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2009.10.13

中国でのネットゲーム参入規制予告について

 中国ではネットゲームも報道の一種ということで、統制による秩序回復が必要だという話になったようです。

中国、ネットゲーム運営への外資参入を禁止
http://www.asahi.com/international/jinmin/TKY200910100212.html

 まあ、普通に考えてもサービスの保護主義的政策であり、どういう形であっても日本の業界団体やネトゲ関連の事業者は政府に働きかけて対抗策を講じるよう求めるのが本来の考え方なんでしょう。だけど、民主党の言う成熟した産業ではないネトゲ業界や広く見たゲーム業界はあまり外交的アクションを政治に求めるという行動様式がないので、そのまま「やられ損」になってしまう可能性は高いんでしょうね。

 平たく言うならば、中国でコンテンツビジネスをするにあたって我が国は映画や音楽、コンソール機向けゲームなどあらゆる複製可能メディアでは海賊され放題であり、プロパテント政策を推進するはずの知財関連部門が政府になくて民間の対応にすべてが委ねられてきました。そういう複製が文化になっている国でコンテンツで売上を遺漏なく集める有力な方法のひとつがネットワークを利用したサービス課金であり、ケータイに紐付けたりウェブサービスとして実施したりというビジネスにおいては日本には一日の長があるということで多くの合弁会社が作られ、たくさんのサービスが立ち上がってきたわけですね。

 まあ、いろんな問題はありつつもそれなりに利益を上げつつある状況になったのですが、中国政府というよりもそれらネトゲ事業者を束ねる有力者が中国政府に働きかけるなどして、日本に限らず全体的な外資のパージを行って利益を独占したいという流れになっていたのでしょう。そして、今回の通達の通り、今回の規制は遠からず実施されるし見せしめとなる事業者も出ることと思われます。

 明らかにフェアではないのだけれども、事態は明らかにコンテンツ事業の一分野における経済戦争そのものであって、日本は仕掛けられている立場にいるんだけれども民間で対応する、政府には頼らない、という流れが完全に出来上がっちゃっているのもあって、たぶん日本が中国で得ていたこれらの商圏は完全に失われることになるのでしょう。それで儲かっているのは日本のゲームメーカーの一部であったとしても、ソフトウェアの製造委託以外で中国でのコンテンツビジネスに取り組んで儲かっている企業は他にありますでしょうか。

 いますぐどうにかしろ、という必要はないのですが、通達の内容や履行状況を良く見極めたうえで政治的な対応を求められた場合に日本に何ができるのか、いま一度良く考えるべきだろうと思います。そうでなくとも、クールジャパンとかコンテンツ業界のビジネスの部分に喰らいついていた人たちはたくさんおったわけで、あのころ日本のゲームやアニメは世界に通用するとか喚いていた人たちはいったいどこに消えたのか、正直追跡取材をしたいなあとまで思うところであります。ぜひ、意見を訊いてみたい。


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Comments

さすが支那人はガチだなぁ。
と言うか、そんな事してたら長期的に激しくマイナスだと思うんですが、人口の力で押し切っちゃうつもりなんでしょうか?

オープンな市場でなければ中国と手を組んでも意味がない。一方的に取られるだけじゃねえ。今後こうしたことがいろいろな分野で起こってくると予想すればあんまり中国に深入りしないほうがいいんじゃないの

コンテンツ保護なんてシナにとっては二の次三の次に過ぎませんよ。
つーか、そもそもやつらはコンテンツとか著作権なんて概念自体理解できてません。
とにかく自由な情報を徹底的に統制することが今のシナ政府の最大の目的です。
海外の業者が独自の暗号化プロトコルで海外のサーバを使ってゲームを運営すると、全く検閲できなくなってしまうという事態を恐れてるんですよ。

ルートサーバである金盾の検閲機能強化とか、ネットワーク機器の暗号化ソース公開とか、検閲ソフトグリーンダムの強制とか、全て偏執的なまでの情報統制への欲望の発露ですよ。
秦の始皇帝の焚書以降、シナは何も変わってないということです。

そもそも、中国では暗号利用はとてもうざい手続きをして許可をもらわないと(ry

アニメしかり、中国移動しかり、まずは囲い込んで国内市場を利権化して近づいてきたところから技術をパクるわけでして。
ノウハウ構築して、ある程度固まったら形だけ市場開放したような形をつくるも利権だらけなんてことをやろうとしているんではないかと思ってみたりと。

日本からどうこうもそうだけど、中国国内の既存のネトゲ関連会社って現時点で外資入ってないのかと子一時間問い詰めたいわけですが…

要約:プラットフォームの運営は必ず中国企業でなければならない、投資は受け入れても好いが、経営に口出しさせてはならない。

理由:海外コンテンツ屋がプラットフォームを掌握すれば、必ずコンテンツ使用料を引き上げ、中国人民に(西側の考える)正当な料金を払って著作権物を消費する習慣を植え付けようとするに決まっているから。そんなことは許さない。それだったら紙、火薬、羅針盤の発明料を払え! ディズニー、ハリウッド、日本のゲーム屋が、著作権料という名目で中国人民から収奪することは許さない、とそういうことです。

党中央からするとネットゲーなんて物は、アヘンまではいかないが、茶葉よりはアヘンに近いと思ってるかも。古代中国の王朝は、まずチベット人にお茶を飲む習慣を植え付けた後で、茶葉(=チベットでは栽培不可能)の輸出価格をコントロールして当時強勢を誇ったチベット(吐蕃)を弱体化するという、古代の常識からすると相当高度な外交をやりました。中国側からすると、海外のコンテンツホルダーはそれと同じ事を中国に対してやろうとしているとしか思えないのでしょう。

外資が中国のPCネットゲー配信プラットフォームインフラを握っている企業に投資して、上場利益や配当で儲けることは問題ないのです。問題は、プラットフォーム運営の一番根っこに西洋の価値観を注入するな、ということです。……なぜならネットゲーは党から見たら「言論」分野だからです。

海外のゲームメーカーがPCネットゲー配信プラットフォームに関するビジネスモデルの画を描くなんていうのは、中宣局からみたら、外国政府が中国の選挙制度のグランドデザインをするのに近いイメージなんじゃないかな。

日本のゲーム屋経営陣やビジネス関係者は「俺たちは政治に興味ないしアンチ共産党でもない。なのにどうしてそんな堅いこというの? 一緒に金儲けしましょうよ」と考えているだけなのでしょうが、ちょっとイデオロギーに対する想像力が欠けているような気がしますね。その人たちも自分が明治の元勲だったら、この点に関してはきっと中国政府と同じ政策を取ると思うんですけどね。水野成夫(故人)や堤清二みたいな、共産党に在籍したことのある経営者ならこれがピンと来るのかも。

中国で外国出版物の輸入ができるのは「中国図書輸出入有限公司」だけです。これと同じような官製会社を一つ作って、海外からのデジタルコンテンツの仕入れとICP(つまり第九城市や盛大や新浪等々)への卸はその会社が独占する。決済事務は国際常識レベルで几帳面にやる。(この会社を通して輸入したタイトルにかぎり)海賊版の摘発もきちんとやる。この方法しかないでしょう。そのうちそうなる気がしますね。海外のコンテンツホルダーにとってもその方が助かるような気がします。独自の摘発Gメン組織を持ったりして。なんか東インド会社の逆バージョン?

連投スマン。ところでたとえばチャイナモバイルは携帯コンテンツに関しては最初から前段のような専売公社的存在でありたいと希求してるわけですよ。だから新浪、TOM等の国内認定SPは全部飾りと考えているフシがある。キャリア、ポータルサイト、プロバイダをほぼ独占するのはチャイナモバイルの悲願であり、競合他社が「存在してもいい」けど、共産党対人民政協くらいの比率で「あってもいいよ」というイメージでしょう。

実際のところSPがちょっと新規ビジネスモデルをやろうとするとチャイナモバイルはSP規約の解釈を変更してでも本気で潰しにくるそうですよ。だから市場内の競争においては自由主義というか、外資かどうか区別してないともいえる。同じ中国人に対してであろうが容赦ない。

ともあれ中国国内のPCネトゲー配信インフラに関しては今まで携帯におけるチャイナモバイルのような巨人がいなかったわけだけど、これは中国政府にとってむしろ管理しにくいです。だからこれからそういうものいくつか作る方向に行くのでは?と思ってオチしてます。

中国政府が「国産コンテンツ保護」をこの記事のような政策の理由にあげる場合がありますが、そういうのはまったくのブラフです。現状では海外製ゲームが中国市場を席巻していますが中国当局は全く気にしていません。運営サービス(つまりコンテンツホルダーへの還元率)を民族資本が掌握してるからです。

中国のネットゲーなり携帯コンテンツの市場は、日本でいえば公営ギャンブルのようなものです。外国人馬主は馬をレースに出すことができます。しかし外国企業が勝手に競馬団体を新しく作って勝手に還元率や馬券購入方法を設定することはできませんよね、それと同じです。

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    やまもといちろう

    ブロガー・投資家・イレギュラーズアンドパートナーズ代表取締役。
    著書に「ネットビジネスの終わり (Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など多数。

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