく言えば、大人しくしていれば時間が解決したかもしれないのに、何か手札があって山札も引けそうだとなると、強引にでも仕掛けておきたくなるわけだな。

 本業を回すにあたっても、やはり現場対応と将来を見据えることの両輪がなければ、生き残れないと考えている。別にあくせく働く必要もないのだが、どうせ生きているからには、精一杯何かに取り組んでいたいと強く思うので、過去を振り返るのは現場と一緒にやって反省しつつ、やはり次はこれだろうと思われる分野は極力ツバをつける以上の活動はやっておきたいと考える。株式を仕込んだり会社を買うというのも考えるし、何より何かを作っていたいので、いつでも手許に企画が幾種類かあるほうが私としては心地よい。

 自分自身の二本足で立つことが最大の美徳と考えていて、願わくば、取引先といえどおかしいと思うことは直接、おかしいと言えるほうが良い関係を続けられると思うし、それが誠実だと思っている。それで関係が壊れるのであればそれまでであるし、あとあとお互い頭が冷えて、あのときは言い過ぎた、やり過ぎた、すまなかったと折れられる状況になるほうがいいに決まっている。

 私は仕事でも私事でもとてもケチなので、払いが悪いと良く揉める。パフォーマンスが出ればちゃんと払うつもりはあるんだけど、何か動いてみないことにはやはりお金は出さない。実績がないから出さないのではなくて、将来を見据えてこういう試みを始めました、という意味での活動のことなのだが、昔ながらの実績を持つ人たちは、職人肌であったり親方気質なところを差し引いても「俺の名前で仕事を取っている」といつも思っている。しかし、それらの人たちがいまなお仕事があるのは、彼らの看板が輝いているからではなくて、彼らの看板の元に営業をするスタッフを含めた組織がいるからだ。彼らは必ずしも優秀ではないが、ただどこまでこの親分についていけば自分が喰えるか、ということは敏感に見ている。それが悪いというわけではなく、勤めるということはそういう意味なのだ。

 「俺の名前で」とか「会社のバリューで」とか言って仕事を進めるのは彼らの作法なのだから、それ自体を否定するつもりはない。それがうまくいくのであれば、彼らにとって最適な仕事の仕方なのだろう。

 しかし、私はあまり彼らの名前や、会社自体に関心はない。どういう将来の目論見があって、何の活動や試みをしていて、その仕事を完遂するのに幾ら支払う用意があるのかにしか興味がない。どんな素晴らしい仕事に従事できるか、いかにユーザーや顧客を感動させられるか、それを支える仕組みがいかに巧緻で優秀なスタッフを揃えられるのか、だ。他の同業他社ほど簡単に潰れる状況にはないが、安月給しか支払わないとはいえ、誇りを持てる仕事を社員に与えてやりたい、そしてうまくいったら沢山ボーナスを支払って報いたいと、経営者としての私は考えている。だから、仕事を選ぶ。

 良い仕事を選んで、より良いものになるために、私はたくさん提案する。発注元に、多くの判断を求める。そのほうが、良い未来が待っていると思うので、何もしないで他社にやられるよりは、先回りして必要な投資を行うように求める。この傾向は、実は社会人になってから私自身はあまり変わっていない。私どもを使い勝手が良いと思ってくれる良い取引先が良い取引先であり続けるならば、もっと良い提案ができるように社員のケツを叩く。疲れたんじゃないか、と言われるかもしれない。確かに徹夜はきつくなった。でも、こなしている仕事の量はより増えていると思う。いままで足も向けなかった国や都市の人たちと仕事をするようになった。財産や売上や利益が欲しくて動き回っているのではなく、混沌とした市場で日々何かをしていたいのだと最近強く思うようになった。

 なんかトラブルがあったり、揉めたり、ハードルが高いことに途中で気づいたり、思ってもいないろくでもないことが起きると、とても楽しい。とてもテンションが上がる。押したり引いたりしながら徐々に物事が解決され、分解され、整理されて、ちょっと前まででかい岩だったものが砕かれて石畳に納まって、後ろから来た奴らに踏み込まれるさまが好きだ。他人の面白くもない資金調達も良く分からない開発計画も、指揮者の目標さえブレなければ多少力不足のクルーだろうと時間が足りなかろうと、一定の水準のものを仕上げる自信が出てくる。そういう縁の下系の仕事が大好きだ。

 ところが、ある程度実績のある人々からすると、そういうのは良くないらしい。問題が解決して、期日通りに物事が丸く納まって、資金計画が順調に逝くほうがいいに決まってるじゃねーか。本格的なトラブルになったことも少ない。余計な仕事も減る。まあ、赤字脱却のために部門をクローズさせたり人をたくさん辞めさせるよう促すことはあるが。でも、そこで怒られてもねえ。

 昨日は昨日で、その「傭兵根性がけしからん」とか言われた。何だろうね。そういう傭兵に、戦場の重要なポジションを宛がわないと戦線が崩壊する指揮官のほうが問題なんじゃねーの。真面目にやって、それなりに成果を出せば出すほど腹の立つことが起きる。いやほんと、クソ真面目に頑張ってるぞ。文字通り寝ずに。

 まあ、それが楽しいんですけどね。傭兵根性だの業界ゴロだの文句言われながらもそこそこ結果を出すところが。頑張って日々一歩一歩足を前に出していきます。明日はどんな景色が見えるのだろう。

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Comments

ひろゆきとらじ@してた時に貴方を知りました。
今夜貴方の事をとても好きになりました。

お疲れ様ですっ。

こういうエントリがあるから日参をやめられん。

よき家庭のパートナーを見つけたように、仕事上のパートナーとか、あるいは好敵手がいるとか、なんじゃないの。

隊長はビジネス能力があるのに、埋もれているように見えるだけなのかもね。そのうち、ドっと世にでなければならなくなると思うよ。それに、まだ、若いんだし。気にせず、好きなようにやってくれ。

ただ、才能のある若い人だけは、関心を強くもってほしいぞ。なんの才能でもいいよ。自分の子供のように思えれば。

昨日は、スズメ蜂の巣を落すのに恐怖と苦労があったり、シンガポールの弟子から誕生日を祝ってもらったり。あと、なんかひきつける能力がアップしたのかな、蝶がたくさん飛んでいるし、ただ、スズメ蜂はもうこないでくれw。絶交した若いときの友人がFaceBook経由でコンタクトしてきたり、ま、復縁しようも、オレはできない暮らしだしさ。わかんないけど、集まってきていて、なんじゃこりゃって感じだ。ま、日本人は行動にでにくいからいいけど。外国人は着ちゃってから、今成田にいますとか言われそうで、スズメ蜂より恐ろしいかもw

で、だ、才能をみつけて、本人に自覚させることができれば、人が集まるのだよ。そういう年代には入ったと思うぞ。

これはいいエントリーだと思った。自分もこうありたい、と思える。

これはいいエントリーだと思った。自分もこうありたい、と思える。

奥様と喧嘩でもしたのか

お、告白場か?
ならついでに

随分前から貴方のことが好きです。
いつの日かボードゲームを一緒にやりたいです。

ヘル専ですな

あれを思い出しました。

効率の良い方法で仕事を終わらせる後輩を、
その仕事を今まで通りの方法でやる先輩が、
「そんなに簡単に終わらせるな」だったか、
「俺と同じ方法でなければ認めない」だったか、
とりあえず、そんなやっかみみたいな言いがかりをつけて叱りつける、
そんなどっかの書き込みを思い出しました。

てことで、やっかみを喰ったんだということで。

傭兵をやっかむ正規兵なんて、プライドの欠片も無いように思えて仕方ないです。
あったとしても、やっかみを覚えるようなプライドなんて、ウ○コです。

なんかしらんが、隊長も苦労してるというのはわかった。

まぁ暑いし、今夜はゆっくりとぬるま湯の風呂に浸かって気分良く寝なさい。暑いからきっとみんな苛々してるんだよ

どういうわけか、
「この戦いが終わったら、オレ、プロポーズするんだ」
という台詞を思い出しました。

お身体、ストレス、健康に気をつけて。

がんばれ。
傭兵根性上等じゃねーの。
そーゆーところが好きだよ。

傭兵根性!!!すげえいい言葉だ!!!
いくつになってもそれは失わずに働きたいね。

最近ふとって白髪がふえましたね。
隊長というよりはおやじという風体になられた隊長を今後も応援いたします。
おれもがんばろう。

マキアベリにいわせればそんなシャカリキにはたらく傭兵は傭兵じゃない。

隊長、泣けます。心から。。。

神々の黄昏~
なるほどねー。
神になることが人間の最後の欲求の1つだからなあ。
必要悪だと自覚し、その次のステップにいけないところらへんが人間の限界なんでしょうかねー。

ま、黄昏も一時の休息ならいいですが、終わりとかあきらめっていうイメージがあっていやだなあw

これ、なぜ神黄なのかな・・だけが解せなかったです。

シビれた。
これはぐっとくる!

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    やまもといちろう

    ブロガー・投資家・イレギュラーズアンドパートナーズ代表取締役。
    著書に「ネットビジネスの終わり (Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など多数。

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