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2009.09.10

海堂尊氏が東大教授に名誉毀損で提訴されたらしい

 なんかゴシッピーな展開になってきたので、興味深く読んだ。

「バチスタ」の海堂尊氏を名誉棄損で提訴 「Ai診断」で東大教授
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/090909/trl0909090828002-n1.htm

 元のブログ、日経メディカル内にあったので、家内のアカウントで読みましたが、元ネタになっていた論文を見ると、海堂尊氏の主張は微妙です。本来は「 まあ、Ai診断は完璧ではないけど患者家族も拒否しないであろうし、CTさえあればだいたいどこの病院でもやろうと思えばできるのだから、死因が分からんまま放置ってよりいいだろ」というレベルの話ですよね…。

厚生労働省科学研究費補助金研究事業(地域医療基盤開発推進研究事業)
http://pathol.umin.ac.jp/sigo/H20/1-25.pdf

 当の厚生労働省の人々が言うには、そもそも海堂尊氏がなぜ、深山教授をあそこまで誹謗するに至ったかが良く分からないとのこと。

 間接的に聴いた限り、もともと、海堂尊氏はAi診断をライフワークで研究しており、千葉大はその分野では進んでいたとのこと。それを東京大学教授に研究助成金ごと「持っていかれた」と海堂尊氏が思っているのではないか、というお話のよう。深山教授は必ずしもこの方面のエキスパートではないから、「横取り」されたと憤慨されたと解釈されるネタらしいです。でも、先にあげた研究事業の報告書自体は、彼からして100点満点の内容ではないかもしれないけど、委託研究としては充分なものなんだそうで。

 問題意識としては、海堂尊氏のそれが正しいとも間違っているとも言えず、ただCTで遺体を診断することそのものは必ずしも正確を担保するものではない、と。全然その方面は知見がないので、私の理解が正確かどうかもありますが、確かに報告書やCTの技術的なもんをいろいろ読んでみたらAi診断は欧米でも死後解剖を行う場合の補助的な手法として紹介されておるのを読みました。

 これって、そもそも医者不足で監察医務院などに医師が充分回らず、結果として検死や死因解明をするマンパワーが恒常的に不足している、という医療業界の「症状」に過ぎなかろう、と第三者的には思います。Ai診断の重要度そのものを否定するわけではないけれども、深山正久教授にブログやネット記事で罵声を浴びせるのはお門違いのようにも感じますし、どうせやるなら論文で反論しろ、と考えてしまいますね。

 …と書いていたら、親切な人から海堂尊氏の論文というか研究発表のダイジェストを頂戴しましたが、まあざっくりいうと「死因の追求をしっかりやりましょう、解剖が困難な場合でもAi診断すれば死因が分かることもあるので」的な内容なので、かえって何でこんなに揉めてるのかますます分からなくなりました(笑)。

病理学会理事に立候補しました!
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/blog/kaidou/200908/512040.html

 まあ、どっちにせよ反論できない出版社サイトで一方的に誹謗すればそりゃ裁判になるよな、という世間一般の議論に落ち着く、ということで。医学的な優劣についての判断はつきませんが、出版社サイトでやっちまったことを考えると、深山教授のほうに分があるように感じました。

 ちなみに、家内は「バチスタの栄光」を読んでの感想は「普通に面白かった」そうです(笑)。


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Comments

何故こんな社会派ネタをw
じっさい、精度では画像は病理にかなわないってのは事実だと思うよ。
基本的には、病理解剖を増やせるように病理医育成しないと。
病理にかなわないと言われながら読影するのは嫌だけどな。

そもそも保険点数の設定がおかしいんだもん。
真面目にやるほどきつくなっていくのは間違いない。

あ、この件か。
江澤さんが何年もちょっかいを出して、怪文書も出してたから、腹に据えかねたというのが真相だろ。
Aiをまともに臨床でやってる奴らからすると、有効なのはもう良く分かっているけど、手が回らないってだけなんだよね。
だから、医者の絶対量不足という隊長の話は本質的。

医師不足も深刻だけどさ。
数ばかり多くてマトモな歯医者が近所に皆無なんだけど、なんとかならないかな。

千葉大学のAiの先生も協力しているんですけどね

>研究分担者:
>山本正二 千葉大学医学部放射線科講師
http://pathol.umin.ac.jp/sigo/H20/1-25.pdf

もっとも、海堂先生に言わせれば、先生のアドバイスに従って分担者を入れ替えたそうですが。

>厚生労働省の人々が言うには、そもそも海堂尊氏が
>なぜ、深山教授をあそこまで誹謗するに至ったかが
>良く分からないとのこと

怒りの源泉は、無視されたという思いではないでしょうか。

>病理学会理事会上層部はAiの厚生労働省科学研究費の
>研究班を立ち上げる際、概念提唱者の私を無視しました。
http://tkj.jp/kaidou/news25.html

Aiの研究をされる方は、海堂先生に一言挨拶する必要があるという事なのでしょう。

なお、私見では、海堂先生は敵を作りやすい方だと思います。千葉大の岩瀬先生とも日経メディカル上でガチバトルを行っていましたね。

権威と権力(コネ)で横取りして無効化して潰すのなんて、上位ステークホルダーにとって当たり前の戦術じゃないんですか?
おまんま食い上げになるような新技術など不要! とばかりに。
権威(これまでの実績と経験)による裏打ちで「実用に足らない」なんてレッテル貼ったらウチの国では割と終了ですが何か。
医療、厚生労働関連ではそーゆーのが横行しているように思ったり。
ああ、丸山ワクチンのことじゃありませんよ電脳硬化症とか関係ないですから。

権威と権力(コネ)で横取りして無効化して潰すのなんて、上位ステークホルダーにとって当たり前の戦術じゃないんですか?
おまんま食い上げになるような新技術など不要! とばかりに。
権威(これまでの実績と経験)による裏打ちで「実用に足らない」なんてレッテル貼ったらウチの国では割と終了ですが何か。
医療、厚生労働関連ではそーゆーのが横行しているように思ったり。
ああ、丸山ワクチンのことじゃありませんよ電脳硬化症とか関係ないですから。

TVドラマの視聴率と連動した報酬とか?

釣り師っぽい話題だから載せたのかもしれないけど。

私は海堂尊氏って単なる「釣り師」(アクセス数にエンジンかけるため?w)で投入されてるのか?と思ってました。そんなに日経メディカル自体も需要が多いとは思えないし・・・・、TBSのニュースでやった時点でそんなことテレビでやるレベルの話題なのか?とも思ったんだけどね。

死因がよくわからない人は年間10万単位でいる。
Aiでざくっと死因をさぐれば
年間5000件ぐらいしかできない解剖に比べて
死因不明の6割ぐらいはわかるんじゃねーの?
というのが海堂先生の言い分。

だから、東大のセンセにまったく分はない。


>死因がよくわからない人は年間10万単位でいる。

これは事実だからいいとして、

>年間5000件ぐらいしかできない解剖に比べて
>死因不明の6割ぐらいはわかるんじゃねーの?

読影してAiで六割も死因解明できるなんて、どこのヤブ病理医でも言わない。

そういうことを分からない人相手に平気で言うから千葉大にも居られなくなって飛ばされるんじゃないかと。

ついでに、海道某が訴えられたのは名誉毀損であって、医学技法や対処に関する議論ですらないから。

医学的見地で争いたいなら、論文や委員会、学会でやるべき。何で日経BPのブログでやってんのかがまず意味不明なんだよね。

深山先生とは随分長いこと対立していたようだし、海道某は手柄を横取りと本気で思っているようだから、この裁判沙汰をきっかけに少し真面目に議論できるようになればいいんだが。

人の研究をブログで批判するのは、誹謗中傷にあたるのでしょうか??
ブログで政策批判する人とか普通にいるでしょう?
教授はやりすぎですよ。

海堂氏は、AI(抵抗感低い)は全ての死体に適用して、それでもわからなければ、解剖(嫌がる人多い)しようぜっ、て主張ですよね?著作でも解剖が一番死因究明に優れていると認めてますし。それに、AIを解剖と併用すれば、死体の損壊を少なく抑えられる、ともおっしゃってました。

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    やまもといちろう

    ブロガー・投資家・イレギュラーズアンドパートナーズ代表取締役。
    著書に「ネットビジネスの終わり (Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など多数。

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