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2007.06.30

王監督の外見がどんどん宮沢喜一化している件について

 さっきネット中継で王監督がチラ映りしてて、どうみても宮沢喜一だったので。どうでもいいですかそうですか。ノーアウト二三塁で無得点というナイスなホークスですが、松中はいい加減、髪を振り乱して結果を出して欲しいところですね。


 ところで、いつになく何か不思議なアクセスが大量に来た前回の故・宮沢喜一氏に関するエントリーだったんですが、財務省から何故かたくさん訪問者が。財務省の人見てる? イエーイ。


 いろんな反響を見てたんですが、賛否両論というよりは、ある程度その方面のリアルタイムな業績を知悉している人ほど宮沢氏の生前を惜しみ、私のようなそれ爾後の世代からはブーイングされているのが特徴的でありました。


 リンクを貼ると、こっちから腐海の蟲たちが流れ込んでしまうのでやめておくけど、私自身は御厨せんせの『ニヒリズムの宰相小泉純一郎論』や『「保守」の終わり』などの論考を理解はするけど(現実に直面して処理する人間として)価値観を共有するかどうか微妙。「戦後日本の参謀、知性派、知米派、海洋国家(シーパワー)日本の現実を認識し、その上で、軸がぶれることなく、政界、世論のバランスを図るリベラリスト」だとするなら、文中指摘する「総理としては、バブルの崩壊、再建、スキャンダル、解散、敗北とその手腕を発揮することなく、環境構造の不運に見舞われた」というのは個人的に「そういうときのための知日派でありシーパワー論標榜者だったのではないか」と思う。


 言うなら、そのような知見を持っていたのは当然として、日本がそのような人材を政府に確保している僥倖があったのも事実として、さらに様々な経緯を経て、そのようなスキルを持っている人が、まさに必要とされる時期に宰相となった。高度成長を終えて、成熟した資本主義国のひとつとして国際社会に対してどのような立ち居振る舞いをするべきなのか、日本がギアチェンジをするべきとき、まさにそれに相応しい(と思われた)人物が宮沢氏だったのだろうと思う。


 といって、いわゆる「保守本流」の議論を否定するものじゃない。宮沢氏が日米関係の古き良き日々最後の玉座に座った人物であって、バブル崩壊の後事を託されるのは歴史を見る限りまあ致し方なかったのだなあという理解、というか諦めはある。ただ、社会に出て紆余曲折の末外資系証券会社なんぞに出入りして話を聞く側だった際に「いま我々が好決算を上げ、この暑苦しい国で無理しても稼ぎたいと言う欲望のままに働けるのは宮沢のお陰だ」と外人が口々に言っていたことは忘れない。それが経済なんだと割り切っても、その経済に詳しいはずの閣僚が、経済問題がまさに火を吹くか吹かんかというところで、これといった指導力も発揮せず、バルクで右から左に物件を流すだけの海外ファンドに空前の利益を与え続けるような施策しか取らなかった現状を身をもって知った以上、彼がいかに政治思想や政治過程で重要な役割を示していたのだとしても認めるわけにはいかない。


 ミクロの体験談をマクロの政策評価で語るなと言われれば「そうですね」という話であるし、じゃああのとき財政出動をしていればただ単にゾンビが増えただけじゃないかという議論もあるのは承知している。だけど、彼は経済政策において事細かにアメリカと協議を続けてきたのは誰しもが知っていて、彼が話したことが、結果として「自由経済社会の弱い環」として、ジャパンプレミアムだのジャパンパッシングだのシステミックリスクだのと言われる元凶となったのは、私の人生にとっても忘れがたい時節であった。結局、あのころの外資系証券会社には悪党がいっぱいいた。その悪党が合法にいろんな無茶をやるお墨付きを与え、金太郎飴だ何だと不思議金融商品をせっせと作り、バルクで価値の残っている不良債権を買い上げてバラして転売するなど、なぜそのようなことがまかり通るのかをつぶさに調べていくと、出てくるべくして出てきた人が、結果として「カネと貿易」のカネをスクイーズしてまとめて放り投げる変な政策のきっかけを作ったと見ることもできるわけだ。アホみたいに踊ったバブル経済が崩壊するのは当然だったとしても、それが弾けたことは誰よりも良く認識していたのだから、そこでカネのないプレイヤーが原理原則の「カネと貿易」を体現してしまったら、いまカネのあるプレイヤーがカネのないプレイヤーから巻き上げられるだけ巻き上げておこうと考えるに決まっている。


 ましてや、当時はヘッジファンドの出かかりの時代で、珍奇な金融商品がわんさと出てきた時期だった。ここは宮沢氏一人の責に帰するのも困難だけど、これらのバックボーンとして機能してきたのは円キャリートレードだったわけだし、しかも困ったことにその後も宮沢氏は元首相にして平成の是清として財務担当相として再登板するに至った。”高度政治情報”の最大の出元として機能してきた人間を、なぜ困難な局面で持ってくるのか、また逆にそれを周囲にとどめられるだけの人材がちょうど自民党に枯渇していて、そこへ初回から大魔神佐々木が登板すると称して積極財政へさらにシフトしてデフレをどうにかするより世界の流動性を増やすエンジンとしての役割を果たす方向へ逝ってしまった。


 本当に宮沢氏が理財の人であったのなら、妙な担ぎ上げられ方をしてタイミングを外した当時最大の国債を発行するようなことはしなかっただろうし、時代の伴奏者というより時代の節目に自民党の人材プールが枯渇していたことを示す象徴として語られるべきだろうと私は思う。


 その一方で、一政治家の人生としてどうだったのかというと、明らかに平時の人材であって、いろいろ韜晦は交えつつも大過なく任期を終えるタイプの人だったのに、随分と遠くまで流されて首相まで流れ着いたもんだと感じる。彼は幸福だったと思う。


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Comments

1

とりあえず韜晦の意味をぐぐった。

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0706/25/news091.html

こんなデータを見ると乱世の奸雄に適した日本人は意外と少ないのかなぁ、とふと思ったりするわけです
(それでも、治世の能臣にはなれるべきなんでしょうけれど)

脳内では河野洋平、村山富市と大差ない区分故、トンチンカンなレスをしてしまいますた。半ば泥酔状態だった故でもありますが。えぇ、条件反射的に。

mof.go.jpドメインからアクセス可能だそうですが、大蔵ではどのようなポリシーでウェブアクセスの制御をしているのかに興味津々。

老衰で死ねるのは、今の時分幸せだとも思われます。ネット上では、田中派系列総裁暗殺説(byアメ)まで出ております。ヒトは癌で死ぬよう予めプログラムされていると考える故でもありますが。

つまり、つべこべ言わず俺がワンちゃんを政界に担ぎ上げるぜみんなヨロシクなっ!!、と言う死亡フラグですか?

ワンちゃんこないだの手術もなんか癌を取るのを諦めてそのまま閉めたっていうような手術時間だったような気が。

腐海の虫が流れ込む先って櫻田淳ブログのことか

↑櫻田淳じゃなくて別の人だろ
検索すりゃ分かるけど書かんとこ

>財務省から何故かたくさん訪問者が

bewaad氏のblog経由でしょう。
6/29付けの記事で、先日の隊長の記事が取り上げられてますよん。

NHKで大勲位が宮澤さんを語ってます。オマケで、今ならもれなくたっぷり昭和臭を満喫出来ます。

王さんも気になるけど、↓の初芝の雄姿について一言よろしく。
http://www.so-net.ne.jp/marines/shop/mls/index.html

身長わずか66cmのジェダイ・マスターで、
生ける伝説と称される人物である。

大勳位もかなりボケてしまったな

>彼は幸福だったと思う。

誰が取り上げるにしても、将来に渡ってアリバイには困らないだろうという点からでしょうか? 「だって御鉢が…」と言われたら、対論は皮算用ですものね。キッツイことに。

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    やまもといちろう

    ブロガー・投資家・イレギュラーズアンドパートナーズ代表取締役。
    著書に「ネットビジネスの終わり (Voice select)」、「情報革命バブルの崩壊 (文春新書)」など多数。

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