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2010.04.23

士農工商犬SFウェブ媒体電子出版

 電子出版の衝撃は、書き手も出版社も(少なくともしばらくは)儲からない、ってことに尽きると思うんだ。

 この前、自称三流ライターのおじさんが、大手ニュースサイトで手の込んだ記事が一本3,000円と言っていた。それで喰えるの? で、喰うために、取材のない日は10本とか書くんだと。別のおっさんも同じようなことを言っていたので、原稿用紙一枚の原稿料という観点でいえば、明らかにSF作家を下回る。

 野良でも自分で餌場を探しにいける犬よりもライターは劣る状況なのは間違いない。

 で、衝撃なのは電子出版。電子書籍アプリとかの動向を見ていると、売上的にはゴミ。数百円のアプリが数百個売れておしまいって例が続出していて、アプリ化のための費用とか考えると普通に赤字。iPadとかkindleとか騒いでる必要性すら感じないぐらいの状況であって、こっちが衝撃受けるわ。

 だから、電子出版というプラットフォームが出てきたから即書き手が流出すると考えるのは間違いだし、いま盛り上がっているからといって、取り急ぎ飛びつくのも良くないことだと思う。熱くなりすぎず、冷めすぎてもいない、微妙なところを小脇に算盤抱えて観察するのが一番いいのかなあと。

 ついでにいうと、電子出版で某大手広告代理店と、某電子書籍関連ソフトのベンチャーとがやってるあれ、機能だけなら500万で作れます。なんで売上ロイヤリティの話が出たり、導入に何千万もかかったりするのか私には理解できない。むしろ、いろんなプラットフォームに対応しようとか、出版社インハウスでアプリ立ち上げまでやれるようにしようとか、既に大量に資産化しているPDFがあるのでDTPから直接アプリ化させようとか、ユーザーにかっちょいいGUI提供しようとか、そっちにコストがかかってきてる感じ。

 結局、顧客目線でいいものをタイムリーに出すしか成功する方法はないんだってことだと思うんですよ。
 ただ、その顧客目線てのはiPadをいち早く手に入れようとしたり、iPhoneを毎日触ってtwitterでなうなう言ってる人を基準にしちゃ駄目で、毎月デジタルコンテンツに数千円以上使って自室で楽しんでるような人とか、限定的な機能でも友達とあれこれしたい人とかがメイン層だってことは、IT業界が忘れがちなところでね。

 あとは、先行者利益をどこが得るのか、という話です。もちろん、遅れたってたいした影響ないですよ、エロ漫画でアホほど儲けてるって会社でもない限り。


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Comments

筒井御大ですな。懐かしい
某DV井上が亡くなられ、茫然自失という記事は意外だった

個人的には、「ハルヒ」とかのラノベを電子書籍化したらその筋には売れるんちゃうかと。
幻冬舎のウェブ漫画雑誌はどうなんすかね。地味な話ばっか掲載してるからいまいちウェブマネー決済までいかないんだけど。

第7パラグラフから第6に戻って、作り手目線でクソなものだということを理解しました。

顧客の立場からすると普通に電子書籍を文庫本と同じ値段で売ってくれれば問題ないんだけどなー
iTunesでの音楽と同じくらいのDRMのとり回しの良さが条件だけど

これなら「出版社は」今まで通り、もしくはそれ以上の利益は出せそうなのに
それができない出版社なんてイラナイと思う

池田信夫男が激しく1ゲット!

一時期のロボットアニメのように、「本編が丸々おもちゃの広告」的なものばかり生き残る世界になるのかしらん。

ハルヒは電子書籍化してるぞ、楽天ダウンロードで買えるだろ
http://dl.rakuten.co.jp/attr/92255381/da30_1.html

IT化しても結局中抜き業者になりたがる奴ばかりでガックリ
コンテンツはクラウドだからそこらで湧いて来るんだそうだ
MBAのいうビジネスって中国の役人の賄賂と何が違うの?

そういうもんなんだ。やっぱりIT業界は野垂れ死にだな。

IT職人には職人としての美意識があって、おそらく一般人に理解できないものです。それは書籍にかかわる職人も同じ血かと。そこに妙に生臭い人間たちが入ってくると「そういうこと」になるわけです。
iPhoneにアプリを提供して飯を食えるというのが正しいかどうかはおいておいて、彼らもIT職人なわけで少額直接決済の方法を持たず、それを握られている以上搾取され続ける構造は確かに文筆家と類型化できると思います。
ソースコードも著作物ですし。

というか電子書籍っていうとみんなキンドルとかiPadだなんて話になるけど、
ケータイでの書籍配信という点ではアメリカとか比較にならんレベルで(ほとんど漫画だし、一番売れてんのはレディコミだけど)コンテンツも出回ってるんだけどな。

電子書籍が「既存書籍をデジタルハード用にコンバートするだけ」な紙のおこぼれであるうちはどうにもならんよ。

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    やまもといちろう

    ブロガー・投資家・イレギュラーズアンドパートナーズ代表取締役。
    著書に「ネットビジネスの終わり (Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など多数。

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