と、煽動的なタイトルにしてもしょうがないのだが。まあ、ヲタの世界から見れば批判を受けるのは致し方ないですしね。言葉足らずで済みませんでした、とかしおらしいことを最初に書いておく。
http://d.hatena.ne.jp/sirouto2/20070928/p2
「切込隊長の「ツンデレって、ようは悪女」というのを見て「なんだこりゃ」と思います」というのは、ヲタから見れば間違いなく「なんだこりゃ」になると思います。ヲタが記号化した萌えの対象としての女性は、たぶんあまり存在しませんからね… 例示されてる悪女候補も何故だかルパン三世の峰不二子になってます。なんでだ。それも虚構なんですが… まあいいけど。
当然、ありふれた論拠として「女性経験が不足しているヲタが脳内補完した女性像の記号がツンデレに過ぎんわけだろ」というのを前回は例示したわけですけど、精神的現実なんてものは我々は常に直面しています。男女関係だけじゃなく、上司部下だったり発注元受注側だったり、人間関係が介在する限り必ず「人間、必ずしも言いたいことをすべて言えるわけではなく、表現もできない」わけですね。だから葛藤がある。好きだという気持ちを率直に表現できないから男性に厳しく当たる表現が総じてツンですよというのはヲタの文脈で成立してるだけのもんです。
一般的には、劇作品など映像表現では俳優の演技を中心に表情や仕草で観る者に伝えようとします。そりゃあ通俗的かもしれないが、女性が男性に思いを伝えられないが故に厳しい態度で当たる行為、そのなかでふとした優しさを見せる行為の落差でヲタが萌えだツンデレだと言ってるのは、演劇なんかでは兼ねてから議論されてきた悪女的表現に分類されますなそうですなという話です。この書き手の中では悪女=目的を持って性的誘惑を積極的に行う女性というような読み取り方になっとるようですが、基本的には本心を知っていながらこれを隠し男性と駆け引きをしようとするような女性のことです。たぶんそのあたりでズレたのだなと思いますが、これもまあいいや。なので、私が言いたいのは「悪女的表現⊇ツンデレ」です。プリティウーマンでも観りゃ分かるかもしれません。
だから、ヲタがそのような女性表現を切り出してツンデレと言って盛り上がっているのは、逆に演劇とかを仕事でやってる人たちからするとやや使い古された通俗的な表現の一部にしか見えないと言うし、ただ私らは「それは”商品”なんだから、それをありがたがるヲタがいる以上、それで飯を喰おうとする企業やクリエイターがいるのは当然」という議論になります。ああ、話がどんどんズレていく… まあいいや。
逆に、ヲタがヲタの中で盛り上がって、世界のヲタが共通認識しかねないヲタの中では品質の高い表現が、いざ一般人の中で評価してみると一顧だにされないという現象も起きうるわけです。正直、頭の痛い問題なんだそうですけどね。だから、ヲタマーケットの中で喰ってる人がヲタが作る生簀から出たとき意外に評価されない場合もままあるというのは、現象としては一般化しうる話かと。
だから夕方の時間帯で子供向けアニメを放送する地上波枠がなくなって、年代横断で楽しむアニメがなくなりつつある現状ってのが到来するわけですけど、まああくまでこれらはマーケット側の視点ですね。
あと、たけくまさんが代理店のことをエントリーしてました。かねてから問題視される、手塚治虫以降のアニメ産業の体質的課題そのものっスね。
http://takekuma.cocolog-nifty.com/blog/2007/09/post_6661.html
昔、『投資情報のカラクリ』という本でアニメ業界の体質的課題について私も論述したんですけど、現在もあまり解決はしていません。アニメに限らず、コンテンツファンドという水物の世界では致し方ない話ではあるんですが。
唯一、たけくまさんの問題意識に一石を投じるのであれば、仮にスポンサーが支払った5,000万、アニメの制作にかけられるのが800万という構造については、
そ れ は 地 上 波 波 料 & 広 告 費 用 を 含 む ん だ ぜ
という話です。彼らはテレビに広告を出すのに5,000万を支払っているのであって、アニメを制作するのに5,000万を払っているわけではありません。夕方の時間帯に1クールの地上波広告(テレビCF)を出すために3,000万払ってるわけで、別に広告主はアニメそのものの作り込みだけを求めてお金を出しているわけではない以上、経済産業省らが問題の所在を指摘する資料を作って「コンテンツ立国だ」といってもお門違いな部分は多少なりともあるような気はします。波料下げろというなら話は分かるけど、それは放送行政であって管轄は総務省放送村ですからな。経産省が何言っても無駄無駄無駄無駄。
もっとも、そもそも夕方や深夜の時間帯がアニメで「埋め」する編成になっているのは、コンテンツのバラエティリティを確保することだけじゃなくて、アニメが相対的に制作費が安いから、というのもあります。アニメ製作者で「うちらは安い給料で使われている」という考えを持つ人が多いのも事実で、同情もするんですけど、じゃあ二倍なり三倍の制作費を投じてペイするアニメがあるのかと問われると「……」という話になります。
いや、別にフルCGアニメの劇場作品の数字が芳しくないというので愚痴のひとつも言わせてくださいよ的な話もないわけじゃないんでしょうけどね。でも、ヲタにターゲットを絞ったヲタアニメは本数が大量に出ている割に採算が合わないのでよりコストを切り詰める方向にこそ逝くけど制作費を上げてクオリティを確保する方向には絶対ならないだろうということだけは言えると思います。だって単価倍にしてもアニメのクオリティは必ずしも上がらないでしょう、という… いやいや。
あと気になってたのは、おっさんの記事…。
http://d.hatena.ne.jp/otokinoki/20070918/1190098668
「エンダーのゲーム」について。ああ、アメリカの出版事情については私は何も知りません… 興味があったのはSF大会では何かいつになく緊張感のある話し合いがあったらしいと人づてに聞いていた件について。私はSF者ではないので微妙なんですけどね、ただ、世界的に売れるコンテンツを企画しようという話になると、日本型の現実を描いた社会派やラブストーリーは駄目、ファンタジーは日本固有のものだと駄目、ということになると必然的に近未来系の素材じゃないと売れないんじゃないかという話になりやすいってのがあると思います。
だから、日本人作家のSFにイメージビジュアルをくっつけただけの企画書が乱舞する傾向にあるんですが、果たして本当にそんなので回収できるんでしょうか。誰か助けて。
(追記 19:40)
触れようと思っていたのを忘れていた。ARTIFACTの記事。
http://d.hatena.ne.jp/kanose/20070928/deathnoteinvestment
まあ、一般的に言うならコンテンツを買って地上波に流すのも業務の中の投資であって、それらをオフバランスするためにコンテンツ会計やファンド(LLC、LLPや民法組合など)を使ってどうにかしようというのもあります。
ただ、これらは投資収益を狙って一攫千金をというよりは、NTTドコモの偉い人が戦略的にコンテンツを携帯やオンラインに地上波から移行させていこうという際に、地上波各社といかに協力体制を構築していくかという別の意図があるように見受けられます。
原則、社内で手がけるのは小さく産んで大きく育てる方式の多産型企画ですが、他社と協業してやっていく場合は将来金になるかもしれない事業分野を予め資金面で紐付けしておくという別の行動様式に縛られることになるのです。
だから、(北斗の件は知らんが)コンテンツファンドが儲かるか儲からないかを判断する場合には最終的な投資効果や投資収益だけを見るのではなくて、メインプレイヤーが誰で、そこが戦略的に映像作品をどう自社事業に将来巻き込んでいこうとしているのかを考えなければならないのではないかと思うわけです。
ドコモに関していうならば、従来は電通とかCAモバイルというようなレイヤーとの協業が目立っていたのが、最近は角川ホールディングスほか「インフラの上物」にもしっかり手を伸ばしていっている印象で、NTT-X(古っ)とかで思ったようにできなかった機動的な投資事業がファンドなどを駆使することで随分小器用にやるようになったなあという風に感じます。
コンテンツファンドに関しては、いま雨後のたけのこのようにアホほど乱立していますけど、投資収益だけで見るならやはりどこも苦戦しています。収益がきっちり上がるんならゲフンゲフンな上場各社がああいうことになってないと思います。